マ社長の星屑レビュー☆第14回 The Party/Andy Shauf
今回ご紹介するのはカナダのシンガーソングライター「Andy Shauf 」の「The Magician」というアルバムです。今年の5月にリリースされていたのですが、自分が耳にしたのは8月で、いいなと思って購入した一枚です。しかし、それくらいしか情報がなく、地味目な雰囲気を漂わせておられるのですが、とにかくセンスは抜群のアーティストだと思います。
まずはタイトル曲でもあります、1曲めのMVをどうぞ。
Andy Shauf - "The Magician"
スマパンの「Tonight Tonight」に通ずるサイケな世界観のMVですが、どんな人かを理解するのにもってこいだと思います。イントロからバンドが入る時のラッパ隊がまずたまりません。コツコツとミュートのかかったキックとベースのセブンティーズ感にゆったりとしたピアノのストロークが気持ち良く、ピアノとストリングスのダイナミクスも気持ち良く、木管の使い方がおしゃれですね。歪んだギターの使い方も贅沢で好きです。
同じようなサウンドのまま2曲目も始まりますが、やっぱり弦と木管、金管楽器がすごくいいアクセントをつけています。それがなければシンプルでいいのだけれど、退屈を覚えるかもしれません。それくらいベーシックトラックはシンプルなのですが、バンド全体のダイナミクスをめちゃめちゃつけたはります。なんだかくるりみたい。このコンプで圧縮して音を潰し、音圧をあげてラジオ乗りなんかを気にする日本ではなかなかできない音像なんです。ああ、気持ちがいい。
3曲目はシンセっぽいイントロから始まりますが、基本ピアノ主体のアコースティックギターが好きみたいです。そういえば声もアクの薄いショーンレノンみたいで聴きやすいですよ。アコースティックギターもガシガシ弾くのではなくて、レイドバックしたリズムで撫でるようなプレイなので、そこからも優しさを感じます。
4曲目でなんだかちょっとキャッチーになりました。しかし、70年代前半のシンガーソングライターの作品を聴いている気分は変わりません。極端にキックとベースのローがない、ミュートが大事なサウンドなのですが、ウィルコの人がお気に入りだというのも納得できます。日本でこんなバンド出てきて売れへんかな。そうしたら日本の音の未来が少し変わりそうな気がするのに。それにしても、そんな関係ないことを書いていたら、あっさり曲が終わります。
5曲目、ゆったり始まったかと思ったら、ボーカルのハーモニーが入ってきて、全体にリバーブがとんでもなく深くかかるというこのやりたい放題感!もう次からはその瞬間をずっと待っている自分がいます。一人ですべての楽器を演奏されているのかどうかは知りませんが、やりたいことを躊躇することなくやりたいだけなさっているのがいいです。
6曲目。メロディーをエレキギターとピアノでずっとユニゾンしている、ちょっとふざけた曲。可愛らしい曲なんですが、さっき見たMVの人がこの歌を歌っていると思うと可愛いというより、ちょっと強く感じるところもあるのですが、やっぱ好きな音だということで、気持ち良く聴けます。
7曲目。木管のドローンっぽいアレンジが気持ち良く、拍子木みたいな音にだけまた長いリバーブがかかっていたりして、やっぱり凝ってますね。時間はゆったり流れるのにいろんな楽器が入れ替わり出てくるので、本当に曲がすぐ終わる感覚があります。聴き終わってメロディーを覚えているかというとそんなことないのですが、自分の知らない、気づかなかった事がたくさんありそうで、すぐにでも聴き返したくなるような曲たちです。
8曲目。なんか青春っぽい感じで始まりましたが、相変わらず地味は地味です。しかしこれまでエゴを出さないプレイだったのが、16分の裏を強調したいのか知りませんが、なぜかベースが乱れに乱れています。たまんなく不思議です。確かに初めてタンバリンが16分で振られているのですが、そんなに強調しなくてもいいとこを頑張っているから拍頭が合わないという状況になっています。そういうこだわり、嫌いじゃないのですが本当に不思議です。
9曲目。初めてのグランジを少しだけ感じるイントロ。浮遊感のあるコード進行で少し時空が歪みますが、サビは美しく、単音を引き続けるピアノが印象的です。ちなみにこの曲も演奏をちょっと頑張ってはります。
最後、10曲目。長くないアルバムはいいですね。37分台、最高です。ラストはアコースティックギターの弾き語りで始まりました。昔のレディオヘッドっぽくもあるのですが、やっぱ響かせる音はちょっと変わってますって書いたら、すごいストリングスが入ってきまして、不安の最中へ突き落とされました。ずっとめっちゃ小さな音でシンセもなってるし、やっぱ変な人やな。音楽で表現したい感情が複雑なんでしょうね。単純に面白いと思ってやっているだけかもしれませんが。
というわけで、一枚聴き終わりましたが、本当に地味なくせにめっちゃカラフルっていう、とても矛盾したアルバムでした。それとやりたいことをやりきっている感じもあって、楽しく聴けました。お時間ある方はぜひ聴いてみてくださいなです。
(マ)
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