マ社長の星屑レビュー☆第8回 EMILY'S D+EVOLUTION/Esperanza Spaulding
今回は何を書こうかなと思っていたら昨日新作が発表されていた「Esperanza Spaulding」の「EMILY'S D+EVOLUTION」を聴いていこうと思います。ご存知の方も多いかとは思いますが、女性です。女性のジャズベーシスト、シンガーでございまして、グラミーも新人賞とジャズボーカルアルバムとかで獲ってます。自分が初めて聴いたのはは2008年リリースの「Esperanza」ってアルバムからで、とんでもなく上手いベースなんですが、歌もまた良くて、ちょっとジャズ、フュージョン色の強いノラ・ジョーンズみたいな感覚で歌モノとして楽チンに聞ける良質な音楽ってイメージでした。ダブルベースを弾きながら歌うのが衝撃で、とりあえず1個載っけときます。
Esperanza Spalding - Crowned & Kissed - LIVE
さあ、というわけで、まずは1曲目。いきなり10分弱の長尺歌ものですが、気持良くて、ちょっと可愛らしくて、でも若干しゃがれているという最高の、上まで気持良く伸びる歌声、最高です。ジャズメンたちの華麗なるダイナミクスとどこまでも優しい演奏。はい、もうワインかブランデーが飲みたいところですね。って書いたらいきなりソロタイム突入で荒々しさの波になってきました。スネアのピッチは低いけど、クリフみたいな音してるなと思いつつ、最高のプレイヤーってやっぱすげえなと改めて、ちょっとN.Y.に久しぶりに遊びに行きたくなりました。ほんでもって、いきなりライブバージョンの映像があったので載っけときます。音源では抑えていたベースもライブではブリブリ弾いておられます。
5弦フレットレスで自由かつ濃厚なプレイが見られます。
Esperanza Spalding Presents: Emily's D+Evolution - Unconditional Love
ここで突然ですが、彼女まだ31歳なんですよ。たまげますよね。というわけで、2曲目。またギターイントロから歌だけ乗っかって始まるのですが、彼女はギターの音が好きそうですね。ピアノトリオでもよくライブされているみたいですが、なんだかギターのロック感が嬉しい作品です。ほんでもって結構アメリカンロックな曲かと思いきや、サビのコード進行がなんだか日本人好みっぽくて面白いです。難しいんですけど、なんだかクセになります。
3曲目。来たぞ、変な曲。ピアノの歌と合っているのかよく分からないリフ?と変なギターと美しいコーラスで構成される曲なのですが、ジャズっていうよりクラシックの魔王出てきそうなオペラ聴いている気分になります。おう、最後感動的。ほんと自由な人だなと思うと同時に音楽的な幅が走り幅跳びの砂場より全然広いなと感じます。でも硬いグラウンドに着地しても怪我をしない柔軟さを持ち合わせている凄さ。何言ってるかわかりませんが、そんな感じ。
4曲目。ようこんな指と歌で違うことできるなととりあえず感嘆。ファンキーなジャズっぽいジャズ何ですが、途中で入るコーラスが可愛らしすぎるのと、下手したらメタルバンドからオルタナバンドに成り代わったようなバンドみたいにになりそうなサビのリフが絶対に下手していないという安心感。フレットレスをブリブリ弾く、まさにジャコみたいなかっこよさを存分に味わえる曲です。ってフェードアウトかい。
5曲目。彼女を一番好きになったきっかけでもある、彼女らしい可愛らしいコーラスワークが味わえる一曲。すごい武器だなと思います。その可愛らしさがなかったら、ちょっとしかめっ面で聴いているかもしれない難しい曲なのにとんでもなく清涼感をぶち込んできてくれるからサラっと気持ち良く聴くことができるんですね。めっちゃ辛いカレーにヨーグルト混ぜて食ってる感じ。
6曲目。エフェクティブなベースと歌で始まっております。ノイズ音は入っていますけど、これがベースと歌のグルーヴだってのがめちゃめちゃわかりやすいですよ。ベースって何って思われている方が多いと思いますが、たくさんの音の裏でこういうことをしているんだよ、うん、したいと思っているんだよっていう、お手本的な一曲です。あっ、終わった。
7曲目。アコースティックギターの妖艶なコード進行で始まる曲にこれまたコーラスがかったベースで大人っぽい歌が乗ります。歌のバリエーションもすごいあるなと思いつつ、生々しいベースの音も良いですが、エフェクティブなベース音にも最近抵抗がなくなってきた39歳の自分なうです。主張を出せたり、逆に閉じ込めたりできるから、そういう意味で便利なものだなという考え方をもたせてくれる一曲。あっ、終わった。ヘビーな曲とライトな曲が程よく入り混じって聴きやすいアルバムですね。はい。
8曲目。早口言葉的お経のようなハモりから始まったと思ったら、ブルガリアンボイスのような直線的なコーラスと優しいコーラスとビブラートで遊んでいるようなコーラスが入り乱れる変な曲。早口言葉的お経をまた挟みつつ、終わっていきましたが、ほんまにこの人何でもできるな。
9曲目。何だか初めてミニマルなリフとコーラスで始まって安心感があると思いきや、また歌い方が違う。最初の方にノラジョン感覚で聴けるとか書いてましたけど、全然違いますね。挑戦的度合いがハンパない。一曲一曲で提示される世界観とプレイと歌が全然違うから、それぞれで聴き手もふんどしをしめ直さないといけないような感覚になってきました。それくらい熱量の多いアルバムだなと改めて認識。
10曲目。後半戦に入ってまいりました。なんだかちょっと落ち着く曲に当たった感覚があるのですが、全然普通の曲じゃないし、なんだかよくわからなくなってきました。この曲ではコーラスが不安感を煽るのですが、
歌は普通にエモーショナルに歌われているのです。漫画のナルトで言えば、風と雷と水の血系限界?淘汰?みたいなものが一曲の中で行なわれている感じで、意味わからんか。歌と演奏が火のようなのに、コーラスが雷鳴らしているような感覚っていうんですかね。スパイスが隠し味じゃなくてお互いが主張しあって曲を成り立たせているような感覚になる曲でした。
11曲目。疲れてきたのか、集中しているのかどっちかわからないのですが、数曲前から歌の情報量が多くてわけわからんようになってきました。この曲にも5人くらいの人格が出てくる感じがして、同じメロの中でも歌詞の行によって人格変わっていってるような感覚でなんだか怖くなってきました。どうした、自分。あっ終わった。4分近くある曲なんですが、一瞬に感じております。ほんでもって歌でどこぞの魔術かけられている気分にもなってきました。なんじゃ、こりゃ。
12曲目。ベースラインがファミコンみたいで親しみやすくて一安心。でもやっぱりコーラスが入ってくると耳がもう全部そっちに持っていかれるようになってますね。どんな曲なのかもあんまり入ってこないんです。声の力ってすごいですね。そんな人もなかなかいないとは思いますが。
13曲目。あと2曲でございます。って、知ってる、このメロディーと思ったら1曲目のバージョン違いだった。しかし、なんだか長い長いぐるぐるから戻ってこられた感覚なのか、とんでもない安心感を久方ぶりに目一杯味わうことができました。単純にめっちゃ嬉しい。普通に歌が聴ける幸せ。ほんまになんか呪い的なものをこの数曲でかけられていたのが解かれたようになりました。このままだと「Aphex Twin」の「Drukqs」を初めて聴いた時に凄いけど二度と聴きたくないと思って、実際そうなってしまったアルバムになりかねなかったのですが、ここで一気に救われました。大丈夫だ。うん。
14曲目。なんだかユニコーンの「働く男」のバンドが入るとこの雰囲気だけで構成されているかのような不思議な曲で幕を閉じます。チルアウトにも全くなりませんが、もうゴスペル的なコーラスもあんまり気にならないですし、うん、終わったって感じでございます。
結果、いつも以上に真面目に聞いたからかもしれないのですが、本人の熱量がすごい。ちょっとすごい作品だと思うのですが、全部を聴くには体力が必要だと思いました。自分、ポップに聴くなら13曲目、大人に味わうなら1曲目でいいかもしれません。8曲目の早口言葉的お曲のハモりでやられてしまったのかもしれませんね。でも、こんな感覚になる作品はそうそうありませんので、皆様も一度ぜひ聞いてみてくださいなです。
(マ)
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