近況と雑感
マーベルコミックス原作のMCU版映画の最新作『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』について少しだけ書きます。
『アベンジャーズ』、『ブラックパンサー』などから観始めたMCU版マーベル映画ですが、時系列グッチャグチャで掘っているせいか、まだまだ分からないことだらけです。
近年作『ブラック・ウィドウ』や『ホークアイ』など、観応えのある作品も楽しみましたが、時系列でもう一度観直していった方が良いのかと考えると少しうんざりしますが、結構楽しんでいます。
私は幼少期より『スターウォーズ』シリーズや『インディー・ジョーンズ』シリーズなど、スピルバーグ/ルーカス作品など、いわゆるハリウッド映画作品の映像技術や音響、雰囲気が大好きでした。そういう系譜の作品ならば、どんな作品でも楽しんで観ることが出来ます。
私がクラシック音楽(シンフォニックなもの)を好むのも、派手な劇伴が多いこの手の作品の影響でしょうし、無意識的に近代アメリカ的なものの考え方が根底にあるのも、そういった作品の影響を受けていることが大きいのかも知れません。いずれにせよ私は、洋楽ロックやポップスよりも、80年代ハリウッド映画作品の影響をモロに受けています。
この仕事を始めて25年ほど。私は幼少期〜学生時代と比べるとそういった作品に触れることが極端に少なくなりました。サブカル方面に興味の矛先を変えていったんだと思います。
話を『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』に戻しましょう。
私はクレジットは後から確認するようにしている(先入観をあまり持ちたくないから)ので、監督は誰だろうとチェックしたところ、サム・ライミ。かつての超名作『死霊のはらわた』で名を馳せた方です。なるほど、ホラー的演出要素の観せ方が上手かったのはそういうことか、と合点がいきました。
MCU版マーベル作品の魅力のひとつに、対極に振り切ったバランス感覚があります。余りにも大味かつ馬鹿馬鹿しい(褒め言葉です)世界観と繊細さのかけらもない過剰な演出に対し、人種差別問題や、ジェンダー問題、エネルギー問題などへのコンシャスのようなものが絶妙に盛り込まれていることが散見され、そこが映画作品の大きなポイントになっているとも言えます。
良くも悪くもアメリカ的な(ロシアや中国などのそれらとは違うかたちの)覇権主義が下敷きにあり、それらに対する賛美や皮肉、アンチテーゼ的なものがメッセージになっている、ということを想起します。
それはなにも今に始まったことでは無いのですが、MCU版マーベル作品においては「わかりきっている前提だけど敢えて」、つまりコンシャス/意識的な印象操作がテーマとして扱われているような気がしています。
精神医学分野が深く関わるシビアな問題(もちろん犯罪や暴力、家庭内問題からエゴイスティックなパーソナリティ問題まで)をどう扱うか、ということにおいて、ここ日本においては『鬼滅の刃』が大きな成果を残している、というのが私の持論ですが、良くも悪くも、MCU版マーベル作品においては、その辺りの扱いの大胆さと粗雑さにおいてもスケールと桁のデカさを感じます。
大衆娯楽作品だということもあり、シリアスな作品とは違って通底和音が至って非現実的です。子どもじみた(良い意味です)ファンタジーの部分が世界観の大部分を占めはするのですが、近年作『ブラック・ウィドウ』などにおけるジェンダー問題意識などと同様、主人公ドクター・ストレンジのパーソナリティ問題の深さを上手くまとめたなぁ(マーベルっぽいなぁ)、という印象を持ちました。
解決しない(しかし解散することはない)世界の様々な由々しき問題を薄目で観ているかのようなアメリカ側の目線が、ここ日本においてどう捉えられているのか、ということにおいて、この20年ほどで大きな分断が日米間で生まれている(世代も大きいと思います)と思いますが、いずれにせよ貧困や戦争やエネルギー問題(これはこれから目の当たりにするものだと思うので実感は伴わないでしょうが…)は、どんどん国固有の分断が進むんだろうなと思います。
ただ、どんな問題であれ、個人個人のパーソナリティに影を落とすことになるのは精神医学的問題意識と、それをマクロな社会の中のミクロなものとして自己認知し、個々が社会の一員であることに価値を見出すことになるのか、ということは世界の中でも(日本も含めて)大きなテーマになるのではないか、と私は勝手に妄想します。
敢えて難しい言葉で判りにくく書いていますが(文章力の問題もあります)、ただの娯楽作品だと思っていても、受け手側の問題として様々に「問題意識」を投げかけられるので、今は良い世の中とは言えないのかも知れませんね。
ここからは少しネタバレです。
イ◯ミナティー、側があっさりやられてしまう感覚、スッキリするような、ほんと不思議な気持ちになりました。私個人が、何においても「あっち側、こっち側の立場」につくことを嫌う性分なので、なんだかスッキリしたのにモヤモヤするような、変な気分です。
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