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ジャーマンプログレの深淵なる扉を開けた日
1980年代のイギリスでのポストパンクやニューウェーブと同時代にドイツで盛り上がっていたジャーマンプログレと呼ばれる音楽群は自分の中では同じカテゴリーにあって、すごく思い入れが強いジャンルだ。
どちらも共通してるのはテクノロジーや時代の変化による過度期で音楽的にも実験的なものが多いということだ。
ジャーマンプログレの中にも好きな音楽はたくさんあるが、その扉を開いてくれたのはFaustの『So Far』というアルバムだ。
当時僕は大学生でお金もなく、古本市場とかブックオフとかの安売りコーナーで掘り出し物を探すのが趣味で、このアルバムもその中で出会った。
ジャケットデザインもミステリアスで、黒地にバンド名とタイトルがシンプルに書いてあるだけ、全く知らないバンドだったが、何やら得体の知れないオーラを放っていた。
200円。
買いだろ。
帰って聴いてみてヤバい代物だと気付いた。
ライナーノーツを読むと、これはどうやらジャーマンプログレと言われている音楽らしいことがわかった。
当時の自分の認識でプログレと言えばKing CrimsonやイエスやPink Floydだったが、Faustの『So Far』は全く違う方向を向いていた。
イギリスのプログレ勢はテクニック指向であるのと比べて、このアルバムは演奏テクニック自体はそう大したことないがその分音響的な実験が際立っていた。
アルバム構成は小品集のようなもので曲によって色んなスタイルの曲があったが、中でも、冒頭の曲で、シンプルでミニマルなビートの上にギターが重なってノイズがだんだんと膨らんでいくのだが、これがめちゃくちゃ格好良い。
当時リアルタイムで聴いていたモグワイなどのポストロックとかにも通じるアイデアを先取りしていたことに気付いた。
そして、全体的にシュールで冷めたユーモアがあって、とらえどころの無さがレジデンツなどにも通じる部分があるなと思った。
芸大に在籍してバンドをやっていたので、周りに色んな音楽を聴く人間はいたが、ジャーマンプログレが話題になったことはなく、そして音楽性も自分の肌に合っていて、俺の音楽を見つけた!と興奮したのを覚えている。
これがキッカケで他のジャーマンプログレも聴くようになりだした。
クラフトワーク、タンジェリンドリーム、ノイ、カン、クラスター、グルグル、アモンデュール、なんかはめちゃくちゃ聴いて、大きく影響を受けた。