【嘘のような、ホントの物語】#4 〜 不思議な力を持つ娘 〜 誕生まで 〜
しばらくの間、無料公開しています☆
前回のあらすじ
40歳を目の前に、カンボジアで働いていた私。1年ぶりにタイを訪れ、友人との再会を喜んだ。友人から恋人へ関係が進展して、タイを後にした私は、その数週間後に妊娠が発覚。カンボジアでの高齢出産する覚悟を決め、その準備のため、妊娠15週で羊水検査をするために一路バンコクへ。一日がかりで陸路で国境を越え、バンコクに到着。翌日、病院へ向かった。医師の問診結果は、検査を翌週に延期するというものだった。
∞ 思いがけない予定変更
えーっ!検査、来週に延期。。。
これは、会社に連絡しないと!!
すぐにそう思ったが、会社に確認を取る前に、提示された日程で予約は済ませた。
検査の日程が最優先、後のスケジュールは何とか調整するしかない。
そう思ったからだ。
さて、選択は2つにひとつ。
ひとつは、一度カンボジアに戻って、来週もう一度タイに戻ってくる。
もうひとつは、このままタイに滞在して、検査を待つ。
会社の同僚にSMSでメッセージを送る。
カンボジアからタイに電話してもらう。その方が料金が安かったのだ。
当時は、まだスマホのない時代。WIFIも一般的ではなかったため、緊急の連絡は、ガラケーだった。
NOKIAのガラケー。
コンパクト。電話とメッセージだけが可能。画面は白黒。最低限必要な機能の電話。おもちゃみたいに小さい。
当時、US20ドルくらいで買ったと思う。
シムフリーで、カンボジアでもタイでも、シムカードを交換して使えた。
パソコンは、ケーブルをつないで、ネットに接続できた。
ホテルやゲストハウスでは、ロビーに共用パソコンを設置していることが多く、安価で利用できた。
それを利用すれば、メッセンジャーを使えば、長時間通話ができた。
ただし、相手もパソコンの前に居てもらう必要があったのだけれど。
今回は、4日間の予定で来ていたため、パソコンは持ってきていなかった。
ホテルを離れても、ネットカフェは、探せばすぐ見つかる。街のあちこちにあった。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
カンボジアからの電話を受け取り、上司に、一度戻るべきか相談した。
回答は、、、
戻る必要はないから、検査終了までタイに滞在するように。
という事だった。
ありがたかった。
来週から、繁忙期の11月に入るというのに。
他のスタッフに、負担をかけることになるな、、と思いつつも、
体のことを考えると、国境越えの往復移動はしたくなかった。
そして、そのような流れになった事が不思議で、意味のある事のように感じた。
この時からからかもしれない。
娘の不思議な力を、感じるようになったのは。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
タナボタ的な、休暇が降ってきて、私は彼に電話をした。
その日は、たまたまなのか、休みだったらしく、時間があるという。
それなら、僕の所に来ればいいよ。会社の寮だけど。そこからはちょっと遠いけど来れる?
彼はそう言ってくれたが、タクシーで行くにしても、バンコクの地理に詳しくなかったので、不安だった。
それに、昨日の今日で、遠方への車の移動は、避けたかったのだ。
だから、私は彼に提案した。
あなたが、今日こっちにおいでよ。
それで、明日二人でそっちに向かうのがいいと思う。
今日は、車で長時間移動したくないよ。だから迎えに来てほしい。
そっちの場所がわからないし、タクシーに説明もできないよ。
彼は、ちょっと困ったように言った。
僕も、そっちがよくわからないんだよ、、、
(そうだったのか!)
分かった!それじゃあ、ホテルの名前と住所をメッセージで送るから、タクシーのドライバーに見せて来たらどう?
それでも、まだ、煮え切らない様子。
よくよく尋ねてみると、彼の本音はこうだった。
タクシー代がいくらかわからないから、行けないんだよ。給料日までまだ間があるから、そんなにお金がなくて、、、
(あ、そういう事だったのか〜)
オッケー、わかった。じゃあ、こうしようよ。
あなたが、タクシーに乗ってきて、到着しそうになったら電話して。
降りるときに私が払うよ。
∞ 久しぶりの再会
ホテルに戻って、のんびり彼を待つ。
昨日の移動、そして今日の病院。
知らない間に、どこか緊張していたようだ。
その糸が切れたように、少し眠っていた。
私が、島を後にして、2か月ちょっと。
その後、人生の中の大きな変化が、お互いに訪れた。
転機とでも、いうのだろうか。
彼は島を離れ、私は子供を身ごもった。
なんだか、不思議だ。
そして、島に遊びに行っていた時とは違う、バンコクでの再会。
それを思うと、なんだか、また少し緊張した。
∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞
2時間くらいたったころ、彼からの電話が鳴った。
もうすぐ着くという。
少し早足で、ホテルのロビーに向かった。
タクシーが、ホテルの前に到着すると、彼が助手席に乗っていた。
タイ人は、タクシーで助手席に乗るのだろうか?
タクシーでの長旅を、ドライバーと話しながら来たのだろうか?
面白くて、つい笑ってしまった。
タクシーの助手席のウィンドウが下りて、彼が顔を出す。
ここ、ここ!
手を振って、笑っている。
400バーツ、高速代も入ってるから、ちょっと高いね。でも、言われた通り、ちゃんと、メーター料金で来たよ。
満面の笑顔に、ほっとした私がいた。
∞ 初めて見たタイ人の暮らし
翌日、彼は私のために仕事を休んでくれた。
というより、しばらく休むことにしたという。
彼の仕事は、建設業。
鉄筋の溶接や、電気の配線もできるし、エアコンの取り付けもする。
タイは階級社会。
育ちによって、付き合える人が違ってくる。裕福な家庭に育てば、コネもきく。
彼の場合は、そういった環境では無かったし、その上、学歴がないから、都会での仕事はどうしても肉体労働になる。
ミャンマーやカンボジアなどからの不法入国や、斡旋業者を経由して来て働く人たちも多い。
その国の発展を支えているが、社会の底辺を生きる人たちだ。
(彼は、その当時、まだ料理の腕に目覚めていなかったのだ。)
建設業の人達は、『同じ釜の飯を食う』家族のように暮らして、朝晩、トラックに乗って、現場に一緒に移動することが多い。
彼の場合は、島での仕事が無くなったので、仕事を探していたところ、
義理の父親の知合いであった、ここの親方に紹介され、お世話になることに決まったという。
ホテルをチェックアウトして、バンコクの中心から、かなり離れた町の彼の寮まで、タクシーで移動した。
四階建てのタウンハウス。
塗装の禿げた、縦長の建物が並んでいる。
窓には、鉄の格子が設置されていて、各階のベランダには頑丈そうな鉄製の柵で、隣の建物との間を仕切ってある。
建物によっては、大きな鳥かごのように、鉄の網でベランダを覆っているところもあった。
タイの労働階級の人々が暮らす街。
ガイドブックには無い、バンコクの外れの街並みは、なんだか、風景に色が無くて、寂しい印象を受けた。
夕方になって、彼が近所の屋台でご飯を食べに行くという。
いつも寝起きを共にしている、若い男の子も一緒に連れて行きたいらしい。私が一緒だから、その子は遠慮していた。
そりゃそうだ。彼と違って、外国人と接する機会なんてほぼ無いのだから。
遠慮しないで、一緒に行こうよ。私が急に来たんだから、、、
そう私が言うと、彼がその子に通訳してくれた。
その子は、ほっとしたように、静かにほほ笑んだ。
彼の寮から少し歩くと、少し幅の広い道に出た。
その路肩に沢山の屋台が並んでいて、複数の屋台の一角にテーブルと椅子が置いてある。ここは、彼らがいつも来る屋台エリアなのだそうだ。
その日は、おかずを選んで、ごはんに乗せて食べるスタイルの屋台を選んだ。開いているテーブルを探して座る。
おかず1品乗せ20バーツ(約60円くらい)
ローカル価格。
島では見たことのない値段だった。それにおかずが辛そう。
私は、辛い物を止めていると彼に伝え、おかずを見繕ってもらい、食べることにした。
粗末なごはん。ご飯粒も堅い。
彼は、お金がないのに、その子に奢ってあげていた。
そして、粗末なごはんを、分け合って食べて、笑っていた。
私は、彼に言った。
何かもっと頼んでもいいよ。私、奢るから。せっかくだし、遠慮しないで食べていいよ。
そうしたら、彼がその友人にも尋ねてくれて、こう言った。
大丈夫。こいつも、もうお腹いっぱいだって。特別に何かしなくてもいいよ。大丈夫だから。
ショックだった。
とても謙虚で、足るを知るというのは、こういう事をいうのか。。。
そして、私の中で、何かが芽生えたような気がした。
そこにいた彼は、島で外国人観光客を楽しませていた、派手な印象のバーテンダーではなかった。
慎ましく、静かに強く、明るく、生きている彼だった。
なんだか、とても頼もしく、大人に見えた。
この人とだったら、もし、何もかも失ったとしても、笑って生きていけるかもしれない。
そんなことを、ふと思った瞬間だった。
【嘘のような、ホントの物語】#4 〜不思議な力を持つ娘の誕生まで〜 に続く
<<<その3に戻る その5に続く>>>
∞ まえがき ∞ より
この物語は、ある家族に実際に起きた、
嘘のようなホントの物語。
『自閉症の娘』や『ADHD疑惑のタイ人旦那』と、
『カサンドラになりかけた日本人妻』の
エピソードを描いた私小説的エッセイです。
他のエッセイに比べて、かなりプライベートな内容が
含まれているため、書く決心がつくのまでに
時間を要しましたが、
海外、国内問わず、育児に苦労している方や、
大人のADHDの方の対応に悩んでいる方の
ヒントになれば…と思い、執筆することにしました。
この物語は、決して暗く悲しいものではありません。
困難に打ちひしがれる日もあれば、
文化の違いから、お互いを理解し合えず
涙する日があったり、
バカバカしい事で、お腹がちぎれそうに
なるくらい笑ったり。
人生という旅路を、何故か一緒に歩く
ことになった、
マイペースでトンチンカンな旦那さんと、
不思議な力を持つ娘を中心に、
日本人妻が翻弄されながらも、
強く生きる物語なのです。
この物語のシリーズは、今後、
有料記事にする予定です。
不特定多数の方へ、無料で届ける内容ではなく、
本当に必要とされる方に、読んで頂きたい、
と考えているため、
そうすることにしました。
ご理解頂けると、幸いです。
ここから先は
¥ 180
いつも応援ありがとうございます。 あなたの100円が(もちろん、それ以上でも!!)エネルギーの循環のはじまり💖 サポート頂いたら、有料記事の購入やおすすめに使いたい✨✨ 何より、お金のブロックが外れます🙏 それに、私はもちろん、娘と旦那さんが、ダンス💃して、喜びます🌈