映画の感想 - 映画 ◯月◯日、区長になる女。

ずっと観る機会を伺っていた「映画 ◯月◯日、区長になる女。」、ようやく観了(造語)。

本作を通じて初めて知ったのだが、2022 年の杉並区区長選挙で当選したのは、3 期 12 年続いた現職を打ち破った、新人候補者だった。

新人がどうやってそんな偉業を・・・書くと、ネタバレどころの騒ぎではないので伏せておくが、本作はこれまでありそうでなかった選挙もの、それも事前準備に焦点を当てたドキュメンタリー映画である。

ドキュメンタリーなので、作品を通して語りかける力は強い。杉並区はもちろんこの国の政治、さらに有権者の消極さにも遠慮なく切り込んでいる。

現状はダメだ、変えなくてはならない。だが、何がどうだならどの程度ダメで、何をどのくらいどう変えないといけないか、そこまで考える政治家は少ないし、有権者はもっと少ない。その過程を、2 時間ほどの上映時間にキッチリ収めている。

いろんな層、特に未来の候補者たちにとっては、かなり有益な映像となったのではないだろうか。既存の候補者にしても、古き悪しき慣習を打破したいのであれば、大いに参考になるはずだ。この国に選挙に注力する政治家の数あれど、真に有権者および将来の有権者の方向を向いている者など、ほぼいないのだから。

欲を言えば、主人公陣営だけでなく、対立候補の陣営も見たかったが、ドキュメンタリーである以上、それは叶わなかった。

惜しむらくは、映画としての芸術性、作品性は水準以下であること。基本、シロウト手持ちの画角は酔いやすくカメラワークも何もあったもんじゃないし、音声にしても、ノイズリダクションもへったくれもない。

素晴らしいことに、主人公の岸本聡子区長その人が、今も現役で市政にいる。いっそ杉並区に住んで区民の気分を味わってみたい。そして、なんでもいいから、活動を支援したい。

そう思わせるほどの力が、本作には確かにあった。


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