建築家、または理詰めの提唱者
幾人かの信頼できる友人からその評判を聞いて、16 Personalities なる性格診断テストを受けた。
まず断っておくが、私は世に出回っている「心理テスト♡」というものをとことん嫌っている。「〇〇を選んだアナタはうさぎさんタイプ〜」などと抜かしてくる輩にはもれなく平手打ち。しかしながら、今回の 16 Personalities は、どうしようもなく捻くれた阿呆にも一定の納得感をもたらしてくれた。
テスト自体の説明を含むとそこそこの分量になるので、本稿にも目次を示しておく。既にこのテストのことを知っている方や、私の世迷言ファン(?)の方は結果以降から読み進めてね。
16 Personalities 概要
16 Personalities は、MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)というユング心理学に基づいた類型の考え方を元にした、一般向けに無料提供している性格診断テストである。
4項目の二分法を用いて16(=2^4)パターンの性格に分類する。分類項目と尺度の指標は以下の通りになる。
このテストでは、いくつかの質問に回答した後、各項目が数値化され、そのうち優位な指標の頭文字のアルファベット(頭文字が重複する intuition は2文字目の N)を連ねる形で診断される。この方法によって分類される16パターンにはそれぞれ、実在する役割の名前が付けられている。たとえば、[外向E]―[感覚S]―[思考T]―[判断J]が優位を示すと、ESTJの「幹部」タイプとなる。
また、16 Personalities 独自の補足項目として、「神経性(アイデンティティ)」という5つ目の項目があり、[自己主張型 Assertiveness][慎重型 Turbulence]のいずれかが各性格タイプの末尾につく(「自己主張型幹部」なら ESTJ-A)。16を謳いながら、実際には32(=2^5)タイプの分類がなされており、かなり細分化された性格特徴が期待できる。
回答方法
基本的にはテスト上の指示に従って回答した。
特筆すべき点としては、自己申告型アンケートに過度に主観的な願望を投影しないように、ここで指示された「正直」を「こうなりたい像」というよりも「こうなりがちな(過去直近の自身の行動を反映した)像」と捉えた上で進めていった。
測定時の気分によって結果が変わってしまう可能性を考慮して、日を変えて計4回受検した。また、何箇所か質問文の日本語が怪しかったため、4回のうちの1回は英語版で実施した。
気になる結果は……?
[内向I]―[直観N]―[思考T]―[判断J]が優位を示すINTJの「建築家」タイプという結果になった。
この診断が面白いのは各項目でパーセンテージが出るところで、指標ごとの偏り具合も合わせて確認することができる。
計4回の試行結果は次の通り。
4回中3回、「建築家」タイプという結果に落ち着いた。「気質」の項目から「提唱者」へと転じる可能性を持ちながらも、概ね「建築家」と解釈しても良さそうだ。
たしかに、「建築家」タイプの解説で列挙されている事柄には思い当たるところが多い。
あらゆるものごとへの興味関心と、それを内側に悶々と抱えてしまうこととのアンバランス加減が見事に言い表されている。
私自身に対しても認められる性質ゆえに、周囲のみを「浅はか」と糾弾することは敵わないが、対話による理知的な世界線を心から願いながらも、どこかで叶わないと諦めている節がある。
つづいて、他のタイプとの隣接可能性も含めて、各項目について見ていく。
1 興味関心の方向(意識)
まず、「興味関心の方向(意識)」である。とりわけ自分自身の内側に向かうことが多いという[内向I]の性質は、かなり当たっているように思う。大人数の社交の場は疲れてしまうし、ひとりで思索に耽る方が好みだ。私が日々悩まされている熟慮という名の停滞(行動に起こすのが遅い!)も、この項目の特徴として挙がっていた。
2 ものの見方(エネルギー)
次に、「ものの見方(エネルギー)」について。この項目はかなり[直観N]の指標の方に傾いており、抽象的にものごとを捉えようとする私の思考のクセとよく噛み合っている。とはいえ、私は「建築家」タイプの特徴としてよく言及されるように、決して過去のことを気にしないわけではない。むしろ反芻していつまでも考えてしまう。しかし、起きたことそのものを喜んだり悔いたりするというよりかは、その出来事の周辺にあった状況や自分自身の行動を振り返ることの方が多い。良いことでも悪いことでも、「起きたこと」は「起きたこと」でしかないのだ。過去時点の「起きたこと」を踏まえて、良い面は自信につなげればいいし、悪い面は内省の材料とすればいいと考えている。
実際には内省の比重が大きく、ものすごくクヨクヨしてしまうが、概して(現在ないし)未来志向と言えよう。私は過去の前例よりも推論ベースでものごとを進めることが多いからだ。仮設(仮説)の全体像を組み立てた上で、今後はどのように動いていこうかと決断する傾向が強い。
3 気質(判断の仕方)
このテストでもっとも類型化が難しかったのが、「気質(判断の仕方)」だ。論理的な整合性に重きを置く[思考T]と人間関係を重視する[感情F]の指標がほとんど半々になっている。複数回の受検により、おおよそ[思考T]が優位になりそうだと判断したが、[感情F]の方に舵を取り「提唱者」タイプと診断されることも十分ありうるように感じた。
この点については、後ほど詳しく述べることにする。
4 外界への接し方(戦術)
最後に、「外界への接し方(戦術)」。私が該当した[判断J]は、計画を立てることを好み、公共の利益を優先する傾向にあるようだ。私自身は必ずしも計画的な人間というわけではないが、中長期的な目標に向かって計画を立てようとすることが多いので、どちらかというと[判断J]に当てはまるのだろう。負の側面として挙げられていた柔軟性の欠如には、苦い顔をしながらも頷くほかない。
また、類型末尾の項目である「神経性(アイデンティティ)」では、[慎重型 -T]となった。いくらか「建築家」タイプのそれとは離れたものであろう「超絶クヨクヨ人間」という性質が、上手いこと当てはまっていた。
各項目についての所感は 16 Personalities の他、いくつかの個人サイトの解説記事を抽出して、ある程度良いように解釈してみたものだが、全体として「間違ってはいないかな……」と言えるくらいには納得することができた。
3' 論理か道理か
このテストを何度か受けて、診断内容に揺らぎがありそうなのは「気質(判断の仕方)」の項目であった。どちらかというと「論理(思考)型」の方が優位な傾向にあったが、ほぼ拮抗しており、回によっては「道理(感情)型」と診断されることもあった。ちなみに感情が優位を示すと「建築家」ではなく「提唱者」タイプに分類される。
実は、他の項目はそれなりに偏っているのにもかかわらず「気質」のみが拮抗していることについても自覚がある。少しだけ生きて、多くの人間が系統立った純粋な原理に基づいて生きているわけではないことを知ったからだ。子どもながらに、子供じみた「わがままルール」が子どもだけのものではないと気がついて、色んな場での振る舞いについてよく悩むようになった。
大学の志望学部を経済学部ではなく商学部にしたのも、合理性だけで説明できない部分に興味を抱きはじめたからであった。商学分野は古典的な経済学に比べて、人間が不合理な経済主体であるという前提の論が多い。この前提を支持すると、不合理な環境に対する最適解が、「最適化」された合理とは考えられないように思う(とはいえ卒業後の今も、感性第一のトンデモマーケティングと鼻息の荒いマッチョメンが集う「「ビジネス」」の考え方だけはどうしても受けつけないけれど)。
そういうわけで、私の「提唱者」然とした感情の優先は、ある種の論理から導き出されたものであると言えよう。さらに経験を積むことでどちらかに転ぶことは十分にありうるだろうが、いずれの場合も一定の思考のもとに成り立つはずだ。
感想
インターネットの海から水揚げしうる他のテストに比べると、質問数が充実しており、全く違うと憤慨する結果にはなりにくいように感じた。回答方法として7段階の尺度を用いていることにも、5段階尺度や安易な二者択一のものよりも正確に測定することができるのだろうと、好感を持った。
加えて、類型論的なアプローチではあるものの、指標ごとのパーセンテージを表示しているため、特性論のような趣きもあり、類型の内部数値ごと観測できるのは面白かった。
致命的な欠陥を挙げるならば、大元のMBTIテストが学術的根拠を否定されていることだ。アメリカ心理学会などによると、信頼性に欠けると見るのが通説とされている。心理検査としての信頼度はほとんどないと言ってよいだろう。
また、16 Personalities が MBTI とは異なるという点も、否定的な判断材料になるだろう。完全に同一視してしまうのは、あまりにも危険だ。外部の解説記事では MBTI の認知機能に立脚した説明を試みるものが散見されたが、ここでは援用を避け、類型の根拠を示すに留めた。
一般論として、類型論として診断を行う検査ではその類型にブレがあるのは好ましくないが、私は類型の揺らぎをも内部数値の可視化として楽しんでしまった。そもそも心理検査ではないため、信頼もへったくれもないのだが、それでも無料で受けられるものにしては精度がかなり高いように思う。
総じて、とても楽しい「心理テスト♡」でした。私は概ね建築家さんタイプ〜!