墨色の海の底で 6
「痛い?」
どういう意味なのか、まるで意図が理解できなかった。そして当たり前に私の唯一の居場所を奪う神経も。
「……何が」
「そこ」
「だからどこ「おっきい穴、君の胸のあたりに空いた」」
「え……?」
私に痛いという感情があることを、私は知らなかった。そしてこんなにも大きな穴が空いていることも。誰も痛いのかと聞いてくれなかったし、大きな穴を無理矢理塞いでいたせいで痛みを和らげる方法さえ知らなかった。
「…優しく、しないで」
彼は私の涙を拭った。近くで見てみると、とても綺麗な顔だと思った。
「**さんはさ、優しいじゃん。だから僕もね、君に優しくしたい」
わっかんないよ、全然わかんない…。
「傷つかないよ。**さんはこれからもう、絶対に」
「わかんないよそんなの…!」
「もう、苦しいことはこれで終わりだ」
「勝手なこと言わないで「今…苦しいでしょ。これを言ったら誰かが悪者になるとかさ、何も考えないで。ただ僕に何でも言って」」
「…………おかしいよ。ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶ!いっつも騒がしいくせに急に黙っちゃって、ほんと気持ち悪い。能面みたいなあの顔も、ヘラヘラして透かしたあの顔も、人生何してもハッピーみたいなあの顔も、全部嫌い!
こんなこと「こんなこという私はもっと嫌い」」
「僕は好きだよ、どんな君のことも」
「大丈夫、君は何にも悪くない。少し、休もうか」