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#22 クイズが苦手な東大卒

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 6月21日放送の『酒のツマミになる話』(フジテレビ)にて、タレントの菊川怜がゲスト出演しました。そこで彼女が用意したトークテーマは「周囲の期待に応えられない自分について」でした。
 それによると、自らが東京大学卒業という学歴から、多くのクイズ番組に出演する機会が多いものの、番組で出題される問題のジャンルの多くが歴史、地理、漢字など文系科目に集中しており、それらを捨ててきた彼女にとって苦戦するものばかりで、東大卒の肩書きに見合う結果を出せていないのでは、と切り出したのです。
 またこれ以外にも、2023年9月20日生放送の『ぽかぽか』(フジテレビ)にゲスト出演した際、同系列の情報番組『とくダネ!』のサブ司会を務めた頃を回顧し「社会問題全般が苦手。理系だったので勉強してなかった。でも追っかけられるようにそういう仕事が…。毎朝苦手でした」と、東大卒であるがゆえに、世間のイメージとのギャップに苦しんでいた当時の心境を吐露しています。

菊川怜(オスカープロモーションのHPより)

 菊川怜は1978年、埼玉県出身。双葉、女子学院と並んで“東京の女子校御三家”と称される桜蔭高等学校を経て、東京大学卒業。大学在学中の98年に東レキャンペーンガールに選出されたのを機に芸能界デビューを果たすと、翌年ドラマ出演。以降モデル、俳優、キャスターなどマルチな才能を魅せ、数多くのクイズ番組でも活躍。2002年には16社、翌年には18社のCMキャラクターを務め、2年連続CM女王の座に輝くほどの好感度も見せつけた、現在に至る東大タレントの先駆けとも言えるのではないでしょうか。

 放送作家でメディア研究家の小林偉によれば、それまでエンターテイメント業界には、東京大学出身者は何人かいたものの、その学歴を押し出していたわけではなく、むしろ隠していた。その理由については「かつて“東大卒”がエリートや選ばれた人々という、ヤッカミともいえるイメージを生み、世間の反感を呼んでいた時期もあった」としたうえで、「菊川の登場により、それまで東大にあった負のイメージを払拭した」と分析しています。
 また彼女が工学部建築学科出身のいわゆる“リケジョ”(理系女子)で、バラエティー番組で時折見せる天然キャラの影響もあり、「『東大、しかも理系の女子』と言われて、当時世間が抱いた少々とっつきにくいイメージをガラッと変えた」とも評しています。

 2016年から不定期特番で放送が始まった『さんまの東大方程式』(フジテレビ)で、現役東大生の独特な個性がフォーカスされ、翌年には『東大王』(TBS)のレギュラー放送開始により、伊沢拓司などの活躍で、クイズ番組にも重宝されるまでの一大勢力へと拡大した“東大出身タレント枠”。その現象について小林氏は「番組を制作する側に身を置く私なりの見解」と前置きしたうえで、
「クイズ番組の回答者として東大生(東大卒)を起用した場合、当然のごとく、番組側は難しい問題を用意します。それに見事正解すれば、視聴者は『やっぱり東大はスゴイ』となります。これに不正解すれば『東大も大したことないね』とばかりに、多くの視聴者はわずかながらに優越感を得られるというワケです。
 また、番組側が女子高生の間で流行っている事柄などを問題に設定し、これに東大キャラが不正解すると、従来通りの『東大生=お固く、浮世離れした人たち』というイメージに合致。『アイドルVS東大キャラ』といった図式を用意する場合などはその典型的使用例でしょう」と述べています。
 つまり、「東大生は、どう転んでもオイシイ」から重宝されるのです。

 そんななか、菊川の前述の言動は「東大=頭がいい」という、過剰に膨れ上がった世間のイメージを自ら切り崩しに行っているようにさえ映ります。

 東京大学に在籍する学生のうち、女性は全体のおよそ2割ほどにとどまっており、これが日本のジェンダーギャップの問題として、近年大きく取り上げられています。今から20年以上前、東大、しかも理系出身の女性として、芸能界に第一歩を踏み出し、大きな道を切り拓いた、菊川怜という存在の偉大さを改めて実感すると同時に、個人的には、いつか彼女が五千円札の肖像画に選ばれる日が来るのではないか、と想像しています。

 2017年に結婚し、現在3児の母でもある才媛は、今年4月クールの連続ドラマ『買われた男』(テレビ大阪)で“女性用風俗”経営者役を演じ話題となっています。彼女は今後どのようなキャリアを描いていくのか。そして、彼女が得意と語る、理系科目に特化したクイズ番組の登場は今後あるでしょうか。

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 参考記事
『「視聴者の東大嫌い」を払拭した菊川怜の大功績』 小林偉 東洋経済オンライン 2020年12月13日
『元祖東大タレント「菊川怜」“女性用風俗”経営者役に挑戦 半引退状態から突如復帰したのはナゼ?』 AERAdot. 2024年6月4日
『菊川怜「社会問題全般が苦手。毎朝苦手でした」 5年以上出演した「とくダネ!」振り返る』 日刊スポーツ 2023年9月20日
『東京大学の学内ポスターから考える。勘違いから抜け出し、理系女子獲得のために大学が真にやるべきこと』 花岡正樹 note 2024年6月16日

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