竹入り水羊羹
京都を訪問してからもうすぐ3週間が経とうとしている。
時間が経つのは本当にあっという間だ。
京都滞在中、いくつかの茶席を訪問した。
そのうちの一席でふるまわれたのが、この水羊羹。
「今日のお菓子は今の時期にぴったりのものです。ただ相~当食べにくいですから、お点前なんて見ている場合ではありまへんで~」
ご亭主が気さくにこんなことをおっしゃった。
研究会やらでお見かけした、着物姿がすっかり似合う男性陣が運んでこられたのは、水分を含んだ濃い色をした笹の葉にくるまれた、細い竹だった。
なんだこれ。
「これ懐紙に置くとすぐに水が貫通しますから、はよ食べなはれ~」
本当だ。
りゅうさん紙を携帯するのをすっかり忘れてしまった。
お茶会のために用意した朝顔の模様入りの懐紙は、今日で、いや、このお席でおさらばになりそうだ。
笹の葉をほどくと、竹の中に水羊羹が入っていた。
濃ゆい小豆色の、つるんとした水羊羹。
竹の底を下にして、上からとんとん叩いた。
そうすると、すぐに羊羹がにゅるっと外に出てくれた。
どうやら当たりはずれがあるのか、相客の羊羹は竹にぴったりくっついてしまったようで、竹から取り出すのに苦労されていた。
細長い羊羹を口の中に含むと、ほんの一瞬だけ青竹の香りがした。
柔らかい食感の羊羹も、さほど嚙まないうちに、まるで青竹の香りのようにすぐに形を消してしまった。
京都滞在記を書こうと思っていたが結局かけず、3週間が経とうとしている。
しかし、よかった。食い意地、いや味覚というのは、結構覚えているものだ。
茶会では、話題は祇園祭へ。
京都の夏を彩る風物詩。
今頃京都は、いつもに増して賑わっているのだろうな。