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きっと宇宙人に乗っ取られたに違いない
父の病院から帰るタクシーの中、彼はまた、母が素足でいることに対して文句を言った。「病気で気をつけなきゃいけないのにケアしていない」と、母が「ちゃんと」していないことに。
私は一瞬、なにを言っているのだろう?と思う。確かに父は理屈が通り、矛盾のない人を素晴らしいと思う傾向があるけれど。
だけど、気をつけてケアをしている人が、脳出血や大動脈瘤破裂ギリギリになる食生活や飲酒の仕方をするだろうか…
失職して行き場をなくしたとき、実家の店に頼み込んでバイトをした父は、給料を実際の半分と偽り、大量にお酒を飲んでいたことがバレて母を傷つけた。自分を大切にする人が良好な関係を壊すようなことをするだろうか…
この人は真顔でジョークでも言っているのだろうか。
別に、そのような食生活で病気になることや偽ってまでお酒を飲むことを悪いとか、ましてや責める気持ちなんて、まったくなくて。
ただ、自分の間違いは認めず、人に石を投げてばかり。
なぜそんなに「自分は正しい」と感じたいのだろう。もし本当に、当たり前のように自分はこれでいいとわかっていたなら、いちいち感じて確認する必要なんてない。
自分は間違っていると実は感じているから。その罪を背負いきれずに、他の人に石を投げてスケープゴートにしている、私はそのような気がした。
人は皆、「私は何も悪くない。私は正しい」と証明するために生きているのだという…
間違っていたら、自分がめちゃくちゃになってしまうから。罰せられるから。
だから、正しくなきゃ。正しくなければ認めてもらえない。愛してもらえない。やさしくしてもらえない。責められ、批判される恐怖から逃れられない。
人はなんて哀しいのだろう。こんなに正しいと証明してまで、生き延びなくてはならないと思い込んでいるなんて。人はなんて哀しいのだろう。
昔、父が朝お風呂で倒れた。頭から血がドバーッと出て、それからあまり動けなくなって、去年また瘤がドバーッになりそうで体を改造したらますます動かなくなった。
きっとあのとき父の体を宇宙人が乗っ取ったのだと思う。
ちょっと動こうとすると体が小刻みに震えている。プルプル震えている。意識が宇宙人に乗っ取られそうなので、父の意識ががんばって抵抗しているのだ。
そうに違いない!…笑