実話怪談 祭りの後に

 高校生のYさんは祭りに来ていた。毎年8月になると神社の境内で行われるものだ。吊り下げられた提灯、様々な屋台、浮かれる人達。Yさんも友達と祭りを満喫した。夜の10時になると、アナウンスが流れる。これで祭りは終わりだった。提灯の明かりも落とされる。
 Yさんは家に帰った。しかしそこで気づく。どうやら家の鍵を落としてしまったようだった。その日、両親は仕事で家には帰ってこない。
 きっと神社で落としたに違いない。
 一人で行くのは怖かったが、拾いに行かないと家に入れないのだ。仕方なく、再び神社に向かった。

 神社の石段を上っていくと、鳥居が見えてきた。そこでYさんは違和感を覚える。
 あれ、明かりがついている。
 境内は明かりがともっていた。それに人々の話し声も聞こえる。
 石段を上りきる。そこには先ほどと同じ光景があった。吊り下げられた提灯、様々な屋台、浮かれる人達。なぜかは分からないが、祭りが再び行われているようだった。
 不思議に思ったが、Yさんは家の鍵を探すことにした。地面を見ながら歩く。ふと、妙な事に気づいた。

 日本語のようで日本語じゃないのか?

 周りの人の話す言語が、日本語に似ているのだが、よく聞くと違うのだった。理解できそうで理解できない。気持ちの悪さを感じた。
「君、何をしてるんだ?」
 突然、巡回中の警官に声を掛けられた。Yさんは聞こえてきた日本語に少し安心した。
「鍵を落としたんです」
「それはこれだろう。落ちてたよ」
 警官はYさんの鍵を手渡した。
「こんな時間に出歩いちゃダメだ。早く帰りなさい」
 警官の背後では小さな子供が走っている。Yさんは納得できなかったが、帰る事にした。鳥居をくぐる。
 その時だった。辺りから、音や明かりが消えていた。後ろを振り返ると、誰もいない。さっきの喧騒が嘘の様だった。Yさんは怖くなり、急いで家に帰った。

 今でもあれはなんだったのか分からないのだそうだ。

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