民主主義って正しいの? 「民主主義とは何なのか」を読んで

長谷川三千子さんの「民主主義とは何なのか」という本を読んだ。結構な読書家だと自任していたのだが、今の今までこんな良書を探し出せなかった自分を恥じるしかないと思った。

 民主主義と言えばどんな意見であろうとまかり通るような風潮に気持ち悪さを感じてはいたのだが、その気持ち悪さへの風穴をきれいに開けてもらった気分になるのだ。

 著者いわく「民主主義とは元来いかがわしさをもって受け止められていた言葉である」だそうである。革命後のフランスの大混乱、特に人を平気で虐殺している様をみていると、そう思われても仕方ないだろう。
 著者は同じく革命の起きたイギリスについては、慣習法の効用を説いてはいるが、実のところはクロムウェルが反面教師として優秀すぎただけとも思うが。神ならぬ身である人間が法律を作ると不具合を生じやすい、そして投票する者もまた神ならぬ身である、という事も忘れがちである。

 著者はギリシャの例などを引き、丁寧に話を展開していく。人権の起源やアメリカやフランスの憲法制定過程など丁寧な説明に反論の余地もない。

 第一次大戦の頃までは多分の気持ち悪さをもって迎えられていた民主主義という言葉は、民主主義国家が独裁主義国家に勝利した、というプロパガンダにより大手をふって迎えられるようになったそうだ。

 確かに、参加した国の大半に大した利益もないのに、多数の戦死者を出せばプロパガンダのひとつも打ちたくはなるだろう、カイゼルを戦犯法廷に立たせようとするだろう。せめて賠償金でも取りたくはなるだろう。その戦後体制のお陰でヒトラーが台頭

 二次大戦でも、まるで同じ曲しか歌えないカナリアのようにさえずる国々。今度は戦争指導者を裁判で裁くことに成功したようである。ただし賠償金の方は懲りたようだが。
 その民主主義国家とかいうプロパガンダのせいで、世界中に軍隊を駐留せざるを得なくなって破綻しそうな国もあるようだ。

 ところで、田中芳樹という銀河英雄伝説の作者は「最悪の民主制は果たして最良の専制政治に勝るのか」というテーマでその小説を書いたと話している。色々と考えさせられるテーマではあるのだが、はっきり言って回答は人それぞれといったところだろう。このテーマは即答できるほど簡単なテーマではない事だけは確かだ。それをさも錦の御旗である、という風に扱うから間違うのだ、気持ち悪いのだ。

 「民主主義とは何なのか」を読んで、個人的には独裁制が、ただしギリシャみたいに投票で追放できるやつ、という結論に達したのだが、よくよく考えるとそれってただの変則代議士制だよね。
じゃあ、今のままで問題なし、ってなるところだが少し違うような気もしなくはない。

 昔考えていたのは、権利というのはどの範囲までが許されるのかという問題である。具体的には共有地のものはどこまで取っていいのか、であったり貧富の差はどこまで許されるのか、であったりだ。
 当然、有限の物なのだから無限であって良い訳がないのだが、それはいったい誰が決めるのであろう。関係する当事者同士で決めるしかあるまい。

 国会の論戦が気持ち悪いのは、その片方もしくは双方が当事者同士であるという自覚がないからだ。党議拘束などなくしてしまえ。「民主主義とは何なのか」では十七条憲法を例に出して、こと細かに説明されているが、もう「共和」の一言で説明できるのではないか、とは思った。下手に民主主義だの国民主権だの言うから勘違いする連中が出るのだ。
それにしても、明治の先達はさすがである。

 だいたいアングロサクソンなんてのは権利を言い立てるしか能のない連中なのである。環境を考えれば多少の同情の余地はあるにしても、自分が間違うかもなんて謙虚さなどカケラもないのである。だから※ただしインドは除く、なんてやらかすのだ。
 だから米英を見習った議会運営などしなくていい、日本はただ「共和」に戻ればいい。

 人は完璧ではないという謙虚さと、権利は無限ではないという謙虚さ、話し合って変えていける柔軟さを持てればもっともっと良い未来が見える、きっと。

 とにかくご一読あれ。

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