藤原正彦氏「卑怯を憎む心」「惻隠の情」父から学ぶ
『致知』2月号の表紙に、藤原正彦の文字がありました。
真っ先にそのページを開きました。
「提言 日本を凛とした国にするために 明治に学ぶ二〇五〇年の日本をひらく道」と題されていました。その一部を紹介します。
最初の小見出しは「日本には世界に誇るべき美質があった」
続いて「西洋思想に飼い騙された日本のインテリたち」「人権思想と日本の美徳の根本的な違い」の後に「武士道精神を叩き込まれた人生の原点」がありました。
藤原正彦氏の子供のころの体験です。
「私が幸いだったのは、子供の頃から武士道精神の何たるかを作家だった父・新田次郎からしっかり教えられたことです。とりわけ卑怯(ひきょう)を憎む心、惻隠の情については徹底して叩き込まれました。
『学校で弱い子や貧しい子がいじめられていたら、何が何でもその子を助ける。助ける時には力を使ってもいい』。それが父の教でした。実際、腕力に自信があった私は、いじめの現場に駆けつけていじめっ子をぶっ飛ばした経験を持っています。弱い者を助ける場合に限って父が暴力を許してくれたのは、武士道精神を支えに生きていた私の原点でした。
一方で、子供の頃から『山びこ学校』とか大関松三郎(おおぜきまつさぶろう)や宮澤賢治など、東北の貧しい人たちの作文や詩、童話などを読むことで知らず知らずのうちに惻隠の心を培うことができたように思います。
最も影響を受けたのはイタリアの作家デ・アミーチスの『クオーレ』で、親子の愛や家族の絆、惻隠や卑怯などについての話が日本の武士道精神と共通していることに驚いたのをよく覚えています。
気象台に勤めていた父は、朝日を浴びてキラキラと輝く草花の露を見ながら、少年の私に光の屈折の仕組みを話してくれたり、それを題材にして一緒に俳句を詠んだりして、情操と科学両面の感性を育ててくれました。
このことも私の人間的な基礎をつくってくれました。美しいものに感動する心がないと数学は深められないというのが、数学者である私の持論です。」
これを読んで「この父親にして この子あり」と思いました。
子育てにおける親の役割、非常に大事ですね。
私の場合、私が生まれる前に出征して戦死したので父親に一度も会っていません。
我が子が生まれたときに、父親としてどう接したらよいか分かりませんでした。
続けて「読者文化の復興が欠かせない」「読書を通して人としてのあり方を学ぶ」の小見出しがあります。
私は、出版をしていることもあり、本の価値、読書の大切さを常に感じています。
本好きな子供に育てられたら、その子にとってもどんなに幸せなことかと思っています。
過(あやま)てば則(すなわ)ちを改(あらた)むるに憚(はばか)ること勿(な)かれ。(『致知』2月号「巻頭の言葉」)