”月と星の律”と”黄金の律”~エルデンリングが示すこと~(エルデンリングDLC考察)
どもども。今回は、第1章で”エルデンリングのデザインが示す意味”について見ていき、そして、第2章で”冷たい夜の律”や”死のルーン”、”黄金律”について考察していきます。正直、第1章はあまり大事ではないので、そこはさらっと読んでもらえればと思います。
1.黄金のエルデンリング
このエルデンリングのデザインは、ざっくりと言ってしまえば、黄金樹から受ける祝福を表しています。
具体的に見ていきましょう。
1-1.黄金樹の雫
まず、真ん中の上から下に真っすぐ引かれた線は、黄金樹から滴る雫を表しています。
そして、一番上の弧は、”磔にされたマリカ”や”マリカの刻印のデザイン”から、黄金樹に宿った神と考えられます。
真ん中の上から下に伸びた線は黄金樹から滴る雫で、神が宿った黄金樹から雫が滴り落ちているデザインになっていると考えられます。
1-2.弧
弧に関しては、≪ルーンの弧≫のテキストに書いてあるので見てみましょう。
”エルデンリングの下方に、輪の恩恵の受け皿である底辺の弧がある”と書かれています。
そして、輪とは黄金の星を表します。すなわち、輪の恩恵とは、黄金の星の神々の力から構成される黄金樹から滴る雫であり、祝福だと言えます。全部で4つの弧がありますが、弧で区切られた領域は、上から”天界”と”天界と地上の間”と”地上”を表しています。
これは、考察”エニル・イリムの全貌”で説明した通りです。天界まで伸びた黄金樹に神が宿ることで、黄金樹の雫をそれぞれの弧に垂らし、天界から地上の全域にまで祝福(大地の豊饒など)を授ける形です。
1ー3.中央の4つの円
中央の4つの円は、黄金の一族の星の神々を表します。金星(ミケラ)と太陽(ゴッドウィン)で、2つの円は確定です。最初の黄金の一族には、ゴッドフレイとモーゴットがいます。恐らく、この2人の元の神が残りの円を表しますと思います(ゴッドフレイはちょっと怪しいかも、、、)。
モーゴットに関しては、恐らく、古代メソポタミアの神話に出てくる木星の神マルドゥクであったと考えられます。マルドゥクも太陽を表すとされ豊饒のシンボルです。≪モーゴットの大ルーン≫のテキストにはこう書かれています。
モーゴットが、黄金の一族であることが分かります。そして、重要なのは”確かにローデイルの王であったことを”の言葉です。これは、恐らく、マリカに喰われる前、モーゴットが木星の神だった頃の話だと考えられます。
古代メソポタミアの神話の中で、木星の神マルドゥクにはこんな話があります。(ややこしいのでなんとなくさらっと読んでもらえれば)
古代メソポタミアの神話によれば、木星の神マルドゥクは、奪われた天命の粘土板(神々や個々人の寿命・役割などが刻まれたもの)を奪い返し、神エンリルから王権授与の神格を継承しました。
エニル・イリムのエニルは、古代メソポタミアの神話の神エンリルに相当する神で(考察”エニル・イリムの全貌”の1-1参照)、エニルが統治していた領域は天と地の間と考えられます。そして、その領域には王都ローデイル(アルター高原)が君臨しています。
恐らく、ゲーム内でも、マリカが狭間の地を統治する以前に、木星の神マルドゥクが、神エニルから神々に対する王権を継承し、王都ローデイルにて神々の王になったと考えられます。
その証拠に、マリカの閨には、大量の粘土板が置かれています。
これは、マリカが統治する以前に、黄金の星の神々が狭間の地を統治していた際、天命の粘土板を奪い返した木星の神マルドゥクが、王都ローデイルのこの部屋に、王として君臨したことを表しているのだと考えられます。
モーゴットの話をしましたので、エルデンリングのデザインに戻りましょう。
ゴッドフレイに関しては、何の神から生まれたか分かっていませんが、それぞれの神(デミゴッド)がどの円に対応するのか考えてみます。
モーゴット(木星の神)とモーグの大ルーンの形が似ていることから、イシュタル(金星の神)とマレニアの大ルーンが似ていることが予想されます。
太陽の光は大地への恵みの要となるので、太陽が中央に配置されると予想されます。
木星の神(モーゴット)の大ルーンは、真ん中に線が入っているので頂点に位置すると考えられます。そして、金星の神(ミケラ)の大ルーンは、マレニアのものと同様に、右側に線が垂直に入っていると予想されるので、左側に位置すると考えられます。
図に示すとこんな感じになるでしょう。
考察”ゴッドウィンの正体”で言及しましたが、中央の格子状の線は太陽光線を表します。図では、マリカが磔にされていますが、影の地では、太陽の神が宿っている影樹から雫が垂れているので、元々は、太陽の神が黄金樹に宿っていたと思われます(狭間の地の黄金樹と影の地の影樹(黄金樹)が違う存在なのか同一のものかはちょっとよく分からないです)。
大地に恵みにおいて、太陽の光の影響力が一番大きいと思うので、太陽の神から雫(祝福)がもたらされるという考えが自然だと思います。
また、それぞれの大ルーン(星の神々)にも何か役割があった可能性があります。断定はできないですが、古代メソポタミアの神話から推測すると、金星の神(ミケラ)は愛や生命誕生、木星の神(モーゴット)は豊饒(成長?)などを司っており、4つの星(恩恵)が集まることで、狭間の地に大きな恩恵をもたらしていたとも考えられます。
黄金の一族以外にも大ルーンが割り当てられていますが、恐らく、黄金のエルデンリングとは関係のない神なので、その神たちの大ルーンの形に意味はないと思います。
という訳で、黄金のエルデンリングは、太陽などの黄金の星々からの恵み(祝福)を狭間の地全域に与えていたことを表している、と言えます。
2.もう一つのエルデンリング
エルデンリングが示す内容について説明しましたが、まだ謎があります。ファルム・アズラのエルデンリングの意匠です。
なぜ、エルデンリングの意匠が2つもあるのでしょうか?
恐らく、この疑問自体が間違っています。
なぜなら、エルデンリングは3つあったと推測されるからです。
2-1.冷たい夜の律
先ほど、エルデンリングのデザインについて見ましたが、あれは黄金のエルデンリングであり、太陽からもたらされる恵みを示しています。すなわち、太陽が出ているときしか有効ではありません。
太陽が沈み、夜がきます。そうすると、夜の間も何かしらのエルデンリング(律)があったことが予想されます。
ラニは、こう言っていました。
”私の律は黄金ではない。星と月、冷たい夜の律だ”、と。
この言葉から、狭間の地には、太陽のエルデンリング(黄金の律)と星と月のエルデンリング(冷たい夜の律)があったと考えられます。
そして、その”冷たい夜の律”の存在を示唆するのが≪指殺しの剣≫です。
”遺体から生まれたとされる刃”だと分かる。何の遺体から生まれたのでしょうか?
その答えは、≪指殺しの刃≫に似た剣を見れば見えてきます。
それは、≪神の遺剣≫です。
≪エルデの追憶≫から得られる剣です。
画像を比較してみましょう。
どちらも刃は”螺旋状”です。そして、神の遺剣の方は少し分かりづらいですが、持ち手が、トカゲのような生き物の下半身に見えます。
≪神の遺剣≫のテキストには、”神の遺体から生まれる剣”とあります。これは、エルデンリングである”エルデの獣”、又はエルデンリング(エルデの獣)を宿す神から生まれた剣だと解釈できます。
これらのことから、≪指殺しの刃≫は、”冷たい夜の律である、もう一匹のエルデの獣”を殺すことで得られたと考えられます。それが”冷たい夜の律”を担っていたエルデンリングです。
そのことから、永遠の都が滅び地下へ沈められた原因は、エルデンリングであるエルデの獣を殺したことだと考えられます。地下に存在する遺跡の名は、”ウルの王朝遺跡”です。
古代メソポタミアでは、ウルでは月の神、ウルクでは金星の神が信仰されていました。ゲーム内のウルとウルドに対応していると考えられます。
冷たい夜の律を司る月や星の神たちが、夜のエルデンリングであるエルデの獣を殺す大逆を働いたことで、大いなる意志によって地下深くに沈められたと推測できます。
また、”しろがね人が足を失い消えていくこと”と”律”は関係していると考えられます。黄金の律が示すように、冷たい夜の律も、大地に大樹の雫をもたらし、狭間の地の夜に関連する住人に祝福を与えていたはずです。
地下世界では、”星の光を放つ神秘的な露”に塗れたヘルパが育ちます。そして、永遠の都では、”秘雫である星の雫(夜の雫)”が採取されます。
”黄金の律において、大樹が黄金の雫(樹液)をもたらす”のに対し、”月と星の律においては、大樹が星の雫(夜露)をもたらす”と予想されます。
その祝福の元となる”冷たい夜の律”がなくなってしまったことで、しろがね人たちは足が消えてなくる業をを背負っていると考えられます。
大きな妹に最初の雫を授ける”しろがねのラティナのイベント”がありますが、最初の雫とは、”冷たい夜の律を司る大樹から得られる夜露である祝福”のことを指している可能性があります。
2-2.生と死の螺旋
次は、≪指殺しの刃≫と≪神の遺剣≫などの螺旋から、考察を進めて行きます。
螺旋状の刃は、金星の二つの側面である”明けの明星”と”宵の明星”を表していると考えられます。”太陽と共に現れる明けの明星”と”月と共に現れる宵の明星”は、昼と夜を繋ぐ要の存在だと言えます。
図に表すとこうなります。
金星の神(ミケラ)に関わるアイテム≪ミケラの針≫や≪神狩りの剣≫などでも見られますが、二重螺旋は、”明けの明星”と”宵の明星”の生と死の繰り返しによる循環を表すと考えられます。
一般的に(言い過ぎ?)、太陽が昇ることは生命の誕生を表し、太陽が沈むことは生命の死を表します。二重螺旋は生命の循環を表します。
これは、金星の神の”宵の明星”の人格が”宵眼の女王”であることにも繋がります。宵眼の女王は、運命の死を司り、死の象徴と言えます。
しかし、黒き剣のマリケスにより、宵目の女王の死のルーン(運命の死)は封印されました。そのことにより、狭間の地から、”死”が取り除かれました。
”死”が取り除かれるとどうなるのでしょうか。
先ほど言ったように、太陽が沈むことは”死”を表します。すなわち、死は夜であり、死を取り除くことは夜を取り除くことを意味すると考えられます。
つまり、死のルーンを封印したことで、夜がなくなったと考えられます。
狭間の地は、ずっと昼間だったのです。
常に生の象徴である太陽が出ていることは、不死で不変を意味します。
”金色の大便は安定性が高い。それはずっと大便である”。これは、生の象徴である太陽(黄金)の力が宿り、死(夜)が訪れない不変であることを示していると考えれます。
”黄金”とは、生の象徴である太陽のことを示すと考えられ、死が訪れない状況が”黄金律”だと言えます。
夜=死のルーンを取り除くことで、ずっと”太陽が出た昼間”になることで黄金律が完成されたのです。
しかし、ゲーム内の現在ではどうでしょうか。
狭間の地では、太陽は北東から上り、南西に沈んでいき、夜が訪れます。黄金律が完成され、ずっと昼間であるという考察と矛盾します。
しかし、そのあと、奇妙な現象が起きます。
夜になりますが、影が存在します。
”黄金樹”か”月”の光による影かと思ったのですが、太陽が昇り沈むように影が動いています。黄金樹と月の位置は固定なので、この二つの可能性はないでしょう。
光源の動きを影から推測するに、太陽が北東から南西に沈んでいく真逆の動きをします(場所によってちょっと違いますが)。しかし、実際には太陽は見えません。
恐らく、この見えない太陽が、ソールの城砦で言及されていた”冷たい太陽”であり、”色褪せた太陽”だと考えられます。
しかし、先ほど、夜(死)は封印され、ずっと昼間になり黄金律が完成したと言いました。それに反し、現在のゲーム内では、夜は存在し、冷たい太陽が照らしています。これは、どういうことでしょうか。
それは、”陰謀の夜”が転機だったと考えられます。
2-3.陰謀の夜
なぜ、ずっと昼間だったはずの狭間の地で、夜に冷たい太陽が照らしているのか。
それは、”陰謀の夜”をきっかけに変化したと考えられます。
ストーリートレーラーの中で、ラニは、陰謀の夜が起きたときのことを、「…冷たい霧の夜だった」と語っています。
しかし、黒き刃の刺客の乗っていると思わしき馬たちが駆け抜ける森には、日が差し込んでいます。
ラニの証言と映像は矛盾しているように思えます。しかし、これは、夜も太陽に照らされ、常に明るかったことを示しています。
すなわち、黄金律が支配していた時代だと分かります。
そして、陰謀の夜では、ゴッドウィンの魂が殺されます。ゴッドウィンが殺されたシーンをよく見ると、興味深い現象が起きています。
このシーンでは、徐々に光が消え、暗くなっていきます。
これは、ゴッドウィンが殺されることで、太陽の光の色が薄くなっていき、冷たい太陽(色褪せた太陽)ができたことを示していると考えられます。
ゴッドウィンは、前回の考察”ゴッドウィンの正体”でも言及しましたが、マリカが太陽の神を喰らうことでゴッドウィンが生まれました。つまり、ゴッドウィンの魂は、太陽の神です。その太陽の神の魂が、陰謀の夜で殺されたたのです。
そして、これ以降、”死に生きる者”たちが出現したと思われます。
太陽は”生”の象徴でありますが、冷たい太陽は”死に生きる者”の象徴だと考えられます。
冷たい太陽が夜を照らす。”死の象徴である夜”に、冷たい太陽が死んだ者を照らすことで、”死した状態で無理矢理、死者を生かす”と考えられます。
言い変えれば、死しても死(夜)を迎えず、常に生き続けることを示します。つまりは、夜も、冷たい太陽が照らすことは、死んだものを、”死に生きるもの”とします。
また、ゴッドウィン(太陽の神)の魂の死により、太陽が完全に消えず、色褪せた冷たい太陽になっている原因は、”死竜フォルサクス”の抵抗によるものだと考えられます。
”死竜フォルサクスが、ゴッドウィンの内で死と戦い続けた”ことが分かります。恐らく、黄金の雷の力を以て、”黄金=太陽”を維持しようとしたのではないでしょうか。
”雷は、金色であり、古竜を友としたゴッドウィンは黄金の雷を振るった”ことが分かります。
これは、元々、太陽の神(ゴッドウィン)が古竜に”黄金の雷”の力を授けた可能性が考えられます。”太陽=黄金=(黄金の)雷”という関係だと言えます。
太陽の神が、竜王プラキドサクスに王権を授けることによって、古竜が”黄金(太陽)の雷”の力を備え、そして、その力を以てして太陽(黄金)が蝕まれることに抵抗している、と考えると筋が通ります。(金星の神が竜王プラキドサクスに王権を授けた(伴侶とした)説や、明けの明星と太陽の神はセットの存在だった説もある)
2-4.分け身の存在
陰謀の夜について、もう少し見ていきましょう。
ゴッドウィンには、”分け身”の存在が示唆されています。
狭間の地には、ゴッドウィンの遺体と見られる存在が、”深き根の底”と”ストームヴィル城の地下”に見られます。また、影の地では、地下墓の二ヵ所でゴッドウィンの遺体が見られます。
これらは分け身の存在で、陰謀の夜に、死のルーンの宿った黒き刃でゴッドウィンの魂を殺すことで、分け身は皆、死んでしまったと考えられます。
このことから、恐らく、分け身という存在は、大元のゴッドウィンと魂を共有していたのではないかと考えられます。
そして、デビュートレーラーのラダゴン(マリカ)をよく見てみると、背中に大きな傷跡が見られます。
傷は、左肩から大きく広がるように割れています。これは、傷跡が完全に一致する訳ではないですが、ゴッドウィンのものと似ています。
ゴッドウィンもまた、左肩から伸びるような傷があります。
これは、ラダゴンもまた、太陽の神の魂から生まれた、ゴッドウィンの分け身であることを示しています。陰謀の夜に魂が殺されることによって、魂から生まれた(魂を共有する)分け身が連動して死した訳です。
しかし、傷を負いながらもラダゴンは生きています。
具体的なことは分かりませんが、これは、マリカと一体化した結果、どうにか生き延びることができたのではないかと考えられます。
そして、陰謀の夜を境に、マリカが雲隠れした理由は、ラダゴンであるマリカも致命傷を負ってしまったことが原因ではないかと思われます。
また、完全に魂を殺すことが出来なかったラダゴンの存在も、完全に太陽が蝕まれていない(消えない)原因の一つと考えられます。
そう考えると、ミケラが褪せ人に求めていたことは、ラダーンとモーグの殺害に加えて、ラダゴンの殺害もあったのではないかと思います。というか、それがメインな気がします。
という訳で、今回の考察は以上です。
”月と星の律”の話をもう少し解明したいのですが、上手く纏まらなかったら、先に”外なる神”の考察を上げます。
4.おわり
読んで頂きありがとうございました。そろそろ考察ネタも尽きてきたような、そうでもないような、、、最近、AC6とインフィニティニキにハマってるので、ちょっと更新が遅れたらすみません。あけおめです。