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詩 あの頃わたしは

空を泳いでいく虹色の太陽

道幅いっぱいに伸びた木々の枝には緑のヴェール

ゆらゆらと波打つ正午の木漏れ陽たち

光と影の迷彩が木陰に立ち尽くす私の体を大気へと溶かし込んでいく

心を縛りつける幾多の不安よ

南の風に飛んでいけ

空へ昇って雨も降らせろ



あの頃私は大学生で

モラトリアムの小舟に乗って

行き着く島も見当たらず

波にもまれて行ったり来たりしていた

憂鬱で塗り固めたような暗いアスファルトの地面からは

黒い湯気が立ち昇り

やがて真っ黒な霧となって私を包んだ



ああなんにもあてにならない

星たちよどこへ消えたのだ

南の空に紅く輝く蠍の星よ一体どこへ消えたのだ

私はただただ足元でチカチカと点いたり消えたりする

かすかな光の明滅だけをたよりに

一歩ずつ歩を進めるしかなかった

どこへ続いているのか検討もつかない暗闇へと向かって

おぼろな前進運動を繰り返すだけだった




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