【ショートショート】夢の南の島
新婚夫婦が旅行で海外に飛びたちました。飛行機は悪天候のなか、あいにく南の島に不時着してしまいました。
しかし、その南の島は、どこまでも広がるカリビアンブルーの海に、白く長く続く遠浅の砂浜を波飛沫が洗い流し、日常の些末なことなども、洗い流してくれます。
島には、低木が茂っていて、大きな樹の実が採れます。島の人たちは、樹の実を主食にしていて、栄養があり、とても美味しい樹の実を、毎日食べて健康に暮らしています。
その低木からは、ハープを作ることもできます。島の人たちは、ハープを作り、一日、この世のものとは思えぬ、美しい音楽を奏でています。その音楽を聴いていて、海を眺めていると、生きているとは実はこういうことなんだと、都会の喧騒を離れて実感できるのです。
そこへ、島の古老がやってきました。ようこそ、南の島へ。ここでゆっくり暮らすのは、幸せだよ。ただ、海が島を侵食して、島がどんどん小さくなっていくんだよ。そしてそのまま海に還る。それでもこの島は、天国だ。
新婚夫婦は、帰るのをやめ、この地図にも載っていない南の島で生きていくことを決めました。
(おしまい)
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