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武器屋の餌付け【ショートショート#42】【440字】
魔物の森のすぐ傍にその武器屋はあった。人通りの少ない立地でも、店主ゴローの腕を頼りに冒険者たちがこぞって訪れる。だが、店にはかれらも知らない秘密があった。店じまいの後、地下室の灯りを点す。そこには、腹を空かせた魔物たちがいた。
ゴローは戦士だった。鍛え抜かれた巨体と剣・防具に造詣の深いかれは、有名パーティにひっぱり凧だった。「ゴローさえいれば、森のヌシも攻略できる」と賢者に言われた時はまんざらでもなかった。それが間違いだった。
気づけば仲間が全滅していた。傷だらけのゴローを残して、森のヌシは五メートルはあろう背中を見せて去った。俺は死ぬのか。すると、一匹の美しいハーピィがこちらを覗き込んだ。
なぜハーピィが助けてくれたのかは分からない。彼女は町の正門まで運んでくれた。それからだ。冒険者から足を洗ったのは。罪滅ぼしのつもりだった。
「ごめんください」
空から声がする。親子らしき二匹のハーピィが降り立った。
「あの時の」
「お元気そうでよかった。娘を保護してくれたのは、あなたなの……?」