よく聞く「民藝」のことを考える
いざ、名古屋市美術館へ
11月某日。
筆者は名古屋市中区にある名古屋市美術館を訪れる。
「民藝 MINGEI-美は暮らしのなかにある」展を見るためだ。
思想家であり民藝という概念を生み出した「柳宗悦」を知っている人は多いだろう。本展は「衣・食・住」をテーマにした宗悦のコレクション展示と、
今も続く民藝職人について紹介されている。
コンパクトだが非常に見ごたえのある展示だった。
柳宗悦との出会い
読書がめっぽう苦手な筆者はページ数が少なく、数日で読み切れる本が好きなのでMUJIが出している人と物シリーズをよく読んでいた。
そこで出会ったのが人と物1 柳宗悦であった。記憶力も乏しい筆者の頭に残ったメッセージは
「自分の空間に置くモノはマスプロがあっても良い。但しその中に手仕事や生活が際立つ生活をよりよくする"モノ"が存在していることが大切である」
全くもってその通りだと思った。生活を彩るのは1点物の工芸品やアンティーク、デザイナーズ家具だけではない。
(もちろんそれらは良い品々であり、手に入れたい対象ではあるが)
本人が使いやすい、素敵だ、と思う気持ちが何より大切なのである。
そこから私は柳宗悦のファンになった。
置き方とか並べ方とかセンスとか
展示の一つに宗悦のコレクションを部屋の内装風に配置したものがあった。
流石展示会。統一感があるのはもちろんなのだが、空間の中に和洋折衷、時代様々なモノが生活空間の一部にぴったり当てはまっている。
ここに住みたいとすら思う。
この展示に配置されるために宗悦だって収集した訳ではないはずだ。
それでもそこには良さそうな生活の香りが漂っていた。これをセンスと呼ぶのだろう。
染色の人「芹沢銈介」
展示では、柳宗悦の民藝運動を共に歩いた染色家の芹沢銈介にも触れている。沖縄の紅型に感銘を受け、その多大なる色彩センス(ここでもセンス)を発揮した芹沢銈介が生み出した作品は国内にとどまらず、海外でも人気を博した。
数々の作品の中でも筆者が釘付けになったのは昭和20年から作られているという和紙カレンダー。まるでさくらももこワールドなこのカレンダーは
鮮やかだが落ち着いた色合いで夢中になり、そのままミュージアムショップで2025年版を購入した。
民藝はまだまだ深い
当時宗悦が唱えた民藝と今現在我々が解釈しているそれは異なるものかもしれない。だが、生活を彩るモノに美しさを見出そうとする、その姿勢を大切に日々を過ごしていきたい。