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作品を深く濃くするために、書き手は自分の引き出しの中身を多彩にすべし!

次作に向けて、いろいろインプットする時期となりました。売れていて話題となっている作品を読んでも、世間話の種になるだけで、執筆に活かせる素材は往々にして見つかりません。よりレアでインパクトのあるモチーフを持っていることで、作品の奥行が決まるのです。
このところ、未体験のジャンルの小説を読むように心がけています。

あなたは宇能鴻一郎を知っているだろうか?

『姫君を喰う話』 新潮文庫 宇能鴻一郎著

――ただならぬ小説がここにある。官能の巨匠か、文芸の鬼才か。
戦慄の表題作をはじめ、鬼気迫る芥川賞受賞作「鯨神」など、
人間の深淵を容赦なく抉る至高の6編。
「変態」こそ人間である。 

ーー文庫本の帯には、このパワーワードが炸裂してました🔥
私はネットのどこかの記事で、この本が絶賛されているのを目にしていたらしく、本屋で平積みされていたのを何気なく手に取って買ったのです。
近くのフードコートで読みだした私は激しく心拍数が上がり、血走った目で周囲の人目をはばかって挙動不審になりました。ページをめくるたびになんとも罪深くいかがわしい、そして人間臭く穢れていながら魅惑に満ちた世界への扉が開かれていったのでした。

表題作は、春画のテーマにもなっている平安後期の秘画絵巻「小柴垣草紙」が原典、それを猥雑な現代から照射して、情趣溢れる官能と哀しみの中で永遠に耀く純愛へと昇華させた宇能先生の筆力にノックアウトです。
芥川賞受賞作の「鯨神」では、猛々しい漁師の崇高な魂を描きだしてますが、それが退屈になるほどに他の作品が強烈過ぎた……。

綺麗事でなく、どうしようもない性癖、突き上げる衝動に苛まれて生きるしかない主人公たち。
あまりに人間らしく描かれる彼らに、最後には切ない共感を覚えてしまう自分が怖い。
大なり小なり深い宿業を抱えて生きるのが人ならば、宇能鴻一郎は人間の真髄を極限まで描き抜いた作家に違いないのです。

至高の6編と言われるこの宇能作品は、純文学、いや官能小説でもない、ジャンルを超えた傑作小説と解説でも語られます。
以前は好きな作家以外はあまり読まなかった私ですが、今では時代小説から現代物、ミステリの草分けである岡本綺堂から現代ミステリまで、熟読するので冊数は少ないですが、幅広く読むように心がけています。

今後のわが執筆に宇能作品の噎せ返るような濃密なカラーが、どう活かされるか、乞うご期待!といったところです!

最後までお読みいただき、今回もありがとうございました☆

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