見出し画像

未だに聞かないあの曲

確かかれこれ20年以上前の話である。
当時オリジナルで活動しているバンドに加入もしくは
自分のオリジナルをやってくれる人を見つけるために、
加入やメンバー募集に積極的だった時期に、
出会った人で、名前は確か佐藤君だったような
というわけでオリジナル曲をやってる人と
お会いすることになった。

近所のファミレスで待ち合わせをし、
実際駐車場であった。


(昔の事なので都合のいい様に思い出を補正してると思います。)
年のころは自分より2歳から3歳上の少しだけ強面の人だった。
大男ってより、狼系のお兄さんだった。

あって自己紹介を私がして、
向こうも自己紹介をしてきたが、
名前を佐藤と名乗るだけだった。
この時から違和感はあったのだが、
ミュージシャンというものは、
こういう愛想がない方が
スタンダードだと思い、
当時は何もできなかった。

程なくして曲を聞かせるからと
佐藤君の車の助手席に座らされた。
この時も割と強制的な言い方だった。

「じゃあ 曲聞かせるから車乗って」

乗ると当時流行っていた車の芳香剤の臭いが強く。
いわゆる当時のギャル男系の内装で
ダッシュボードにはふわふわの毛皮みたいな敷物
バニラ系の香り
間接照明の増設
そしてそこでカセットテープのカーステレオで
佐藤君のオリジナルを2曲聞かせてもらった。
今でも口ずさめるが、
今考えると
ロック系のリズム
BPM 140 前後の割と速いビート
ギターソロは歌メロからフェイクさせて展開
KEYは半音下げのE♭
ダイアトニックコードのみで作られている
ボーカルは佐藤君 割と高い声の歌声
当時流行ってたビジュアルロック系の音楽だったと思う。
歌詞もファンじゃないと理解できない感じだった。

聞き終わり私は今よりもっと無知だったので
オリジナル自分で作って、車も所有し、
仕事もしてて、大人のミュージシャンというのは
カッコよいもんだなと、疑問を感じながらも
+で捉えていた。

私は当時ベースをやっていて、
ジャンル的にも嫌いではないし、
なにより新しい活動のきっかけになればと
興味があると返答した。

佐藤君もそれには了承してくれた。
しかしこの後の事は未だに覚えている。


車を降り、では曲を覚えて活動に合流できるようにと
今現在でもやっている

「準備していきます」
宣言をし、
音源も頂けますか?と聞いた時


「音源は渡せない」

と言われた。

いやもうビックリして、

「えっ?」

としか言えなかった。

佐藤君の主張は、
俺の曲はもうオーディションに受かっていて
メジャーデビューも決まってる。
そして曲は自分の財産で、パクられたり
流出されたら迷惑だから信用できない人には、
渡せない。
という事だった。

「じゃあどうすれば?」

と私は困惑し、返答もはっきりと言えなかった。
そして私が信用に足る人物か判断するために
しばらく質問されたり、彼の主張を聞かされたり
この時も当時は対応できなかったが、
「本当に君は信用できるの?」
と強く言われた思い出はある。

私はパクりたいという気持ちや
流失させたりしたい気持ちは
本当にゼロだったので、
別にしませんと従順に答えた。
しかし なんかヤンキーに路上で
絡まれたような気持ちになっていた。

結局テープはもらい、
パクリ流出は禁止だったが、
一連の流れと私の友人に聞かせるのは
合法かと思い、当時の近しい友人二人くらいには
聞かせて、経緯を説明した。

今考えると・・
色々な所に疑問を感じるが
私も経験も不足していて、
このバンドに採用されれば、
色んな状況が変わるかもと
半ば本気で思っていた。
私もいわゆるデビューしたい病を
患っていたと思う。

友人もこの話を
私と同じアホだったので、

「すげぇな プロってこういう事なんかぁ・・」

とビビりながら全部信じていた。

そして曲を覚え
埼玉県の川越あたりのスタジオでリハーサルをすることに
佐藤君の仲間のヤジくんという
ギタリストを紹介された
長髪 黒髪の90年代ヘビメタスタイルの風貌で
人当たりがよく。
ときどき独り言が多いが、
私としては割と感じの良かった人だった。

リハはベースの私
歌を歌う佐藤君
ギターのヤジくん
最初に車の中で聞かせてもらったデモを
流しながらリハを行った。
ドラムは探すという話だった。

演奏自体にはそんなにダメ出しされなかったと
思う。
冷静に考えると下手だったと思うが、
特に指摘された記憶がない。

結局2回か3回くらいリハーサルして
何も進展なく、その帰りに
俺らに正式採用されるように頑張ってと言われて、
やる気がなくなったと記憶している。

時々その曲を思い出し、
デビューも決まってた 「世界」
という曲。

25年くらい経過しているが、
未だにお茶の間で聴いたことがない。
メロディーは今でも口ずさめる。
コードも本気になれば、
思い出せそう。


いいなと思ったら応援しよう!