個別株投資の幻想：S&P500に勝てない現実
多くの人が株式投資に夢を抱く。
「自分だけの選択で資産を大きく増やせる」と考える人も多い。
特に個別株投資は、自分の知識や判断力で利益を得られるという感覚を与えるため、魅力的だ。
しかし、それは本当に現実的な目標なのだろうか？
個別株投資が市場平均を超えるのは簡単ではない。
ここでは、プロの実績や統計データをもとに、個別株投資の難しさとインデックス投資の優位性を解説する。
プロでも市場平均に勝てない
個別株投資の困難さを示す例として、投資のプロたちの成績を見てみよう。
ジム・クレイマーはアメリカで最も有名な投資アドバイザーの一人だが、彼の推奨銘柄ポートフォリオは2021年から2023年の3年間でS&P500に約5%劣後している。
次に、ウォーレン・バフェットを例に挙げる。
彼は「投資の神様」と称され、長年にわたる成功で知られる。
しかし、バークシャー・ハサウェイのパフォーマンスは2010年代後半以降、S&P500の年平均リターン14.5%を下回る年が目立つ。
膨大な時間とリソースを費やすプロでさえ、S&P500を上回ることは容易ではない。
この現実を見れば、一般の個人投資家が市場に勝つのはさらに難しいことが明らかだ。
個人投資家が直面する限界
個別株で市場に勝つには、情報の質と分析力が重要だ。
しかし、個人投資家は限られた時間とツールしか持たない。
たとえば、平日に本業を抱え、週末に数時間だけ企業分析を行ったとして、それでプロを凌駕できるだろうか？
統計的には、多くの個人投資家が市場平均を下回る結果に終わっている。
JPモルガンの調査によれば、個人投資家の80%以上が市場平均を超えられない。
成功するのは一握りで、大多数は「負け組」に甘んじる現実がある。
個別株投資が抱えるリスク
個別株投資には「勝てる」という幻想がつきまとう。
しかし、実際には多くのリスクが存在する。
1. 市場の効率性
市場は新しい情報を迅速に株価に反映させる。
あなたが得たニュースや情報は、すでに株価に織り込まれている可能性が高い。（市場効率仮説と呼ばれる）
これは、個人投資家がプロと同じタイミングで行動するのはほぼ不可能であることを意味する。
2. 感情による誤判断
人間の心理は投資に大きな影響を与える。
株価が急落すると恐怖から売り、急騰すると欲望に駆られて買う。
こうした行動はしばしば損失を拡大させる原因となる。
株式市場は、人間の本能に従うと勝てない仕組みになっている。
3. 短期的な値動き
短期的な市場の変動に振り回されると、冷静な判断が難しくなる。
2020年のパンデミック時、多くの個人投資家が恐怖で株を売却し、その後の市場回復を逃した。
投資家にとって、暴落ほど怖いものはない。
インデックス投資の優位性
個別株投資のリスクを回避する方法として、インデックス投資がある。
インデックス投資は、市場全体の成長を取り込むシンプルかつ効率的な手段だ。
1. S&P500の実績
S&P500は過去50年間で年平均約10%のリターンを記録している。
このリターンを30年間積み立てるだけで、資産は約17倍に成長する。
複利効果が働くため、早期に始めればさらに有利だ。
2. シンプルで手間がかからない
インデックス投資は企業分析や頻繁な取引が不要だ。
手数料も低く、時間を節約できる。
その分、本業や自己成長に集中する余裕が生まれる。
3. 長期的に安定した成長
市場全体の成長に連動するため、個別株のような破綻リスクが少ない。
長期的に堅実な資産形成を目指すことができる。
よくある反論に答える
Q: 優良株を選べばS&P500を超えられるのでは？
A: 確かに一部の成功例は存在する。
しかし、未来の成功株を事前に予測するのはプロでさえ困難だ。
今は優良株でも、未来永劫にそうであるとは限らない。
Q: 自分の「目利き」で勝てると思いますが？
A: それは過信の可能性が高い。
統計的には、多くの人が市場平均を下回る結果に終わる。
株を買う時は、みんな株価が上昇すると思っている。
大概は失望に終わるだろう。
Q: 短期的な利益は得られるのでは？
A: 短期的な利益は「運」の要素が大きい。
継続的に利益を出すのは非常に難しい。
馬券を買うと同じだ。
競馬で勝ち続ける方法が存在するだろうか⁇
結論：堅実な資産形成を目指すべき
個別株投資は一見、魅力的に見える。
しかし、それは多くの場合、幻想に過ぎない。
プロでもS&P500に勝つことは難しく、個人投資家にとってはさらに厳しい。
一方、インデックス投資はシンプルで安定的な選択肢だ。
「退屈」かもしれないが、長期的には最も確実な結果をもたらす。
投資で退屈のどこが悪いのだろう⁈
投資の目的は、夢を追うことではなく、堅実に資産を増やすことだ。
最後に自問してほしい。
「本当に個別株でS&P500に勝てるのか？」
その答えが「いいえ」であるなら、インデックス投資を選ぶべきだ。
それが、最も合理的で効率的な選択と言えるだろう。