
株式市場に「天井」はない
株式市場について話題になるたびに、必ず耳にする言葉がある。
「株価は高すぎる」
「今が天井だ」
「暴落したら買う」
こうした声は、株式市場の歴史を振り返ると、どの時代でも繰り返されている。
しかし、このような意見に従って成功を収めた人はほとんどいない。
実際には、株式市場に長期的に居続け、計画的に投資を続けた人々が最終的に勝者となる。
なぜそう言えるのか。
その答えを、歴史が明確に教えてくれている。
ドナルド・トランプ前大統領が就任した2017年1月、S&P500指数は2,271ポイントだった。
4年後の2021年1月、彼が退任したときには3,795ポイントに達していた。
この期間、S&P500は約69.8%の成長を記録した。
当時のトランプ氏の政策には賛否が分かれたが、市場は記録的な上昇を遂げたのだ。
法人税の大幅減税や規制緩和が企業活動を後押しした一方で、貿易戦争や政治的な混乱も懸念されていた。
それでも、株式市場は右肩上がりに成長を続けた。
続くジョー・バイデン大統領の政権下でも、市場の勢いは衰えなかった。
2021年1月に3,795ポイントだったS&P500指数は、2025年1月には5,922ポイントまで上昇した。
これは、約56%の成長を意味する。
バイデン氏は、トランプ氏とは異なる政策を掲げていた。
環境政策への投資や大規模なインフラ整備など、経済の方向性は大きく変わったが、それでも市場は順応した。
結論として、大統領が誰であれ、政策がどう変わろうとも、株式市場は長期的に成長している。
こうしたデータが示しているのは、株式市場の成長を支えているのは政治ではなく、経済そのものだということだ。
企業の利益増加、技術革新、人口増加といった要素が、市場全体の成長を後押ししている。
経済が拡大し続ける限り、市場もまた成長を続ける。
株式市場の長期的な視点から見れば、「天井」というものは存在しない。
それでも、「株価は高すぎる」という声は消えない。
なぜなのか。
その答えは、人間の心理にある。
私たちは本能的にリスクを恐れる生き物だ。
特に過去に経験した暴落の記憶は、投資家たちの行動を縛る強い要因となる。
2008年のリーマンショック、2020年のコロナショック。
こうした市場の大幅な下落は、多くの人に「暴落の恐怖」を植え付けた。
これにより、「また暴落が来るのではないか」という不安が常に存在するようになった。
さらに、株価が史上最高値を更新すると、「これ以上は上がらないだろう」と考えやすい。
これが、「暴落したら買う」という心理的な罠につながる。
しかし、この戦略が成功する可能性は低い。
市場のタイミングを予測するのは、ほぼ不可能だ。
2020年3月のコロナショックでは、S&P500が1か月で30%以上も急落した。
多くの投資家が恐怖に駆られ、株を売却した。
だが、その後わずか数か月で市場は回復し、年末までに史上最高値を更新した。
この急激な上昇を予測し、正しいタイミングで再び市場に戻ることができた人はほとんどいない。
暴落を恐れて市場から退場した人々は、大きな利益を逃してしまった。
リーマンショック後も同じことが起きた。
2008年から2009年にかけて、S&P500は50%以上下落した。
しかし、その後の10年間で市場は年平均10%以上のリターンを記録した。
この期間に市場を離れた人々は、驚異的な利益を享受する機会を失ったのだ。
歴史は繰り返す。
市場に留まり続ける者が最終的に勝者となる。
では、投資家が取るべき正しい行動とは何か。
答えは明確だ。
市場に居続けること。
そのための有効な方法の一つが、ドルコスト平均法だ。
一定額を定期的に市場に投資することで、株価が高いときも低いときも機械的に投資を続けることができる。
結果として、購入価格を平均化し、高値掴みのリスクを軽減できる。
また、分散投資も重要だ。
1つの銘柄やセクターに集中するのではなく、複数の資産に分散することで、ポートフォリオ全体の安定性を高めることができる。
さらに、自分自身の投資目標を明確にすることも必要だ。
「老後のための資金を準備する」
「子どもの教育費を貯める」
こうした具体的な目標を持つことで、短期的な市場の動きに振り回されにくくなる。
市場のノイズを排除し、自分の計画に集中することが投資成功の鍵だ。
株式市場には短期的な調整局面や暴落がつきものだ。
しかし、それは成長の過程に過ぎない。
株式市場の歴史が教えているのは、短期的な変動に惑わされず、長期的な視点を持つことが最も重要だということだ。
市場の成長は、経済の成長を反映している。
そして経済は、イノベーション、人口増加、技術革新とともに進化し続ける。
大統領が誰であれ、政策がどのように変化しようとも、市場は適応し、進化し続ける。
次に「株価が高すぎる」という声を耳にしたとき、それを恐れないでほしい。
むしろ、それを未来を信じるサインと捉えてほしい。
暴落を待つのではなく、市場に留まり続けることを選ぼう。
市場に居続ける者だけが、経済成長の恩恵を享受することができるのだから。
株式市場に「天井」はない。
それを証明するのは、過去の歴史であり、未来への希望を持つ投資家たちだ。