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究極の投資法

「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」、通称「オルカン」。

この名前を耳にしたことがある人は多いだろう。

投資信託を扱うブログやSNS、投資系のYouTube動画では「初心者におすすめ」と紹介されることが少なくない。

しかし、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)への投資は、単に「初心者向けの選択肢」というわけではない。

むしろ、これは高度な投資理論に基づいた「理想の形」を追求する投資法である。

その背景には、現代ポートフォリオ理論(MPT)の存在があり、さらにテクノロジーや金融サービスの発展が、この高度な投資法を「簡単に見せている」だけに過ぎない。

本稿では、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の本質に迫りながら、初心者向けと誤解される理由を紐解いていこう。

「全世界を買う」という究極の分散投資


eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)が目指すのは、世界中の株式市場への投資だ。

これは簡単に言えば、「全世界を買う」ということを意味する。

投資の世界において、分散投資はリスクを抑える最も基本的な手法とされる。

しかし、真の意味で「全世界に分散する」というのは、言葉ほど簡単ではない。

この投資信託が追求する分散投資の基盤となっているのが、現代ポートフォリオ理論(MPT)だ。

この理論は、1950年代にノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツによって提唱された。

リスクを抑えつつリターンを最大化するためには、多様な資産への分散が必要だという考え方だ。

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、この理論を忠実に実践している。

具体的には、MSCIオール・カントリーワールド・インデックス(ACWI)という指数に連動し、世界中の株式市場に幅広く投資することで、特定の国や業種へのリスクの偏りを最小限に抑える設計となっている。

つまり、「全世界を買う」という行為は、高度な投資理論の結晶であり、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)はその実現形なのだ。

市場効率性に基づく「正しい選択」


もう一つ、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の基盤となっているのが、「市場効率性」の理論だ。

市場は、多くの投資家が持つ知識や情報を反映する場所であり、個別銘柄の株価は基本的に「適切な価格」に落ち着くとされている。

これは効率的市場仮説(EMH)と呼ばれる考え方だ。

この仮説によれば、個人が株価を分析し、優れた銘柄を選んで大きな利益を上げるのは非常に難しい。

なぜなら、情報はすでに市場価格に反映されているからだ。

そのため、特定の企業や銘柄に賭けるよりも、市場全体に投資する方が合理的だと考えられる。

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、この市場効率性の理論に基づいたファンドだ。

市場全体の成長を享受しながら、特定の銘柄や国への集中リスクを回避することで、安定的なリターンを狙う。

理論的には、これ以上に「正しい投資法」は存在しないと言っても過言ではない。

十数年前までは不可能だった投資法


eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)が一般投資家にも手の届く存在となったのは、比較的最近のことだ。

十数年前、世界全体に分散投資を行うのは非常に難しかった。

たとえば、日本の投資家が全世界に分散投資を実践しようとすれば、アメリカ、ヨーロッパ、新興国などの市場にそれぞれアクセスし、個別に銘柄を選び購入する必要があった。

そのためには、膨大な手数料や多額の資金、時間が必要だった。

この方法を実現できたのは、一部の富裕層や資産運用会社に限られていた。

しかし、テクノロジーや金融サービスが発展したことで、状況は一変した。

現在では、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)を購入するだけで、数千社に及ぶ企業へ分散投資が可能となっている。

手数料も非常に低く、少額から始められるため、初心者でも気軽にアクセスできる。

この投資法が「手軽で簡単」と感じられるのは、テクノロジーの進化が背景にあるのだ。

初心者向けと誤解される理由


こうした背景を踏まえると、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)が初心者向けとは一概に言えないことが分かる。

しかし、それでもなお初心者向けと見なされる理由には、以下の3つが挙げられる。

1. 操作が簡単であること

インターネット上で数クリックするだけで購入可能。

銘柄選びや市場分析の手間がないため、投資初心者でも始めやすい。

2. 「放置」できるという点

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は長期運用を前提としており、頻繁な売買や調整を必要としない。

3. リスクが低いように見えること

全世界に分散しているため、大きな損失が発生しにくいと思われがちだ。(だが、実際はそうではないので注意したい)

ただし、これらの「簡単さ」や「手軽さ」は、現代ポートフォリオ理論や市場効率性という高度な理論の裏付けがあってこそ成り立つものである。

結論:eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は理想の投資法


eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、表面的にはシンプルで手軽に見える投資信託だ。

しかし、その背景には高度な投資理論があり、実際には非常に完成度の高い投資戦略である。

「初心者におすすめ」とされるのは、この投資信託が手軽で分かりやすいからだろう。

しかし、初心者だけでなく、経験豊富な投資家にとっても魅力的な選択肢であることは間違いない。

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)は、投資の「正解」に最も近い形の一つだ。

それは単にテクノロジーの恩恵を受けた結果ではなく、投資理論の進化と金融サービスの発展が生んだ、まさに「理想的な投資法」なのである。

このファンドが人気を集めるのは必然であり、時代の進化を象徴する存在と言えるだろう。

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