ドルコスト平均法の呪い
投資を始める際、よく耳にする二つの方法が「一括投資」と「ドルコスト平均法」です。
どちらもそれぞれにメリット・デメリットがありますが、この記事では「一括投資」の方がドルコスト平均法よりも効率が良い理由について、データとエビデンスをもとにシンプルに説明します。
一括投資とは?
一括投資は、まとまった資金を一度に投資する方法です。
例えば、100万円を手元に持っていた場合、その全額を一度に株式や投資信託などに投資します。
一方、ドルコスト平均法は、その100万円を毎月10万円ずつ、10か月に分けて投資するような手法です。
この方法は、株価が上下するリスクを軽減するために使われます。
一括投資が有利な理由
バンガード社が行ったシミュレーションによると、一括投資は約3分の2の確率でドルコスト平均法を上回るパフォーマンスを示しました【1】。
なぜ一括投資の方が効率が良いのかを、3つの理由で説明します。
1. 市場は長期的には上昇トレンドにある
株式市場は長期的に成長していく傾向があります。
そのため、一度に大きな資金を投資した方が、成長する市場の恩恵をより早く受け取ることができます。
過去のデータによれば、市場が上昇している期間が長いほど、一括投資が有利になる確率が高まるのです【2】。
2. 複利効果を最大限に活かせる
投資したお金が増え、その増えたお金がさらに投資される「複利効果」を早い段階で享受できる点も、一括投資の大きなメリットです。
複利の力は時間とともに増幅するため、早く多くの資金を投資すればするほど、その効果は大きくなります。
3. コストや手数料が低い
ドルコスト平均法では、少額ずつ何度も取引を行うため、その度に手数料が発生します。
一括投資では取引回数が少ないため、手数料や取引コストを抑えられる点も効率性に繋がります。
ドルコスト平均法が勧められる理由:金融機関の視点
ここで、なぜ金融機関がドルコスト平均法を積極的に推奨するのかについても考えてみましょう。
実は、ドルコスト平均法は**金融機関にとって利益を生みやすい手法**だと言えます【3】。
1. 手数料の増加
ドルコスト平均法では、少額ずつ何度も取引を行うため、その度に手数料が発生します。
これにより、金融機関は投資家からの手数料収入を増やすことができます。
一括投資と比較して、長期間にわたり継続的な収入が得られるため、金融機関にとっては非常に有利な方法です。
2. リスク管理の簡易化
金融機関は、顧客が短期的な市場変動に動揺しないよう、安定した投資法としてドルコスト平均法を推奨します。
しかし、これにより投資家は成長市場での利益最大化のチャンスを逃す可能性が高まります。
この点で、ドルコスト平均法は「呪い」のような状態とも言えます。
投資家が短期的なリスクを避けるために手数料の多い手法を選び、最適なリターンを逃すという状況です。
このように、ドルコスト平均法は、金融機関にとって利益が大きく、投資家に不利になる場合が多いのです。
ドルコスト平均法のメリットとデメリット
ドルコスト平均法のメリットは、やはりリスク分散です。
市場のタイミングを計らずに、定期的に一定額を投資することで、短期的な市場の急激な変動に影響されにくくなります【4】。
ただし、ここで注意すべきは、金融機関がこの方法を強く推奨する背景には、**投資家にとって最善の利益を追求するよりも、金融機関にとっての利益追求が含まれている可能性がある**ということです【3】。
ドルコスト平均法のデメリットは以下の通りです。
1. 市場が上昇トレンドにある時はパフォーマンスが劣る
市場が成長している時期には、少しずつ投資を行うドルコスト平均法では、利益を最大限に得ることが難しくなります。
上昇トレンドでは、最初に一度に投資した方がより大きな利益を得られる可能性が高いのです【5】。
2. 機会損失のリスク
分散して投資することで、市場が大きく上昇するタイミングを逃してしまう可能性があります。
例えば、急激に株価が上昇した月には、その分だけ投資していない資金がまだ手元に残っているため、チャンスを逃してしまうのです【5】。
リスクとリターンのバランス
もちろん、一括投資にもリスクがあります。
短期的な市場の変動に対して敏感に反応する必要があるため、耐える力が必要です。
市場が急落した場合、一度に投資した全額が損失を抱える可能性が高まります。
そのため、一括投資を行う際には、以下のようなリスク管理が重要です。
1. 余裕資金で投資する
短期的な損失に耐えられるだけの余裕資金で投資を行うことが大切です。
生活費や緊急時の資金は投資に使わず、余剰資金で行うことで、落ち着いて市場の動向を見守ることができます。
2. 分散投資でリスクを軽減
一括投資を行う際も、様々な資産に分散して投資をすることでリスクを軽減できます。
株式だけでなく、債券や不動産などに分散投資することで、全体のリスクをコントロールすることができます。
結論:一括投資をすべき
これまでのデータとエビデンスから、一括投資は長期的に市場が成長することが期待できる場合において、より高いリターンを得るための効率的な方法であると言えます。
バンガードのシミュレーションでも、一括投資は3分の2の確率でドルコスト平均法を上回るという結果が出ています【1】。
さらに、ドルコスト平均法が金融機関にとって有利であり、投資家が最適なリターンを得る機会を逃していることがわかります。
ドルコスト平均法の呪いにかかることなく、成長市場での利益を最大化するために、一括投資を選択するのが賢明な戦略と言えるでしょう。
《情報源》
1. 「ドルコスト平均法」は意味ない?「一括投資」とどっちが有利? https://official.gfs.tokyo/blog/dollar-cost-averaging-makes-no-sense
2. 一括投資と積立投資(ドルコスト平均法)はどちらがよい? https://shisankeisei.jp/20220613-lump-sum-investment-vs-dollar-cost-averaging-investment-msci-acwi-historical-analysis-3
3. 「ドルコスト平均法」より効率がいい「バリュー平均法」 https://diamond.jp/zai/articles/-/288694
4. 投資信託を買うならどっち?一括投資VS積立投資 https://www.ncbank.co.jp/tameru/toshi_shintaku/column