見出し画像

会話力

ある日、若い女性がやってきた。JRのtrain conductor(車掌)という。英検2級をチャレンジしているのだけど、2次試験で何度も失敗するという。そのためにやってきた。

1次試験は一度で合格したらしい。ということは、文法や単語をそこそこ知っている。問題は「面接」。

試しに、
「What did you have for breakfast this morning?」と聞くと、眉をひそめ顔を赤らめ言葉に詰まる。英語で何か言おうとすると、脳がblank(空白)状態に陥る典型的な日本人タイプ。

では、日本語で聞きます。
「今朝、朝食に何を食べましたか?」
同じ状態。。

英語で詰まるのか?日本語でも詰まるのか?或いは思い出そうとしているのか?検証する。結局、彼女は英語で詰まるのではなく、

「英語で話さなければ」という意識が強いあまり、心理的に詰まって「思考力」をなくしている。このような人の場合、無理に「こう英語で言いなさい」と言うと、結局丸暗記してしまう。意味がない。自分で情報を処理することを身につけなければ。

もう一度、聞きます。日本語で答えてください。
「今朝、朝食に何を食べましたか?」
 「。。。。」
分かりました。「ラーメンを食べたと言ってください。」
彼女は「朝食にラーメンを食べません」と言う。
私は「なんでもいいです。会話として成立すればいいです。」
「ラーメンを食べて、何を飲みましたか?」
 「。。。。」
分かりました。「ビールを飲んだと言ってください。」

彼女は「私はお酒を飲めません」と言う。
私は「なんでもいいです。会話として成立すればいいです」と繰り返す。
彼女は「私は嘘を言えません」と言う。
私は「噓ではありません。シュミレーションです。嘘と言うのは意図をもって偽りの情報を人に伝えることです。」

もう一度、聞きます。日本語で答えてください。
「今朝、朝食に何を食べましたか?」
 「ラーメンを食べました。」
「できれば主語を言ってください。」
 「私はラーメンを食べました。」
「何を飲みましたか?」
 「私はビールを飲みました。」

何度も繰り返し、レスポンスを早める。30分ほどこのようなトレーニングをし、
「先の休みに、あなたは何をしましたか?」
 「私は買い物をしました。」
「どこで?」
 「渋谷で。」
「何を買いましたか?」
 「私はブラウスを買いました。」
「それはいくらでしたか?」
 「それは3000円でした。」

レスがかなり早くなる。日本語だから当然早くできるようになる。徐々に、英語に変換していく。単語は問題ない。最終的にいろんなテーマをすべて英語での質疑応答にする。

日本語で、この「聞いて答える」リズムを確立できれば、このリズムを基に英語でも答えやすくなる。つまり、先にフォームを作る。スポーツでも何でも「フォーム」の育成が優先される。

3週間後に2次試験を受け、後日彼女は「受かりました。有難うございました!」とうれしそうに言った。

手段は何でもいい。結果が得られれば。英語で答えられないのではなく、心理的に日本語でも答えられない。なんでも英語でやればいいということではない。勘違いしてはいけない。「できるようになることを探す」のではなく、「できない原因」を見つけ出し、それを修正していく。すると「できる」ことしか残らない。

仕事でも同じことと思います。但し、仕事などの面接では事実を述べて下さい。会話のリズムが身につけば、事実を思いつくのが容易になります。

日本人はなぜか言葉に詰まる人が多い。なので、「えーと」や「まっ」を発声する。

ある男性に、何でもいいのであなたのエピソードを聞かせて下さい。そして聞いた後に、
「なんど『えーと』と言ったか覚えていますか?」とたずねると、
「2、3回ですか?」
「16回です。」
「えっ?そんなに!」

「クセ」はある意味では個性だけど、別の意味では怖い。
Old habits die hard.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?