『鬼滅フィーバーはなぜ起こったか? データで読み解くヒットの理由(ICE新書)』第1章まで無料全文公開!
2021年3月30日に発売された書籍『鬼滅フィーバーはなぜ起こったか? データで読み解くヒットの理由』(著:小新井涼)の第1章までを無料全文公開いたします!
はじめに
本書の目的は「なぜ『鬼滅の刃』はこんなにも盛り上がっているのか?」を探求していくことです。
週刊少年ジャンプで連載されていた吾峠呼世晴氏による漫画『鬼滅の刃』は、特に2019年以降、日本中で空前の大ブームを巻き起こしています。出版不況が叫ばれる現在において、書店では紙のコミックスの売り切れが続出。原作漫画はアニメの放送開始からわずか1年足らずで累計発行部数を10倍以上にも伸ばし、公開された劇場版では日本の歴代記録を次々と塗り替え、その盛り上がりは国会でも言及されるなど、原作連載終了後も未だに根強い人気を維持しています。
現在、漫画やアニメは、もはや子供や熱心なファン達だけが楽しむものではなくなり、『君の名は。』のヒットや、『ONE PIECE』や『進撃の巨人』など、国民的な認知度を持つ作品も多数生まれてきました。しかしそんな昨今においても、この『鬼滅の刃』ブームの規模や勢いはこれまでのヒット作とはどこか異なる得体の知れなさがあります。
「アニメの出来は素晴らしいし、原作もハマる人がいるのが十分わかる面白さだ。でもどうして数あるタイトルの中で『鬼滅の刃』だけがこんなに急に、これほどまでのブームを起こしたのだろう……」
この本をお手に取ってくださった方の中には、そうした疑問をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
最近は本作のブームに言及する記事媒体や特集番組も増えましたが、それでもまだその全貌については明らかになっていない部分も多いです。というのも本作のブームは、漫画やアニメ業界、そのファン界隈に限らず、社会的背景や時勢、人々の生活習慣といった幅広い要因が複雑に重なることで生じており、はっきりと1つ、これが原因だと言い切れる現象ではないだからと思います。
本書は、そうした複合的なブームの要因ひとつひとつを、出来る限り拾い集めながら、「なぜ『鬼滅の刃』はこんなにも盛り上がっているのか?」を探求することを目的としているのです。
今回、アニメコラムニストである筆者がこのテーマで本書を執筆させていただいた経緯には、この後各章でも詳しく解説していく通り、『鬼滅の刃』のブームにとって、2019年のアニメ化が重要なポイントとなっていたことがあります。
原作は漫画ですが、『鬼滅の刃』の現在のブームを分析するうえで、アニメの存在は決して欠かせません。また、ライフワークとして毎週100本以上放送中の全アニメを視聴している筆者にとっても、アニメ化が重要なポイントとなっているこのかつてないほどのムーブメントは、じっくりとその原因を探求せずにはいられないものです。
それもあって、アニメのリアルタイム放送からですが、本作に触れ、放送後の人気を分析した記事を執筆し、その後もずっとブームを追いながら、その変遷を観察してきた筆者が、そこで得た実体験や集めてきた情報を基に、ありがたくも本書を執筆させていただくことになりました。
少し話は逸れますが、いち作品ファンでもある身としては、作品に込められた想いや物語の解説は、作品づくりに心血を注いだ関係者の口から、作品から受けた感動は読み手や視聴者ひとりひとりの口から語られるべきだと思っています。なので今回、本作の作品づくりには全く関わっていない、人より少し多くの作品をみて研究をしているにすぎない筆者は、作り手やファンの視点から少し距離を置いた第三の視点から、他の全てのアニメと『鬼滅の刃』はどこがどう違っていたのか、その違いがどのように本作のブームを社会現象にまで至らせたのか、という俯瞰的な分析を心掛けました。(その分、いちアニメ好きとしての作品への思いは、コラムという形で随所に入れ込ませていただきます)
こうした意図からも、本書では、ブームの分析にあたって原作やアニメの内容に踏み込むことはありますが、作品分析や物語の解説には放送後の人気を分析した記事を執筆し[1]、方向性としては、『鬼滅の刃』という作品が、それを取り巻く環境や社会とどのような相互作用を起こし、何を要因として、どのようにこのブームを生んだのか、さらにそのブームがエンタメ界へとどのような影響をもたらしているのかを中心に、分析を行っていきます。
つまり、作品の内側(物語、世界観、キャラクター等)だけでなく、作品の外側(エンタメ界、ファンの反応、時代背景等)も含めた多角的な分析を行うことで、『鬼滅の刃』を〝起点〟に、周りで生じている関連の事象を〝線〟で結んでいき、ブームの全貌を〝面〟として捉えていこうという試みなのです。
このように書くと少しとっつきにくく感じてしまうかもしれませんが、やることはとてもシンプルで、本書では『鬼滅の刃』ブームについて、具体的に次の3つを明らかにしていきます。
①『鬼滅の刃』ブームが生じたプロセス
②『鬼滅の刃』ブームを生みだした要因
③『鬼滅の刃』ブームがエンタメ界に与えた影響
そのために本書は、以下の3章構成で展開していきます。
第1章は、『時系列で振り返る『鬼滅の刃』ブームの軌跡』と題して、この『鬼滅の刃』ブームはどのようにして発生してきたのか、①『鬼滅の刃』ブームが生じたプロセスを解明していきます。具体的には、本作の連載開始から現在までの軌跡を年表でまとめたうえで、ブームの着火点やブームを勢いづかせた要所の出来事を取り上げ、具体的なデータ(累計発行部数、本誌での掲載順、検索数推移等)と共に分析をしていきます。
第2章は「『鬼滅の刃』ブーム3つの外的要因」と題して②『鬼滅の刃』ブームを生みだした要因について分析していきます。具体的には、『鬼滅の刃』ブームが生じるにあたって欠かせなかったと考えられる3つの要因(配信環境の充実、ファン層の拡大、令和という時代背景)を、関連する出来事やデータと共に分析、解説していきます。
第3章は「『鬼滅の刃』が漫画・アニメ界に与えた影響」と題して、③『鬼滅の刃』ブームがエンタメ界に与えた影響の分析を行います。具体的には、昨今の漫画・アニメ界における具体的なデータ(掲載時の週刊少年ジャンプの部数推移、その他人気作のデータ、映像ソフトの売り上げ等)との比較を行うことで、本作及び本作のブームが生みだした様々な数字(累計発行部数等)の特異性と、それらが漫画・アニメ界に与えた影響を明らかにしていきます。
[1]〝2019年の顔〟となったアニメ「鬼滅の刃」とは:近年稀にみる盛り上がり方の特徴(小新井涼)-Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/koarairyo/20191209-00154183/
謝辞
最後に、このような貴重な執筆の機会をくださった担当編集岡本様及び株式会社インプレス・ICE様、そしてこの本をお手にとってくださった全ての皆様に、改めて御礼申し上げます。
小新井涼
第1章 時系列で振り返る『鬼滅の刃』ブームの軌跡
本章では、現在の『鬼滅の刃』ブームがどのようにして生まれたのか、そのプロセスとブームの全貌を、本作が歩んできた軌跡を時系列で振り返りつつ明らかにしていきます。
今でこそ、『鬼滅の刃』が人気だということはすっかり多くの人に認識されているものの、この本をお手に取ってくださった方の中にも、2019年4月のアニメ放送開始時には、まだその存在も知らなかったという人が少なくないかもしれません。人によっては、2019年末あたりから何の前触れもなく突然現れたようにも見えるこの『鬼滅の刃』ブームは、そもそもいつ生まれ、どのように大きくなってきたのでしょうか。
こうした疑問を明らかにしていくために、まずは本作が連載開始から現在に至るまでに歩んできた軌跡を年表としてまとめ、本誌掲載順や検索数推移といった具体的なデータと共に、『鬼滅の刃』ブームが生まれたタイミングを探ってみます。そして、生まれたブームをより勢いづかせることとなった様々な出来事を振り返りながら、本作の盛り上がりがどのような変遷を辿ってきたのか、その大まかな全貌を明らかにしていきます。
┗様々なデータからみる『鬼滅の刃』ブームの軌跡
この節では、以下にこの後の分析で使うデータを一覧としてまとめていきます。まずこちらは、『鬼滅の刃』が週刊少年ジャンプで連載を開始した2016年2月15日から、本書執筆時(2020年10月)までの、本作のブームにまつわる主な出来事を、簡単な年表としてまとめたものです。
続いてのグラフは、『鬼滅の刃』原作漫画の「週刊少年ジャンプ」内での掲載順推移を全205話分、視覚的なイメージ図としてまとめたものです。
読者アンケートの結果を基に決まる本誌掲載順は、「週刊少年ジャンプ」において、人気の度合いを示すひとつの指標となります。
下記グラフでは、〝掲載順位/その号の全掲載タイトル数〟として集計したデータを、巻頭掲載時が頂点となるように(掲載順が下がるにつれ数値が低くなる)調整しました。囲み線内に記されているのは、その話数内で展開されていた主なエピソードです。
最後に、本作のマスメディア(テレビ、雑誌、新聞)での露出頻度をデータ化し、以下にまとめました。まずは、本作のブームが生じた際、特集が急速に増えた2019年12月に、本作が登場したテレビ番組のデータです。
続いて以下は、雑誌や新聞などの紙媒体における本作の登場データをまとめた表です。
以上のデータを随時参照しつつ、次の節からはブーム誕生のプロセスについて詳しく分析していきます。
┗『鬼滅の刃』ブームはいつ始まったのか
恐らく一般的に〝現在の『鬼滅の刃』ブームは2019年ごろから始まり2020年にかけて大きくなっていった〟という漠然としたイメージがあると思います。しかしご存知の通り、原作の連載が始まったのはそれより3年も前の2016年2月です。
では2019年に至るまでは、本作が日の目を見る機会は全くなかったのでしょうか。連載開始から3年以上の時間を経て、急に爆発的な盛り上がりをみせたのはなぜなのでしょうか。
本作が連載開始以降、歩んできた軌跡を辿りつつ、探っていきます。
連載開始以降アニメ化前
前述のイメージもあってか、『鬼滅の刃』ブームを語る際はどうしても2019年以降の盛り上がりに注目されることが多く、そこに至るまでの、連載開始当初からみた本作の人気については看過されがちです。そのため場合によっては、まるで2019年以前はあまり人気がなかったかのように扱われてしまうこともあるのですが、そこに至るまでの軌跡を辿ってみれば、決してそんなことはなかったことがわかります。
例えば、本作が連載されていた「週刊少年ジャンプ」において、作品人気を示す大きな指標ともなる〝掲載順〟を示したグラフ1~5に注目してみてください。
連載が開始された2016年中は、度々掲載順が後半寄りになることもあった本作ですが、2年目となる2017年には、巻頭掲載の頻度も増え、3年目となる2018年以降は後半に掲載されることはほとんどなくなります。連載2年目以降は、那田蜘蛛山を経て柱合会議後、〝柱と一緒の任務で上弦の鬼と対峙する[2]〟という大いに盛り上がるエピソードが続くこともあり、作品やキャラ人気も、この時期により堅実なものになっていったのでしょう。
加えて、2016年にはカラー掲載が7回、増刊号である「ジャンプGIGA」への出張掲載が2回、2017年にはカラー掲載が9回、GIGAへの出張が3回(うち1回は表紙)、2018年はカラー10回、GIGA出張2回と、上記原作エピソードの盛り上がりや人気の高まりに合わせて、カラー掲載や増刊号への出張掲載もコンスタントに行われていました。
現在度々取り上げられるコミックスの累計発行部数に関しても、出版指標年報2020によると、2017年末の時点で200万部、2018年末には300万部を既に突破していたそうです。
週刊少年ジャンプ本誌の紹介文にも、「ジャンプコミックス大重版御礼表紙&巻頭カラー」(2017年7号)、「ジャンプコミックス全巻大重版御礼センターカラー」(同年12号)、「ジャンプコミックス売上好調記念センターカラー」(2018年8号)といった記載が度々あることから、コミックスの売り上げもその時点で既に好調であったことが窺えます。
さらに、連載開始から1年と少し経った2017年4月には、作品公式のTwitterアカウントも始動されました。20作前後ある週刊少年ジャンプの連載作品陣の中で、作品単体のTwitterアカウントがある作品は大体半数程。人気の度合いによってはいつ連載終了となるかもわからない中で、作品単体のSNSアカウントが運営され始めたことからは、本作がこの時点で編集部サイドからも中堅以上の期待作とされていたことや、このあたりから既にアニメ化の話が動いていたのではないかということなども窺えます。
以上のことからも、本作はアニメ放送開始以前から、既に週刊少年ジャンプの連載陣の中でも、人気作と呼べる位置づけにあったことは間違いないでしょう。
[2]無限列車編や吉原遊郭編
あくまで人気の〝爆発〟はアニメ放送以降
ではそれにもかかわらず、どうしてこの『鬼滅の刃』ブームは2019年以降のことばかりが取り沙汰されるのかというと、それはその時期からの本作にまつわるあらゆる数字の伸び率が、それ以前と比べて飛びぬけすぎているからです。
表1から表4をみるだけでも、累計発行部数を始め、Googleトレンド数値の推移や新聞での紹介件数などが、いずれも2019年を境に急増していることがわかります。
簡単にその変遷を辿ってみましょう。
アニメの放送が始まった2019年の4月以降、まず検索数や累計発行部数が徐々に伸び始め、あわせてTwitterでも関連ワードがトレンド入りをする機会が増えていきます。
その後アニメの放送終了後は、年末にかけて特に原作の累計発行部数が急増、2020年の年明けから5月の原作完結にかけてもさらに部数を伸ばしつつ、各種報道や雑誌・新聞といった紙媒体での露出機会も増えていきました。
原作完結以降は、ここにきて初めてGoogleトレンドの検索数で落ち着きを見せ始めたものの、2020年10月の劇場版公開にあわせて再び増加しています。
こうした流れやデータを鑑みると、確かにアニメ放送以前から既に一定の人気はあったものの、やはり現在認識されている『鬼滅の刃』ブーム――累計発行部数の爆発的な伸びや世間的な認知度の急上昇など――というものは、一般的な認識通り、2019年以降、特にアニメの放送が開始された2019年4月以降に起きたものであるといえそうです。
ブームの発生とその変遷
概観ではありますが、改めて本作の連載開始から現在までの軌跡を辿ってみると、『鬼滅の刃』は、2019年4月のアニメ放送開始以降、それまでを上回る勢いで人気に火が付き、結果、現在に至る大きなブームが生まれたことがわかりました。
またそのブームは、アニメの放送開始を着火点としてその後3回――アニメ放送終了から2019年末、2020年年明けから5月の原作完結まで、そして10月の劇場版公開にかけて――その盛り上がりが大きく勢いづくタイミングがあったように見えます。
それぞれの時点では、一体どのようなことが起きていたのでしょうか。
┗ブームの着火点となったアニメ化
検索数や累計発行部数の急増、SNSなどでの盛り上がりをみるに、2019年4月から放送を開始した本作のアニメが、現在に至るまでの『鬼滅の刃』ブームの〝火付け役〟となったことはまず間違いないでしょう。しかし上記データの推移をみてみると、2019年4月6日の放送開始と同時に一気に火が付いた……という訳でもなさそうです。
アニメ放送開始以降、一体どこでどのように、本作のブームに火がついていったのでしょうか。
火が付いたタイミングはどこ→アニメ放送開始直後ではない?
そもそも本作のアニメ第1話が最初に公開されたのは、テレビ放送が開始される4月6日よりも以前のことでした。アニメ第1話から第5話までが、特別先行上映版『鬼滅の刃 兄妹の絆』として、テレビ放送に先駆け3月29日から全国の映画館で既に公開されていたのです。
アニメの放送開始と同時に即ブームの火が付く(=第1話の時点でバズる・話題になる)タイプの作品であれば、テレビアニメの先行上映では異例の第5話までが一気に公開された3月末の時点で既に話題になっていてもよさそうなものですが、確かに2019年春アニメの中でも注目株ではあったものの、この時点では他作品よりも飛びぬけて本作だけが話題になっているといった様子は、まだみられませんでした。
ただし、だからといって特別上映が不評だった訳ではなく、当初2週間限定上映であったこの「兄妹の絆」は、度々上映期間の延長が実施され、一部の劇場ではテレビアニメの放送が始まった後も5月上旬ごろまで上映が続くほど好評であったことは忘れてはなりません。
あくまでこの時点での盛り上がりは、前の節で紹介した、既に一定数存在していた原作ファンを中心としたものであり、〝まだ『鬼滅の刃』を知らない人〟にまで作品の評判が届きだすのは、もう少し後のことだったようです。
最初に火が付いたタイミングは?
アニメ放送開始後、本作関連のニュースが話題になり始めたのは、第3話放送直前の4月19~20日にかけて、本作のアニメ放送が2クールであることが発表されたタイミングでした。「鬼滅2クール」のワードはTwitterでトレンド入りし、放送が始まっていたアニメの評判も相まって「このクオリティで連続2クール!?」という驚きや喜びの声が多く挙がっていたようです。
ただ、ここでのSNSのリアクションをみると、「2クールということは原作のここまでやるかな? あのキャラも出てくるかな?」といった声が多く、既に先を知っている=原作ファンからの反応が中心であったように見受けられます。
また、そうした原作ファンからみても、アニメ序盤はかなり時間をかけて丁寧に展開している印象が強かったのか、「ならば2クールも納得」という声のほかにも、「なかなか盛り上がらない」「まだ原作売上は変化がなさそう」といったリアクションもありました。
この時点ではまだ、既存のファンにとっても〝丁寧にアニメ化されていてすごい出来!〟という実感と共に、〝(これだけ面白いのだから)もっと盛り上がってもいいはずなのに〟といったもどかしさもあったようです。
そんな本作の盛り上がりが、元々の原作ファン以外も巻き込んで一気に加速したのを感じたのは、その後かなり話数が進んだ6月下旬のアニメ12話[3]放送時のことでした。
放送に伴いTwitterでは「#鬼滅の刃」がトレンド入りし、回転する屋敷で繰り広げられる激しい戦闘を描いた凄まじい映像へのリアクションが、タイムラインを賑わせたのです。
中でも特筆すべきは、アニメではここで初めて明かされる善逸の戦闘スタイルへの反応でした。そこには、既に内容を知っている原作ファンからのリアクションだけでなく、これまで情けない姿ばかりみせていた善逸が眠ることで覚醒すると強くなることへの驚きの声という、それを知らなかった=アニメから本作に入った視聴者からのリアクションが見受けられたのです。
迫力の映像で描かれた鼓屋敷での戦闘を終えた後は、仲間達との関係性を描いたほっとひと息つけるエピソードを挟んで、本編は那田蜘蛛山編へ突入。一気に物語が盛り上がるタイミングであったことに加え、度々一挙配信が行われていたことや、放送を重ねる度に大きくなるファンからの反響も後押ししてか、この時期から話題を聞いて原作を買い始めてみたり、アニメに〝追い付いた〟という新たなファンの声が目立ち始めました。
こうして〝アニメからの新しいファン〟も取り込みつつ、徐々に大きくなってきたアニメの盛り上がりが最高潮に達したのが、第19話「ヒノカミ」の放送時です。
関連ワードが続々とトレンド入りを果たしたことは、その話数の素晴らしさを物語るだけでなく、本作の反響や盛り上がりが、4月の放送開始時点よりもかなり大きくなっていることを、応援してきたファンにも改めて認識させたのではないでしょうか。
その後は柱のキャスト発表もあったりと、ファンの熱量をさらに高め続けながらも、アニメは9月末に最終回を迎えます。しかしそこでさらに劇場版の発表が行われたことで、本作の人気や盛り上がりはアニメ放送終了後も維持されることになったのです。
上記の流れは、「様々なデータからみる『鬼滅の刃』ブームの軌跡」でみてきた客観的なデータからも窺うことができます。検索数の伸びだけでなく、原作累計発行部数の伸びも、アニメ1クール目の4月から6月にかけての500万部から700万部への増加に比べ、2クール目(7月から9月)は700万部から1200万部と2倍以上の増加を見せました。
Twitterのトレンド入りの頻度をみても、同じアニメ放送中でも、前半1クール目よりも後半2クール目の方が、頻度や関連ワード数も増えているようです。
こうした状況を鑑みるに、ブームの火付け役となったアニメに火が付いたタイミングは、放送開始直後というよりは、アニメ放送中版以降、最終話にかけての2クール目からであったといえそうです。
[3]11話で我妻善逸と嘴平伊之助が合流し、その後炭治郎と行動を共にするメインキャラクターが揃った後、鼓屋敷での戦いが本格的に繰り広げられるエピソード。
本格的に火が付いたのはアニメ放送後半から
『おそ松さん』(2015)や『ユーリ!!! on ICE』(2016)、『けものフレンズ』(2017)や『ポプテピピック』(2018)など、近年話題となった深夜アニメをみてみると、初回放送か放送開始後数話以内に〝バズる〟ことで盛り上がる作品が続いていました。
しかしアニメ『鬼滅の刃』に関しては、前述してきた通り、特に連続2クールの中盤以降に、後追いのファンも新たに取り込みつつじわじわ話題になっていくという、最近では珍しい盛り上がり方をしていたのです。
そうして後半にかけて右肩上がりに盛り上がり続けてきたアニメ放送は、〝この続きのエピソードが映画化される〟という発表と共に最終回を迎えました。そんな、思わず先が気になってしまう終わり方は、その後アニメ放送終了後に、ファンが原作に手を伸ばし始めるきっかけにもなったようです。
┗ブームが勢いづいたタイミング①:アニメ放送後から年末にかけて
アニメ放送の中盤以降に火が付いた『鬼滅の刃』ブームですが、そのブームをさらに勢いづかせた最初のタイミングが、〝アニメ放送終了後から2019年の年末〟にかけての時期でした。
〝アニメ化をきっかけに人気があがる〟だけならば、それは漫画原作の作品においては極めて一般的な出来事です。しかしそれでも、盛り上がりのピークはアニメ放送中から放送終了直後までで、その後は徐々に落ち着きを見せ始めるのが普通でした。
ところが『鬼滅の刃』は、アニメ放送終了以降3ヶ月のこのタイミングで、累計発行部数がアニメ放送中以上のとんでもない伸び(アニメ放送中:500→1200万部、放送終了後から年末:1200→2500万部)をみせたのです。ブームの火付け役となったアニメが放送を終えたにもかかわらず、そこで生まれたブームをさらに勢いづかせることになったこのタイミングには、一体どのような出来事があったのでしょうか。
原作関連の話題にも火が付く
アニメの放送が終わった10月以降からは、それまでと比べて、特に原作関連のニュースが話題になることが増え始めました。
最初に注目を集めたのは、アニメ放送終了後すぐの10月4日に発売された原作第17巻と、小説版「片羽の蝶」に関する話題です。新刊発売に合わせて関連ワードがSNSで続々とトレンド入りをしたのですが、話題となった一因に〝店頭で完売が相次ぎ、全国的な品薄状態となっていた〟ことがありました。
これまでは発売日に問題なく購入できていたコミックスがなかなか買えないこの事態は、アニメ放送を経た本作の人気の高まりを、原作ファンが益々痛感した出来事でもあったと思います。
また、紙の本が売れないと言われている時代に、コミックス・小説共に入手困難になったことで、それを売る書店側も、本作の人気の高まりを改めて実感したのではないでしょうか。
またこのころからは、毎週のジャンプ発売に合わせて「鬼滅本誌」というワードがトレンド入りする頻度も増えてきました。これはそのときに掲載されていた原作の内容がクライマックスに向けた怒涛の展開であり、本誌派の人々が、まさに登場人物達の生死がかかった戦いに、毎週大いに盛り上がっていたためだと思います。
このことは少なからず、トレンド入りをきっかけに本誌のネタバレを踏みたくないと、アニメから入った新しいファンが原作漫画に手を伸ばし始める後押しにもなったのではないでしょうか。
また単純に〝まだアニメ化されてない先の話も知りたい〟と、新たに原作を購入し始めるファンもいたのでしょう(実際に本書担当編集氏が、そんなアニメをきっかけに作品ファンになり、放送後に原作全巻を揃えたうちの一人でした)。
そうしてこの時期、〝基本的に最新刊のみを求める(既刊は既に持っているため)既存のファン〟だけでなく、このタイミングで〝既刊全巻を新たに購入するアニメ放送以降の新規ファン層が急増〟し、年末にかけて様々なコミックス売上ランキングにおいて『鬼滅の刃』が上位独占するという異例の事態が増加していったのだと考えられます。
アニメファン以外への接触チャンス
原作漫画の話題が増え始めたことに加え、この時期の特徴的な出来事に、〝アニメ・漫画ファン以外の一般層〟にも『鬼滅の刃』という作品や、その人気が知られる機会が増加したことがあります。
ひとつの原因として考えられるのが、タレントの椿鬼奴氏が連載開始当初からの大ファンであることがバラエティ番組で周知されたことを筆頭に、その後人気が広がるにつれ、田村淳氏や加藤浩次氏といった著名人が次々と本作に手を伸ばしていると話題になったことです。
このことは、それを見てすぐに手を出さないまでも、普段アニメや漫画関連の情報にあまり触れない人にも、「そんなに人気の作品があるんだ」と、『鬼滅の刃』を認知させるきっかけになったと思います。
年末にかけてはYahoo!検索大賞2019やTwitterトレンド大賞2019にて軒並みアニメ部門賞を受賞することで、「2019年アニメの顔」としての認識も広がりました。加えて、前述した各コミックランキングでの上位独占や書店での品薄状態などを受け、12月ごろからは各種報道番組でも、本作の人気に関する特集が増加し、そうしてテレビで取り上げられる度にSNSで話題になって盛り上がりが益々伝播していく連鎖反応も生じます。(表3参照)
ここで注目なのが、それらの報道の中で、タレントの加藤浩次氏が本作を娘さんからオススメされたということが話題になった点です。この時期同じように、子供や会社の同僚から薦められたといって本作に触れ始める人が増加し、それも〝普段アニメや漫画にあまり触れない層にも本作が広がっていく〟きっかけとなっている様子が見受けられました。
残酷な描写や特殊な用語はあるものの、大正時代というわかりやすい舞台設定や、兄弟や家族の絆といった普遍的な魅力も多く、薦める側にとっても布教しやすいし、薦められる側にとっても入り込みやすい作品であるのも大きかったのかもしれません。
極めつけとして、12月下旬にはアニメの主題歌である「紅蓮華」が7ヶ月ぶりにオリコンランキングで首位に返り咲き、その後、年末の紅白歌合戦にて披露されたことで、日本中の〝お茶の間〟にこの曲と共にアニメ映像が届くことになりました。
こうしてアニメ放送終了後の10月から年末にかけて、オススメされればみるくらいで普段はあまりそうした情報に触れない人にまで、本作が知られる様々な出来事が共時的に生じたことで、アニメ・漫画ファン以外の一般層にもその人気が広がっていったのだと思います。
原作との相乗効果とファン層の広がり期
深夜アニメの盛り上がりは、いくら話題になったとしても、通常は放送終了と共に徐々に落ち着きをみせ始める(一時的なファンが新しいジャンルに移動するなどして、作品人気を支える層が熱心なファンに収斂されていく)ものです。しかし本作はアニメ放送終了後のこの時期、原作との相乗効果やアニメ・漫画ファン以外への作品周知により、むしろアニメ放送中以上の盛り上がりと新規ファンの流入が見受けられたのが特徴的でした。
これはアニメ放送によって火が付いたブームをさらに勢いづかせるだけでなく、ここから2020年の年明け以降、さらにその盛り上がりが増し、社会現象と呼ばれるに至るまでの土壌を作る時期になっていたのだと思います。
┗ブームが勢いづいたタイミング②:年明けから連載終了にかけて
アニメ放送終了後、2019年の年末にかけて大きくなっていった本作のブームは、2020年の年明け以降、5月の原作完結にかけてさらなる盛り上がりをみせることになります。これにより、年末あたりからささやかれていた『鬼滅の刃』ブームの〝社会現象化〟という言葉も各種メディアで頻繁に使われるようになり、その言葉を実証するような出来事も日本中で生じ始めるようになりました。
データでみる社会現象
2020年の年明け以降も、引き続き各コミックスランキングの上位を『鬼滅の刃』が独占するというニュースが相次ぎます。
中でも話題になったのが、「オリコン週間コミックランキング」において、史上初の1位から10位を本作が独占するという快挙を成し遂げ、その記録を5週まで維持したことです。
加えて実はトップ10だけでなく、トップ20以内も全て本作の既刊が占めていたことからは、話題を聞きつけて、年明けから改めて本作に手を伸ばす(既刊を一気買いする)新しいファンも多数いたことが窺えます。
累計発行部数も短期間の間に2000万部ずつ数を増し、人気スマホゲームやコンビニ、飲食店、アミューズメント施設や各種企業・メーカーとのコラボも益々増加。町中を歩いていても本作のタイトルやイラストを目にしない日はない程となっていきました。
また、2020年の年明け以降特に顕著だったのが、アニメや漫画に関係のない一般雑誌や新聞記事で、本作が取り上げられる機会が増加したことです。表3でまとめたように、「ViVi」や「セブンティーン」といったファッション誌から、「週刊女性」や「週刊朝日」、「FLASH」や「AERA」といった週刊誌、「日経トレンディ」など、幅広いジャンルの一般誌で『鬼滅の刃』というタイトルが確認できました。
特筆すべきは、年明け以降の新聞への掲載数の急激な増加です。アニメ放送開始から2019年末までは、本作『鬼滅の刃』がタイトル・本文中に含まれる新聞記事は143件でしたが、2020年は10月末時点で既に2185件となっていました。
こうしたことからも、本作のブームが単なるトレンドではなく、年明け以降はあらゆる分野の幅広い層から興味関心を集める社会現象と化してきていることが窺えます。
同時に、年明け以降のこうした一般メディアでの露出の増加は、こうした機会がなければ『鬼滅の刃』というタイトルや存在自体も知らないまま過ごしていたであろう、より広い層にまで、本作とその人気を周知させる機会にもなっていたことでしょう。
コロナ禍と原作最終回
2020年、年明け以降の出来事として、『鬼滅の刃』だけでなく、あらゆるアニメや漫画、エンタメジャンルが直面した新型コロナウィルス(COVID-19)の影響は看過できません。『鬼滅の刃』も、作品ステージを開催予定であった「Anime Japan2020」の中止をはじめ、アニメBlu-ray・DVD第10巻の発売延期や、テレビアニメの展覧会「全集中展」の開催延期や一部中止等の影響を受けました。
その一方で、休校やリモートワークへの移行が進み、休日も外出自粛が叫ばれるステイホーム期間に突入することで、家でもできる娯楽として漫画やアニメが重宝される中、本作『鬼滅の刃』に新しく手を伸ばし始める人、改めて作品を見返す人も少なくなかったと思います。
実際に、映像配信サイトでは、3月以降も本作が再生数ランキングに入り続ける様子が見受けられ、アニメ放送終了から1年が経った9月の段階でも、Netflix Japanでは、今日の総合TOP10(日本)に連日本作がランクインしている様子が確認できました。
4月10日には、3月以降新作劇場版アニメの封切が軒並みストップしている中で、劇場版「無限列車編」の公開が10月16日となったことが発表されます。4月の緊急事態宣言発令に伴う娯楽施設の営業休止や、そうでなくても放送延期が相次ぐほどアニメの制作現場が混乱していましたが、この時期にあえて公開延期ではなく公開日の発表がされたということは、その時期には完成の目途も立っているのであろうと、ファンの期待がさらに高まっていきました。
そうして迎えた5月、原作の連載が5月18日に堂々の完結を迎えます。未だブームが過熱し続ける中での連載終了に世間からは驚きの声もあがりましたが、それ以上に、(実はアニメ放送時には既に突入していた)最終決戦をずっと見守り続けていた作品ファン達からは、作品と作品関係者への感謝と労いの声があがり、いずれにせよこの時期SNSのトレンドは、本作関連の話題で持ち切りとなりました。
「今これを知らないのはやばいのでは?」という状態へ
2020年の年明け以降の流れをみると、もはやアニメ・漫画業界やその周辺界隈だけでなく、日本中のあらゆる分野が本作のブームに注目し、その盛り上がりが社会現象となっていった様子が窺えました。
これは筆者が2020年の2月時点で「鬼滅の対談[4]」に出演させていただいた際にお話したことでもあるのですが、こうして年明け以降にブームを加速させた一因には、年末までの土壌や年明け以降の盛り上がりによって、世間に「今この作品を知らないのはやばいのではないか?」という空気が醸成されていたこともあると思います。
続く第2章で詳しく紹介しますが、アニメ・漫画ファンから始まったブームが、その周辺の、アニメや漫画をそれなりにみる一般層を巻き込み、そこからさらに高い壁を持つ〝アニメや漫画に全く興味がない一般層〟にまで広がるためには、「ここまで世間で評判ならばアニメとか漫画とか関係なく、履修せざるを得ない」と思わせるこの世間の空気が必須事項です。
2020年の年明け以降、原作完結にかけてさらに本作のブームが勢いづいた裏側には、こうして世の中に「今この作品を知らないのはやばい」という空気を生じさせるほどブームが盛り上がっていったことが大きいと思います。
[4]伊黒小芭内役の声優・鈴村健一氏がMCを務めるTOKYO FM「ONE MORNING」で行われた企画。本作の大ファンである椿鬼奴氏や本作アニメのプロデューサー高橋祐馬氏などを日替わりで招いて対談を行った。著者も日替わりゲストとして2月12、13日に出演。
┗第1章のまとめとブームの第3波となった劇場版
本章では、連載開始から現在までに『鬼滅の刃』が歩んできた軌跡を辿ってみることで、現在生じている『鬼滅の刃』ブームの全貌を明らかにしてきました。
そして、どうしても2019年以降の盛り上がりにフォーカスされがちなものの、本作は連載開始からアニメ放送までの間にも既に一定の人気を確立してきたこと。それでも現在起きているブームの着火点となったのは、やはり2019年のアニメ放送であり、その後アニメ放送終了後から2019年末にかけてと、2020年年明けから原作完結にかけての2度、ブームがさらに勢いづく波が起きていたことがわかりました。
しかし本作のブームはその時点ではまだまだ終わりません。原作完結後、原作コミックスは10月2日発売の22巻でついに大台の1億部を突破。続く10月16日に公開された劇場版『鬼滅の刃』無限列車編が、公開直後から日本映画史の歴代記録を次々と塗り替え、国内だけでなくコロナ禍で苦しむ世界中のエンタメ業界からも注目を集めたりと、現在、本作のブームが勢いづく第3波となっています。
こうして明らかになったブームの全貌としては、ブームの着火点(アニメ放送中)以降、盛り上がりが勢いづいた大きな波が3回――①(アニメ放送終了後から2019年年末)、②(2020年年明けから原作完結まで)、③(2020年10月劇場版公開以降)――あったと言えそうです。
ブームの着火点では、アニメ放送開始と同時にではなく、2クール目以降徐々に熱量を上げて盛り上がりが目立ち始め、①のアニメ放送終了後から年末にかけては、原作漫画の盛り上がりが高まってファン層がさらに拡大し、②その後2020年年明け以降、その盛り上がりが社会現象と呼ばれるまでに至ることで、普段アニメや漫画に接する機会が全くない層にまで評判が伝わりました。そして③では、本書執筆中の10月末時点で、連日劇場版関連の話題が尽きず、未だブームのピークがみえてこない状態です。
今年に入ってから本作や本作が起こしたブームを知った人にとっては、いきなり現れた作品がいつの間にか社会現象と言われるほど人気になっている事態が不可解に思えたかもしれません。
しかし本作が歩んできた軌跡を改めて振り返ってみると、連載開始から2019年までのいわば黎明期といえる時期から、本作のブームは上記の流れで共時的かつ連鎖的に、時間をかけて生じてきたことがわかります。
ただし、本章で分析してきたのはあくまでブームの全貌と盛り上がりのプロセスであり、それだけでは〝アニメ化をきっかけに原作人気があがるというごく一般的なきっかけ〟が、なぜ『鬼滅の刃』ではこれほどのブームに繋がったのか、その要因までは明らかになっていません。
数ある作品の中で、『鬼滅の刃』だけがこのようなブームを起こすことができた要因とは何なのでしょうか。次の章で詳しく分析していきます。
┗アニメコラム①:『鬼滅の刃』のアニメは〝神作画〟なのか
ブームの火付け役となった『鬼滅の刃』のアニメは、物語や世界観、キャラクターといった原作漫画に裏打ちされた魅力を土台に、アニメならではの手法で表現された美しい大正時代の風景や迫力のアクションシーンなどが話題となり、特にその映像美は、大人から子供まで、それこそ普段はあまりアニメをみないという人までが本作にハマるきっかけとなりました。
こうして多くの人々を魅了している本作のアニメ映像の美しさは、度々各所で〝神作画〟と称されることがありますが、間違いではないものの、それでは足りないようにも思います。アクションシーンでの目が回るほどのカメラワークを可能とする3Dや美しい美術、温度を感じる色彩、惹きこまれる画面をつくる撮影処理やエフェクトなど……。手描きの作画もそれはもうもちろん神作画で間違いないのですが、本作の映像が特に素晴らしいと言われる所以は、神作画というよい素材だけでなく、そこへの調理や味付け、盛り付けまでがリッチな料理としての美味しさ、もっと複合的な美しさにあると思うからです。
それもあって、本作アニメの映像美とは、神作画であるのはもちろん、どちらかというと(もっといろいろなところを込みで崇めさせてほしいという気持ちも含めて)神映像と称した方がよいのではと、個人的には思っています。最近はそうしたアニメ制作の様々なセクションを手掛ける方へのインタビューも増えているので(下記や劇場版パンフレットなど)、どのような技巧のうえに、多くの人々を魅了するあの映像が生まれているのか、それを知ったうえで改めて作品を楽しんでみるのもオススメです。
参考記事
・世界を虜にしたアニメ『鬼滅の刃』はどう作られたのか ufotableにしかできない作画とCGの融合 前編
https://area.autodesk.jp/case/animation/kimetsu-01/
・世界を虜にしたアニメ『鬼滅の刃』はどう作られたのか ufotableにしかできない作画とCGの融合 後編
https://area.autodesk.jp/case/animation/kimetsu-02/
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無料版はここまで。以降では『鬼滅の刃』ブームの3つの外的要因などについて解説しています。
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