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橘玲『不愉快なことには理由がある』の話

「”橘玲”の名前を聞くと本人より先に岡田斗司夫の顔が浮かぶが、そもそも橘氏は顔出ししていないのでしょうがない」で自分を正当化するタイプのクソオタク(漏れ)

↑オタキング切り抜き

橘玲『不愉快なことには理由がある』集英社文庫

これは一年以上前に購入した本。一度通読はしたのですが、最近また読み直したくなりクローゼットの奥から引っ張り出してきました。

個人的な思い入れの話


昨年度私は図書委員をしていて、その時「委員一人一冊ずつ、まだ学校に置いていない推薦図書を選んで購入申請し図書館に展示しようキャンペーン」が実施されたのですよ。

本好きとしては自分の趣味を布教する絶好の機会となり得るこのようなイベントの襲来に歓喜したいところなのですが、実際はゴリ押したい本が沢山ありすぎて全然一冊に絞れず、もういっそのことウケ狙いでエドワードゴーリーの『ギャシュリークラムのちびっ子たち』などにでもしようかと本気で考えていた矢先、念のために図書館の蔵書を調べたらエドワードゴーリー関連書籍が複数確認され急速にウケへの意欲が冷めてしまったので、大変悩んだ挙句、当時ちょうど読んでいたこの『不愉快なことには理由がある』を選ぶことにしました。今になって思えば何故その時エドワードゴーリーで笑いが取れると思ったのか全くもって理解できないので、この選択は概ね正しかったと言えるでしょう。

後日無事に購入申請が完了し、一晩で作り上げたword製の超低クオリティ紹介カードと共に図書館に展示されたこの本をどれだけの人が読んでくれたかは知る由もありませんが、とにかくこのような事もありこの本には中々の思い入れがあったりします。ちなみに探したら当時作った紹介カードのwordデータが残っていました。それがこちら。

_人人人人人_
> 鬼ダサ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄

せめて題名くらい書けよ…

橘玲『不愉快なことには理由がある』

ようやく本題に入ります。
この本は『週刊プレイボーイ』に2011年から連載された「そ、そうだったのか⁉真実のニッポン」が再構成され、一冊の本にまとまったものです。
著者の橘玲氏は『言ってはいけない』でお馴染みの”超現実主義”作家ですね。冒頭に貼った動画で岡田斗司夫氏が熱く語っていますので是非ご覧ください。

この本は内容ごとにパートが分かれていて、「POLITICS 政治」「ECONOMY 経済」「SOCIETY 社会」「LIFE 人生」の計4つの章に情報量満載のPROLOGUEEPILOGUEが加わった形で構成されています。そして先ほど載せた私作の鬼ダサポップからも分かるように(問答無用)、毎度毎度見出しのキャッチコピーが強烈で読む前からニヤニヤ不可避なのです。以下にお気に入りをいくつか引用します。

・大富豪はマサイ族よりちょっとだけ幸せ
・税金を払わないのには進化論的な理由がある
・高校生のセックス相関図
・人類の歴史はたった30秒 etc.

「PLOROGUE」より

・君子は簡単には豹変できない
・有権者がバカでもデモクラシーは成立する?
・小沢一郎はなぜエラそうなのか?
・「首相が変われば日本はよくなる」という幻想
・私たちのエゴが原発を止める
・愛国はめんどくさい etc.

「POLITICS 政治」より

・”富”は不正がなくても集中する
・”劣等人種”と”劣等産業”
・コンプガチャが許されるのは国家だけ
・年金消滅は「素人社会」の宿命
・ベーシックインカムは「愚者の楽園」 etc.

「ECONOMY 経済」より

・東電の社員は原発事故に責任を負うべきなのか?
・「家族の絆」を取り戻すもっとも簡単な方法
・江戸時代の暮らしが知りたければインドのスラムに行けばいい
・正義の本質は娯楽である
・学校はいじめを前提に成立している etc.

「SOCIETY 社会」より

・お金はなぜ”汚い”のか?
・男と女はなぜわかりあえないのか?
・宝くじは「愚か者に課せられた税金」
・ダイエットに成功すると仕事に失敗する?
・恋人が死ぬより長時間通勤の方が不幸? etc.

「LIFE 人生」より

ニヤニヤというよりハラハラの方が多い気もしますが…

いかがでしょうか。もうこれだけで本書の雰囲気が十分すぎるほど伝わってくると思います。
元々連載記事だったこともあって一つ一つの章は短く、内容も時局的なものがメインなので割とサラッと読むことができて通勤通学時の読書にピッタリ(当社比)。もっとも連載開始が2011年なのでそこらへんのギャップは多少ありますが、「問題の解決が新たな問題を生む」この現代社会において、当時起きていた様々な社会問題の根底にあるものが10数年後の現在、綺麗サッパリ無くなっているわけではもちろんないので、今読んでも普通に新鮮味を感じる題材ばかりです。

専門家としてではなく、あえて”素人”の立場であることを明記して行われる"みんなと違う視点を提供して意見の多様性に貢献する"社会批評が盛りだくさん。具体的な内容については実際の"橘節"を体感していただきたいので控えますが、「たったひとつの正しい主張ではなく、たくさんの風変わりな意見」を求めているような方にはぜひ一度読んでいただきたい一冊です。

最後に

最近マスコミは専ら例のフジテレビの話題で持ち切りという印象を受けますが、この本の中でも例えば組織の「コンプラ」や「ガバナンス」などの問題が存分に取り上げられています。特に顕著なのは「SOCIETY 社会」の〈”無責任社会”は無限責任から生まれた〉という章。「2011年10月、名門企業オリンパスが20年にわたり巨額の損失を隠してきたことが発覚」と聞けばピンと来る方もいらっしゃるのでしょうか。
私は当時まだガキだったので全然覚えていませんが、読んでいると自分がギリギリ知り得ないちょっと昔の時事ネタや、当時のリアルな風潮を垣間見ることができてとても楽しい。もちろん人によっては懐かしい内容が満載で、それはそれで(場合によっては不愉快な)記憶を掘り返しながら十分に楽しめるでしょう。

橘玲氏の著作はまだこれしか読めていないので、機会があれば他の書籍も探してみたいと思います。


以上です。読んでくださった方ありがとうございます。

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