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【極私的名盤をご紹介④】〜Marc & The Mambas「Torment」〜これぞ英国!


はい!マーク・アーモンドです!・・・すみません、アルバムはMarc and The Mambas名義ですね...笑


知ってる人・・・います?・・・という問いかけは英国では世代を問わずギャグになります。(たぶん・・・笑)

おそらく、この人ほど英国での評価と日本での知名度がかけ離れているアーティストはいないのではないでしょうか???


少なくとも私の(数少ない、いや少なすぎるのですが)友人・知人の人たちの間では、「あ〜、昔、ソフトセルでヒット曲出した人ね...まだ音楽活動やってんの?」というのがマシな方でしかも唯一です...笑


かれこれ40年に渡り、マーク・アーモンド(以下、MA・・・この人は綴りが“MarkでなくMarc”です。マーク・ボランのファンらしいので、多分、若気の至りです)はずーっとコンスタントに音楽活動を続けほぼ毎年、アルバムを出してます。(ただし、メジャーレーベルから出しているのは少ない=10枚以下です)2018年には芸術と文化への貢献により大英帝国勲章(OBE)を授与されました。大事なとこなのでもう一度繰り返しますね...笑『芸術と文化への貢献により大英帝国勲章を授与されました』・・・しかもこの人、英国内のどっかの大学から名誉哲学博士号を授与され、その年の卒業式のスピーチまで行ってます。もう、国民的偉人の部類ですね...驚。ちなみにゲイでメニエール症候群を患っているそうです(公表してます)。多作な上に活動的で、ソロ名義でのスタジオアルバムだけでも27作です!?最新作も2024年の「I'm Not Anyone」(聴きましたこれ!バンドサウンドによる楽曲が多い、超絶、久々の名盤です!)と還暦過ぎてもバリバリの印象です笑・・・その中で私が聴いたことがあったのは7枚ほどだけで、今回、頑張ってほぼ全アルバムの全曲を聞いてみました。アルバムとして今、手元に持っているのはわずかに3枚(LP2枚+CD1枚)だけです笑


全世界で3,000万枚以上のレコードセールスを記録しているそうですが、なぜ、日本でこんなに知名度が低いのか???

その理由は実は明白で、“米国以外の世界”、特に英国で有名だからです・・・米国ではアルバム発売すらほぼないです笑。極端ですよね...笑

米国であまり売れない人は、日本での知名度もあまり高くないことはよくありますよね。マイク・オールドフィールドとかもそうですね。あんなにすごいことやってるのに・・・とどんなに喚いても、状況はずーっと変わらないので、そういうものということですね...汗

2000年から、ロシアがウクライナ侵攻を始めるまで、モスクワに住んでいたそうです。ウクライナ支援の楽曲も出していますね。


MAの音楽は、これまたかなり独特です・・・と言っても特徴は曲の良し悪しではなく、むしろそのサウンドの方がROCK好きにとってはインパクトが大きいです。ぶっちゃけ日本の歌謡曲の感じです。オーケストラが入ったバックアレンジがほとんどを占めていて、キャバレーとかで演奏される音楽と思ってもらえれば間違いないです。

MAのVo.自体はシャンソンとかオペラとかのクラシックよりの感じで、上手いか下手かで言ったら、めちゃめちゃ上手いです!結構多くの方が「あぁ〜」と思っていただけるのではないかという表現でMAの歌唱を説明すると“日本で言えば、尾崎紀世彦さんとか布施明さんとかの部類です”・・・豊富な声量と抑揚を活かして朗々と歌い上げる感じですね。好き嫌いはあると思います。この方、歌唱力に加えて、作曲の才能にも秀でていて、作る曲はとてもメロディの美しい楽曲ばかりです。


MAが世にでたエレPOPのバンド、ソフトセル(2人組コンビです。ポール・ウェラーのスタイル・カウンシルみたいなものですね。)は私はとても苦手で、ぶっちゃけ、嫌いでしたし、今も好きではありません。ヒットした曲も全く良いと思ったことはありません。


ところが、ソフトセルのVo.で中心人物であるMAのソフトセルとは別プロジェクトとしてやっていたこのバンドはとても好きでした!

固定メンバーはとても楽器が弾けそうな感じはしないような男女なのですが、例えばザ・ザのマット・ジョンソンが参加したりとかでとても曲調のバリエーションが豊かで、面白かったんです。このMarc & The Mambasの活動期間は1982〜83のわずか2年くらいです。ただ、2013年に再結成してライヴとかやってます(何を今さら感がいっぱいですが、実績があればなんでもそこそこ受けるみたいです...笑)


今回ご紹介するアルバムは、そんなMarc & The Mambas名義で出された1983年リリースのこちら「Torment and Toreros」2枚組です。



私が持っているのはLPですが、聞くのはもっぱらデジタル化した音源ですね。

あらためて。このアルバムは、MAのソロではなく、Marc & The Mambasというバンド名義のアルバムです。このバンドは、MAがさまざまな音楽的な実験を試すために作ったバンドで、固定的なメンバーはMAのほかはギターを弾く男性とキーボードとコーラスの女性の2人だけで、あとは曲によっていろんなメンバーが参加するという感じで、このバンド名義では2枚しかアルバムは出していません。解散した理由についてMAは「あまりにもレギュラーバンドみたいな雰囲気になっちゃったので・・・」と言って解散というか、このバンド名での活動をやめました。

レギュラーだった男性と女性は、その後も(初期は)だいたいレコーディングに参加しているので、別に仲違いしたわけではありません。というか、MAは基本、デビュー早々、ソフトセルのシングル「Trained Love」で全英1位とったり、その後もかなりヒット曲連発させていてしこたまおカネ持っていて、すっかりビッグネームになってましたから、ケンカする相手はレコード会社とか以外はいませんでした。おカネが欲しい人たちから「こんなアルバムにしてくれ」とか「こんな曲を作ってくれ」とかのウザい指図を受けなくていいように、MAはほとんどマイナーレーベルからしかレコードを出さないし、流行を踏襲するようなアレンジやバンド編成とは関係なく、音楽を演りたいメンツやユニークな感覚を持ったヤツらとバンドを組んで、とにかく素早く作品を創る環境のために稼いだおカネを使いまくるという珍しくまともな趣向を貫いています。このMarc&TheMambasもそんなMAの生き様の一つです。このバンドのサウンドは基本、チープなリズムボックスの単調なリズムにアコギとこれまたチープなキーボード/シンセの音とMAのウタというのが基本線です。


Torment and Toreros(1983年)

<1枚目>

  1. Intro(Almond, Sally Mambas) – 3:17

  2. Boss Cat(Almond; original lyrics: Anne Stephenson, Ginny Hewes) – 4:17

  3. The Bulls(Jacques Brel) – 2:18

  4. Catch a Fallen Star(Almond) – 5:12

  5. The Animal in You (Almond, Mambas) – 7:19

  6. In My Room (Joaquin Prieto;English lyrics:Lee Pockriss,Paul Vance)– 3:01

  7. First Time(Almond)– 3:38

  8. (Your Love Is A) Lesion(Almond) – 5:38

  9. My Former Self (Almond,Annie Hogan) – 2:45

  10. Once Was(Almond, The Venomettes) – 5:10

<2枚目>

  1. The Untouchable One (Almond, Jenkinson) – 6:03

  2. Blood Wedding (Traditional Spanish; arranged by Marc and the Mambas) – 01:51

  3. Black Heart (Almond, Hogan) – 04:50

  4. Medley: Narcissus/Gloomy Sunday/Vision (Almond,Steve Sherlock/Sam M. Lewis,Rezso Seress/Peter Hammill) – 11:46

  5. Torment (Almond,Steven Severin,Robert Smith) – 4:21

  6. A Million Manias (Almond,Foetus) – 5:52

  7. My Little Book of Sorrows (Almond) – 5:59

  8. Beat out that Rhythm on a Drum(Georges Bizet,Oscar HammersteinII) – 5:00

という曲目なのですが、ものすごいいい曲が並んでいます。

1枚目でいえば、2、3、6、7、2枚目でいえば、1、3、4、5、6あたりは本当にすごい曲だと思います。このうち、2枚目の5でタイトル曲でもある「Torment」はクレジットを見ると、スジバンのb.スティブン・セヴェリンとザ・キュアーのロバート・スミスとの共作です。この曲が本当に名曲で、当時、ヴォーカルのバンドとは別に、ギターと作詞作曲を担当していたバンドの方でカバーしました。このバンドはスジバンとかパティ・スミスとかのカバー曲とオリジナルを演ってました。バンドの最後にタイコ叩いてた人はプロのドラマーとして頑張ってて、ときどき、ツアーメンバーとして福岡のライヴにも来てるようです。一度、彼とLINEか何かでやり取りをしたとき、昔のオリジナル曲の話になり、「あれは今、聞いても名曲だと思う。当時、16のハイハットのキザミは片手でやれ!と言われて、無茶言うな〜と思ってたけど、今はわかります!今なら、余裕でできますよ〜」「それはすまんかった!演りたいなら、別に俺の許可取らなくて勝手に演ってもいいからな」「ドラムなんで、コードと歌詞がわかりません(笑)」「お前・・・オマー・ハキムはメジャーセブンスかどうかをスティングに確かめて、叩き方を変えてたぞ」・・・みたいな微笑ましいやりとりをしました...涙出ますね、今流で言えば、エモくて・・・

また、脱線しちゃいましたが、このアルバムの話に戻ると、正直、しっかりとアレンジを固めて〜みたいな雰囲気はこれっぽっちもなくて、メロディと歌詞ができたので、まずは演ってみよう!みたいな感じの曲がずらりと並んでいます。でも、そんな感じだからこそ、曲自体のデキの良さがよくわかります。このアルバムの前に出たUntitledというファーストアルバム↓



こちらもとても良い曲がズラリ!です。特に1曲目の「Untitled」のメロディの素晴らしさといったら、言葉ではとても表現できないです。

この時のサウンドは、MAの、かなり貪欲にクラシックから地域のトラッドまでを取り上げて、オーケストレーションとエレキ楽器の組み合わせで(まったく歌謡曲のバック演奏と同じ感じです)曲の表情のバリエーションを広げていくようなアレンジされたサウンドとは異なり、昨日今日、楽器を初めて持ったばかりの自意識過剰なガキどもが悦に入って演奏しているという感じなのですが、それだけにかえって想像力が湧き上がり、ベースラインをこうして変えて、リズムをシャッフルぽくして・・・とか思いついてやってみるとかなりステキに「変身」するんです。これも原曲がめちゃくちゃ良いからできることですね。・・・昨夜、久しぶりに「Torment」のイントロを弾いてみました。


上記、2枚のMarc & The Mambas名義のアルバム以外にMAのソロアルバム、なんせやたら数が多くてどれから聞いたらいいのか迷うと思うので、私が今も持っている(CDですが)音源について私のメモ付きで紹介しておきますね。


●Mother FIst and Her Five Daughters(1987年)



MAのソロ3作目です。アルバムタイトルはトルーマン・カポーティですね。短編小説『夜行性転換』から取られてます。全12曲中4曲「Mothe Fist」「Melancholy Rose」「Ruby Red」「The River」が出色です!特にMotherFistは必聴です!実は、このアルバムから、バンドサウンドよりもオーケストラサウンドの方が多くなっていった気がします。



●The Stars We Are(1988年)



MAのソロ4作目です。NICOとのデュエット曲「Your Kisses Burn」、ジーン・ピットニーとのデュエット曲で全英1位の「Something's Gotten Hold of My Heart」米国でのMAの最大のヒット曲(と言ってもビルボード100で67位というだけ)の「Tears Run Rings」など収録のおそらく、一番とっつきやすいMAかもしれないです。ただし、オーケストラバックに壮大に“歌い上げる”って感じがぷんぷんするので、慣れが必要です...笑



●Open All Night(1999年)



MAソロ10作目です。スジバンのスージーとタイコのバッジーが参加している「Threat of Love」に代表される通り、これはGothicアルバムですね。「My Love」とか「Black Kiss」とかGothic好きならわりと馴染みやすいかもしれないですね。MAの歌唱の、そもそもとても大仰で芝居がかってる感じがGothicにあってる感じがします!


MAはロシア住みの2004年くらいにバイクの運転中に大きな事故に遭ってます・・・確か2ヶ月とかの間、生死を彷徨ったと記憶してます。私は「あ〜、もう多分、あの声の新曲は聴けないんだろうなぁ」と思ってましtが、復活し、以前より活発に創作活動を続けています!

2020年に出たアルバムと昨年(2024年)に出たアルバムはバンドサウンドも多くて、けっこう良いよ!と知人が教えてくれたので、久々に入手してみようかと思っています!→(追記)


あの声とあの歌い方になんとかなれることができたら、この創作意欲旺盛なアーティストはとても大きな生きていく励みになると思います!


それにしても..........................どうしてあんなに英国で評価が高いのか、さっぱりわからん!(もちろん、悪いことではないのだが、もっと・・・うん、黙るとこだ、ここは!)



(追記)

I'm Not Anyone(2024年)・・・聴きました!



スゴイですね、これは・・・名作だと思います!

MAと言えば、フルオケの重厚なサウンドが代名詞みたいなところがありますが、このアルバムはギター(アコギが多いです)+ベース+ドラムというオーソドックスなバンド楽器がサウンドの中心になっている楽曲が多いです。もちろん、オーケストレーションも全ての楽曲でアレンジされてますが、簡単に言えば、スリーピースで演奏できるような楽曲がほとんどです。MAのVo.も衰えてないですね。還暦もとっくに超えているのに、すごいですね!機会があれば、ぜひ、ご一聴ください。

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