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超人見知りの私が言うのだから間違いないです あいさつっていいよ

世間話などしなくていいあいさつに限りますけどね

 山ではすれ違う人と必ずあいさつします。
 遠くから来るちょっと恐めのおじさんも、「こんにちは」という声を聞いたとたん優しいおじさんになります。
 苦虫をかみつぶしたような顔で降りてくるおじいさんも、「こんにちは」と言ったとたん気の置けないおじいさんになります。
 ちょっときつそうなお母さんも、「こんにちは」と声を聞いたとたん気さくなお母さんになります。
 やんちゃで扱いづらそうな小学生の子どもも、「こんにちは」と言ったとたん私の中で賢い子どもになります。
 とっつきにくそうなカップルもいい人になります。
 あいさつって不思議です。
 
 小学生の時は極端な引っ込み思案で、あいさつをするのがとても苦手でした。
 一度そのようなことを作文に書いて発表したことがあります。
 先生は作文を聞き終えると、「まあ、慣れだけどね」と言いました。
 それを聞いて、慣れるわけないと思ったのを鮮明に覚えています。
 あれから50年。
 慣れました。
 
 私は今、障害者の移動ヘルパーというのをしています。
 障害を持った人を、作業所から自宅まで送っていく仕事です。
 毎日通る道に、反対から系列の作業所の人たちとすれ違う場所があります。
「さようなら」と言うと、そこの人たちも「さようなら」と言います。
「さようなら」「さようなら」その応酬が本当に楽しいのです。
 さようならと言い合うだけでわくわくとした気持ちになります。
 なぜでしょう。
 ただただ人との関わりって楽しいと思える瞬間が、そこにはあるからでしょうね。
 
 山なら「こんにちは」、帰路なら「さようなら」
 声から、相手の人間性がちょっとあふれてくるんです。それに触れるのがとても楽しい。自分の気持ちが相手のところに飛んでいくのも、とても楽しい。
 小学生の自分にはまだわからなかったのですね。
 
 
 
 あ、でも、今でも世間話などしなければいけないあいさつは苦手です。

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