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親は知らず知らずのうちに子どもを傷つける
悪気はなくても子どもを傷つけているかも
私は障害を持った人の移動ヘルパーというのをしています。
職場から家、またはグループホームへ移動のお手伝いです。
さて先日、こんなことがありました。
その女の人は知的障害なのですが程度は比較的軽く、対等におしゃべりもできます。ナイーブな女心を持った30代の人です。
暑い夏の日。
女の人は体格のいい人で、暑い暑いと汗だくになって歩いています。
長袖を着ていて、いくら暑くてもそれを脱ごうとしません。
「長袖脱いだら?」
とうとう私が言いました。
女の人は本当にもう暑さが限界だったようで、とうとう長袖を脱ぎました。
袖なしの服からりっぱな両腕が出てきました。
プロレスラーのような腕、とちょっと思っちゃったのです。
女の人は言いました。
「服脱ぐとみっともないの。お母さんにプロレスラーみたいだって言われた」
私はその時、「お母さん、ひどい」と反射的に言ってしまいました。
そしてその後考えたのです。
この人はお母さんのその一言で長袖が脱げなくなってしまったのかな、と。
お母さんはもちろん冗談で言っただけで、彼女を傷つけるつもりはなかったでしょう。
ただ、親って時々無神経なんですよね。
例えばこんなことないでしょうか。
ママ友に、「お宅の〇〇くん、頭いいからいいよね」と言われます。
それに対して「そんなことないのよ、運動なんて全然できないし」とか、「引っ込み思案でね」とか「乱暴で困る」とか、謙遜のつもりで自分の子どもを悪く言うこと、ないでしょうか。
もしその場に本人(お子さん)がいたら最悪です。
自分はこんな悪いところがあるんだ、そう思ってしまうでしょう。
その思いはその後もずっと引きずってしまうはずです。
というわけで、彼女です。
お母さんのほんの冗談で、彼女は長袖を脱げなくなってしまいました。
暑いのになあと思いながら私は一緒に帰りました。
次からも私の担当の日は、脱いでいいよと言いましょう。
彼女が服を脱いだ時「涼しー」とうれしそうに言った顔はとてもいい顔だったから。
そして同時に思っていたのです。
私も自分の子どもを、知らず知らずのうちに傷つけたことがあるだろうな、と。