Short story 犬に追いかけられて
唐突ですが、皆さんは犬に追いかけられたことがありますか?
実は私は何回かあります。今日はそのうち1番怖かった体験を綴ります。
私が小学生だった頃、今よりもご近所には何匹も飼い犬がいました。
当時は世間全体が緩かったので、今のようにリードをつけずに散歩させている方とか、家の前で放し飼いにしている方とかいらっしゃいました。
私は怖がりだったので、犬を見かけると犬の動きを逐一チェックしながら、恐る恐る前を通りすぎていました。しかし、こっちに来ないかと心配して犬をガン見しているため、犬と目が合うこともしばしば。
すると必ず吠えられます!
そして、リードに繋がれている時はリードを引きちぎらんばかりに、こちらに襲って来ようとしますし、リードに繋がれていない時は、最悪追いかけられます……。
あれは小学校2年生のある日のこと。
両親共働きで、祖母が妹を保育園に迎えに行ってしまい、自宅には誰もおらず、私は暇を持て余していました。
「そうだ!保育園のお迎え帰りのおばあちゃんと妹を、途中まで迎えに行こう!」なんて、思いついてしまったのです。
そして、住宅街の細い路地裏に行くと、その路地の20メートル先に柴犬らしき犬が……。
「えっ?! 犬? リードは? えっ?! リード無い?」と、目をよく凝らしていた瞬間、私に気が付いた柴犬がワンワンと吠えながら、私の方に向かってくるではありませんかっ!!!!!
「ぎょえ~っ!!!!!!!!!!!!!!」
死ぬほど怖かったです。私はくるっと反転して、今来た道を猛スピードで引き返しました。走るのは速い方なんですが、なにせ、小学2年生。怖くて、一瞬、後ろを振り向いた瞬間、柴犬がもう、すぐ私の真後ろにいて、今にもスカートの裾を咬みちぎろうとしていました!その瞬間、体勢を崩しつまづきました。
「きゃあ~~~っ!!!!!!!!!!!」と悲鳴を上げました。
そして、私は初めて”スローモーション”というやつを体験しました。
「き ゃ あ あ あ あ あ あ ~ ~ ~ ~ !!!」
と自分の声も脳内にこだまし、ゆっくりゆっくり自分の身体が前に倒れて行く瞬間をコマ送りで体感し、地面にバタリと倒れました。
「もぅ ダメだ。足を咬まれる~~~( ノД`)シクシク…」と思った瞬間
無音。ん?? どうした?? ん??
痛くない。咬まれてない。血が出てない。あれ??
と倒れたまま、恐る恐る後ろを振り向くと……柴犬の姿は跡形もなく。
私を追い越した気配もなく、私が柴犬を蹴った記憶もなく、でも、お犬様はどちらかに姿を消していました。摩訶不思議!!!!!
どこかの家に入ったのか?とか、飼い主に呼ばれたのか?とかいろいろ考えましたが、とにかく無事だったので安堵し、もはや祖母や妹を迎えに行く気力もなくなり、家に大人しく帰りました。
あ~。良かった。本当に恐ろしかった。記憶は薄れてきているけれども怖かった体験なので、忘れられません。ここに綴ることで、私のドジ話をクスっと笑っていただけたら幸いです。