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「本をたくさん読む」だけでは足りない

ひろゆき氏が語る“シン読解力”の重要性

「本を読みなさい」と言われて育った人は多いでしょう。読書感想文を書くために長い小説を熟読し、学校の先生に“自分なりの感想”を自由に書くよう促された……。そうした経験は日本の教育現場では当たり前のように行われてきました。
ところが最近、SNSなどで大きな話題を呼んでいるのが、「正しく読み解く力(シン読解力)」の不足です。「どれだけ本の数をこなしても、読解力がなければ内容を正しく理解できない」と指摘するのは、2ちゃんねる開設者で評論家としても活躍するひろゆき氏。実は、日本では多くの人が教科書レベルの文章を正確に読めていないという衝撃の調査結果が出ているのだとか。

ここでは、ひろゆき氏が語る「読解力と学力の関係」「RST(リーディングスキルテスト)の重要性」、そして私たちが見落としがちな「本来の読み方」について整理しつつ、なぜ「シン読解力」を身につけることが大切なのかを考えてみます。


1.「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」から見えた現実

1-1.読めるはずの“教科書”を読めていない

2018年に刊行され、30万部を超えるベストセラーとなった『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』。この本では、日本の子どもたち(さらには大人も含む)の読解力の低下を警鐘として鳴らしました。大きな問題は、教科書程度の文書ですら正確に理解できていない子が相当数いるということ。つまり、文章を自分なりに“感想”として展開はできるが、筆者の意図をそのまま把握していないケースが多いという現状が浮き彫りになったのです。

1-2.続編「シン読解力」で明かされるリーディングスキルテストの結果

同著の続編として発売された『シン読解力』では、さらに多くの人(累計50万人以上)が受検した「RST(リーディングスキルテスト)」の結果が紹介されています。そこには想像以上に深刻なデータが出ており、「正確に読む」という力そのものを獲得していない人が、子どもから大人まで数多くいることがわかったのです。


2.ひろゆき氏が指摘する「ただ読書させる教育」の限界

2-1.“読んだ気”になっても誤読なら意味がない

「たくさん本を読みさえすれば、国語力は自然と身につくだろう。」――日本では昔から、そのように考えられてきました。しかしひろゆき氏は、「読み解く力」が欠けたまま本を読み続けると、誤った情報や解釈がどんどん蓄積されるだけと警鐘を鳴らします。

  • 間違った感想を“自由な発想”と褒めてしまう危険
    たとえば読書感想文。子どもの文章が誤読に基づいていたとしても、「感受性が豊かだね」と大人は無批判にほめてしまいがち。正しい読み方を知らず、独自解釈ばかり進めてしまうと、現実に即した判断ができなくなる恐れがあります。

2-2.リンゴ5個とミカン3個が「合わせて何個?」の違和感

よくある学校の算数文章題に「リンゴ5個とミカン3個、合わせて何個?」というものがあります。私たちは当然「8個」と答えますが、ひろゆき氏の視点では「リンゴとミカンは違うものなのに、なぜ“果物”として合計するのか?」と突っかかるわけです。この例は冗談めいていますが、問題文をそのまま受け止めず、自分の知識や推測で勝手に解釈してしまうことが本来の読解力を阻害している、とも言えます。


3.RST(リーディングスキルテスト)の難しさと重要性

3-1.「本文だけから答えを導く」仕組み

RSTでは、文章に書かれていることを感情や想像を交えず、純粋に論理的に読み取る問題が出されます。たとえば経済に関する文が提示され、「A銀行に預金している中学生は“直接金融”を利用しているか否か」を問う――そんな問題です。普通は「銀行経由だから間接金融だ」と判断するところを、余計な常識や感情を入れ、「中学生だから…」「銀行が資金不足かもしれない」などと混乱してしまう人が意外と多いのだとか。

  • 知識が邪魔をする例も
    大人ほど「銀行=お金が余っている」「中学生=お金がない」といった先入観で読んでしまい、文章に書かれた範囲外の推測で答えを誤ることがある。

3-2.国語教育とのギャップ

ひろゆき氏は、このテストに似た問題を国語の授業でやろうとすると、「犯人の動機はこうかもしれない」「裏にこんな感情があるのでは?」と深読みに走ってしまう教育が日本には存在すると指摘します。創造力を伸ばすのは確かに大切ですが、事実として書かれたことを正確に捉える訓練も並行して行わないと、本当に伝えたい意図から離れた解釈ばかりが増幅しがちです。


4.「シン読解力」が学力にも人生にも影響する理由

4-1.数学や算数の文章題が苦手になる

「リンゴとミカンは8個」という単純な問題でも、余計な解釈を加えてしまうと訳がわからなくなる。同様に、数学・算数でも問題文の設問をズレた視点で読んでしまうと、正答にたどり着きにくくなります。読解力の問題が勉強全般の成績に直結するのは想像に難くありません。

4-2.社会に出てからのメール・契約書が理解できない

ビジネスの現場では、契約書メールなど、文章を正確に読み取る力が求められます。そこに曖昧な推測や自分勝手な解釈を交えると、トラブルの原因に。ひろゆき氏は、「口頭でごまかせない分、テキストの読み書きに強い人ほどラクに生産性を上げられる」とも言います。誤読がもたらす損失は、社会人になってから一層深刻になるのです。


5.どうすれば「シン読解力」は身につくのか?

5-1.答えがひとつに絞られる文章でトレーニング

創造力を養う“読書感想文”も大事ですが、それだけでは正確な読解力は育ちません。ひろゆき氏は、「犯人は誰で、凶器は何か?」のような“独自の考えを挟まない”問題を繰り返し解くとよいと提案。契約書読み解き演習のように、誤読の余地がほぼない文章を素材にすると、余計な感情移入や常識が入り込まずに済みます。

5-2.RSTの普及と教材作りのポイント

リーディングスキルテストを大規模に実施するためには、問題文を作成するスキルが教育現場にも必要です。作者(問題作成者)が自分の思い込みを混ぜてしまうと、受検者が混乱するだけの変な問題になりかねない。今後は、RSTの普及とともに「問題を作るトレーニング」の重要性も認識されるでしょう。


6.読解力の低下がSNS時代で顕在化する

6-1.文章のやりとりが増える現代

メールやチャット、SNSが当たり前のように使われる時代、口頭で補えないテキストベースの情報伝達が増加しています。そこでは、誤読や誤解が積み重なるほどコミュニケーションの破綻を招きます。一方、読解力が高い人は必要な情報を正確に得られるので、効率的に仕事をこなせるようになるでしょう。

6-2.知識や常識を一旦リセットする姿勢

大人ほど過去の経験や知識が邪魔になり、問題文を勝手に補完して読んでしまう例も多いです。 「書いていないことは書いていない」 と割り切る訓練をすることが、シン読解力を磨くカギ。固定観念や常識から離れて文章を精査する姿勢を身につける必要があります。


◾️まとめ:ただ読むだけでなく、正しく読み解く訓練を

  • 誤読を「独自の感性」として放置しない
    誤読は矯正する必要があります。創造力と誤読は別物。

  • RST(リーディングスキルテスト)に代表される客観的な指標
    「契約書や説明書を読む力」「犯人と凶器を特定する力」など、解釈の余地が少ない問題でトレーニング。

  • 読書量より“読み解く質”が大事
    たくさん本を読んでも、間違った読み方をしていれば知識の歪みが蓄積するだけ。

ひろゆき氏は、“読書は悪くないけど、その前に正しい読解力を身につけよう”と繰り返し強調します。実際、『シン読解力』や『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』で示されたデータは、日本の子どもや大人が思った以上に“文章の意味をすくい取れていない”ことを浮き彫りにしました。

このまま曖昧な読解力で社会に出れば、契約書やビジネス文書を誤読してトラブルに巻き込まれたり、学力が本来のポテンシャルを発揮できなかったりするかもしれません。だからこそ、早い段階で“シン読解力”を身につけ、“読書感想文”の感性論とは別に、正確に文章を読む力を養うことが、これからの時代の必須スキルと言えるでしょう。


参考書籍・関連情報

(※本コラムは、上記の書籍や公表された記事内容をもとにまとめており、一部筆者の見解も含まれています。興味を持たれた方は、ぜひ実際の書籍を手に取ってみてください。)

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