企業理念を形成するための具体的なステップ ~MVVの力とは?~
こんにちは、今回はスティーブンが記事を担当します。
これまではQUESTの活動を通して得た気づきや学びについての記事を書いてきました。
今回はその中でも個人的に最も重要だと思っている「MVV」についてお話ししたいと思います。
「MVV」とは?
MVVとはピーター・ドラッカーが提唱した概念で、それぞれ日本語に直すと「使命(Mission)」「理念(Vision)」「行動指針(Value)」となります。
組織や企業の方向性を示す行動方針のことを指し、「企業理念」とも表現される、企業にとっての重要な価値観を表しているものです。
それぞれの言葉は下記のように定義されます。
ミッションとは、その企業が社会に貢献するために何を成し遂げるかという「使命」を表します。簡単に言えば企業の目標とも言い換えられます。
ビジョンとは、企業が「目指すべき理想の姿」のことを指します。上で挙げたミッションを達成した結果、どのような未来が実現されているかをここで示します。
バリューとは、ミッションを成し遂げるにあたって企業が大事にしたい「価値観」のことです。ミッション達成に必要な手段を全社的に共有することで、社員の方向性が明確になります。
これらの項目を基盤として意思決定をすることで、企業としての方向性に一貫性を持たせることができ、組織の一体感を生むことができます。
企業には様々な価値観を持った人たちが集まっており、基本的にはそれぞれの価値観は尊重されるべきです。
ですが、企業として目指したい未来・姿・価値観を明確にしておくことは、それらに共感を持った人たちが集まりやすくなり、結果的に組織のエンゲージメントが高まることにつながります。
ちなみに、創業から100年以上経過している「100年企業」の割合が最も多い国は日本なのだそうです。
そして、それらの企業に共通している点として、創業当時から変わらない企業理念(ないしMVV)があるということが挙げられるそうです。
さらに余談ですが、企業理念のほかに経営理念という言葉もあります。
一見同じような意味に見えますが、企業理念は創業から(もしくは数十年単位で)変わらない企業の理念で、経営理念は経営の進め方に関する理念であり経営者の代替わりなどで変わることもある理念、という区別がされております。
MVVができるまで
さて、私たちQUESTでもMVVを設定しております。
これは代表のてんちょーの発案で、QUESTでは「全員がやりたいと思えることをやる」ことができる環境にしたいという彼の熱い想いがあり、そのためにはまずメンバー全員の価値観のすり合わせを行った上で全員が納得のできるチームにしようということになりました。
ここからは、私たちがMVVを完成させるに至るまでの流れを振り返っていきます。これからMVVを作成しようと思っている方の参考になれば幸いです。
ゴールの決定
最初に行ったことは、MVVをつくることによって何を達成するかというゴールの設定です。
上でも触れましたが、MVV達成のために全員が夢中になれる・頑張れるという状態を目指すべきゴールであるとしました。
ただ、最初からこれらを実現することは難しいので、現実的なところでは、MVVに全員の理想が反映されている・腹落ちしているというところまですりあわせることを当面の目標としました。
定義の共有
次に、MVVという言葉の定義づけを再度行いました。
一般的な定義は前項で示した通りなのですが、そもそもMVVという言葉の意味自体を知らない人間がほとんどだったことと、ミッションとビジョンが混同しやすいことから、全員の認識を合わせる意味もあって定義の共有に時間を割きました。
今回の例に限った話ではありませんが、言葉の定義をあらかじめ全員ですり合わせておくことは、仕事において大変重要なことだと思います。
スケジュール設定
QUESTでは毎週2時間のオンラインMTGを全員参加で実施していたため、その時間で数回に分けて議論しながら決めることも検討しましたが、今回は丸一日使ったオフラインでのワークショップを実施して、その日のうちに決定稿まで一気に作り上げるという方法を採用しました。
MVVのような感情が大きく関わる物事の決定は、対面で行うべきだろうという意見がメンバー間で一致したからです。
今やオンラインMTGのためのツールは無数にあって便利な一方、議題によってはオフラインとうまく使い分けることが必要だと思います。
ワークショップの準備
このような流れで対面型のワークショップを実施することになりましたが、ここで問題となったのはどのようなワークを実施するかという点です。
当初はブレインストーミングを行いながら、出てきたアイデアをまとめるという想定でしたが、この方法だと最終的にMVVとして一つの決定案にまとめることが困難であろうと思われました。
その対策として「意思決定の方法を決めておく」「妥協ラインを決めておく」「たたき台を用意する」ことで、当日の進行がスムーズになるように備えました。
意思決定の方法について、私たちは「ファシリテーターが意見を取りまとめ、最終的には代表(=てんちょー)が判断する」ということについて、あらかじめ全員の同意を取っておくことで対応しました。
このあたりの話は私が以前書いた記事で触れておりますので、もし興味があればお読みいただけると幸いです(ダイマ)
妥協ラインを決めておくという点については、全員の意見を100%取り入れるということは現実的に不可能であるという前提の話になります。
完璧な合意を目指すために労力や時間を費やすよりも、7~80%程度の合意を取って事業をいち早く先に進めることを重視したためです。
そのため、まずはそれぞれに自分が最も大事にしている価値観(絶対にやりたいorやりたくない)を事前に考えてきてもらうことにしました。
その内容を当日のワークで全体共有をし、お互いの価値観の理解を深めた上で議論を進められるように工夫をしました。
たたき台を用意するという点についてですが、まずはミッションとビジョンの仮案をてんちょーに考えてきてもらい、その内容をベースにそれぞれの価値観を反映させるという手法を取りました。(ちなみに、バリューに関しては上記の価値観の共有を行ってから決定しましたのでたたき台はありませんでした)
たたき台があることで議論のスピードは格段に上がります。一方、たたき台の内容に議論が引っ張られてしまうという懸念もありましたが、最終的には代表が意思決定をするという取り決めによって大きな混乱は避けられました。
この段階でのMVVのたたき台は下記の通りです。
ワークショップの実施
当日は貸会議室を借り、MVV策定に全力で集中できる環境を用意してワークショップに臨みました。
会場の都合で時間通りにワークを終了させる必要がありましたので、事前のタイムテーブル作成やタイムキーパーの任命など、全員がスケジュール通りに進めることを重視して行動するように心がけました。
まずは事前ワークだったお互いの価値観の共有を行い、その後ミッション・ビジョン・バリューのそれぞれのたたき台に対し、それぞれの価値観を反映させながら文面を修正していくという作業を計5時間かけて行いました。
全員が忌憚のない意見をぶつけ合いながら全力で議論を行ったため、終了時には全員疲労困憊となりましたが、最終的には下記のようにMVVが決定しました。
それぞれの詳しい意味についてはまた別の機会にお話しできればと思いますが、このような流れで私たちのMVVは完成に至りました。
なにが変わった?
さて、こうした苦労の末に完成したMVVですが、完成する前と後で私たちの意識はどのように変わったのか、改めて振り返ってみたいと思います。
まず、私たちが取り組むべき事業に対しての認識が変わりました。
実をいうと、この段階ではQUESTで取り組むべき事業内容は決まっておりませんでした。
というのも、副業として行える事業規模には限界があり、またすぐに収入が得られるのであればどのような仕事でも取り組むべきか、などの多様な選択肢に対して明確な判断基準がなかったためです。
MVVという判断基準が出来たことで、ミッションを達成するために何をすればいいかという指針が明確になりました。そして、その第1弾として「社長の右腕サービス」が生まれました。こちらのサービスに興味がある方は下記リンクをご覧いただければと思います。
他には、QUEST内で会話するときに自然とMVVにある言葉が口をついて出てくるという変化もありました。
特に「持ちつ持たれつ」や「楽しむ心を忘れない」などは会話している中でも頻繁に出てくるようになり、QUESTの共通言語としてより一体感を感じる場面が増えたように思えます。
また、「今の自分(もしくはQUEST)はMVVを体現できているだろうか?」というように自省の材料としても用いるようになりました。日々の行動レベルから事業計画レベルまでのあらゆる場面において、MVVを引き合いに出すことで自分たちの原点に立ち返ることができるという安心感も得られたように思えます。
現時点ではあまり関係ありませんが、今後QUESTのメンバーを増やすにあたって、MVVに共感できるかどうかを重要な判断基準にすることもできると考えています。人生の大部分を共に過ごす仲間として、価値観のミスマッチの可能性を減らすことができるというのは大きなメリットではないかと思います。
おわりに
ここまでご覧いただきありがとうございました。
こうして振り返ってみても、早い段階でMVVを策定することでメンバーの意識を統一させたことは、その後の活動をよりスムーズかつ納得感が高いものにするのに大いに役立ったように思えます。
今回は起業における話にはなりましたが、それ以外の組織運営やサークル活動など、様々な人が集まるコミュニティ全般において、MVVの策定は組織のエンゲージメントを上げるのに有効だと思います。
その際に、私たちの経験が少しでもお役に立てればと思い、今回の記事を公開しました。ご感想やご質問などありましたらぜひご連絡いただければと思います。
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