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マインドセット

バロック・フルートを再開してから40代のチャレンジが始まった。

「二度目の二十歳」「人生で今日が一番若い」「他人はそれほど自分に興味がない」「何歳からでも上達できる」チャレンジを肯定するための言葉を日々つぶやいていた。

10代、20代の頃私はこう思っていた。「もう二十うん歳」「〇〇さんは10代で■■コンクール1位」「自分なんて挑戦しても恥をかくだけ」

練習中の口癖がScheiße!「くそったれ!」だった。
勿論上手くなるはずもなく、卒業試験のオケスタ課題ではわざわざ審査員の解るドイツ語でこの口癖が出てしまいかなりの減点を食らった。

30代の頃、純文学以外の本を結構読んだ。その中の1冊にスタンフォード大学心理学教授のキャロル・ドゥエック氏が書いた『マインドセット「やればできる」の研究』があった。

マインドセット「やればできる! 」の研究/ キャロル・S・ドゥエック (著), 今西康子 (翻訳)

この本の言葉を借りれば「硬直マインドセット(=fixed mindset)」の典型が正に学生時代の私だった。

・人からの評価を気にするためリスクの少ない事しかしない
・無能さをさらけ出したくないためリスクのあるチャレンジをしない
・自分は有能だと自惚れているのに挫折に対する耐性が著しく弱い

この本を読んで唖然とした。

それ以後、牛歩の歩みではあるが「硬直マインドセット」からの言動が出ていないか気を配りながら生活するようになった。

さて。「硬直マインドセット」の対義語は「しなやかマインドセット(=growth mindset)」である。

・人間の能力は努力次第で伸びる
・上手く行かなくても粘り強く学び続けられる
・失敗や挫折を恐れずチャレンジし続けられる

日々のレッスンで生徒さんの上達のため、作戦を立てながら長期的な育みを試みている。お一人お一人の「マインドセット」を見ながら、いかに「しなやか」に変わってもらえるかを試みる。発する言葉に重大な責任を感じる。「さすが天才!」と褒められた人は、次の失敗で「天才」の称号を損なう事を恐れチャレンジしなくなるかもしれない。「コツコツ努力したお陰で3が月前に出来なかった跳躍が出来るようになりましたね!頑張りましたね!」その人の努力と向上できた事を嘘偽りなく具体的に労い励まそう。そう意識している。

他者を育む事がいつしか自分を生き直すプロセスへと繋がっていた。自分が自身を育むならどんな言葉をかけるべきか。しなやかな心でじっくり取り組んでみようと思う。そして、生徒さん方にもしなやかな心を持つ「もう一人の自分」を練習時に意識して頂けたらと切に願う。

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