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チン・オフ(Chin-off)

【顎当て(Chinrest)】
ヴァイオリンを地面との平行をキープした状態で演奏するために奏者の顎を載せる皿状のパーツ。1820年頃にドイツのヴァイオリニスト、ルイ・シュポーア(Louis Spohr 1784-1859)が発明した。

一般的なグァルネリ(Guarneri)型の顎当
私の大好きなヴァイオリン奏者:ベンヤミン・シュミット

バロック・ヴァイオリンで顎当てを使用しない奏法を『チン・オフ(Chin-off)』と言うらしい。顎で楽器を挟まないためモダン・ヴァイオリンとは左手のテクニックがかなり変わるようだ。

私の大好きなバロック・ヴァイオリン奏者:ペネロペ・スペンサー

さて。なぜフルーティストの私がこの話題を出すのかと言うと、フルートにおいてもバロックとモダン(ベーム式)の間で似たような変化があるように思ったからだ。それはリップ・プレート。
バロック・フルートには無い。

歌口の形状、大きさ、ライザーに関して今は省く。

昔のフルート教則本(モダン)には、下唇をリップ・プレートに押し付け、右手の親指を前方に押し、左人差し指の付け根を使用する「力尽くの3点支持」を推奨する記述があった。勿論、昭和中期頃からはこの方法の問題点が指摘されるようになる。何故ならリップ・プレートへの圧力がフルート奏法における適切な脱力の1番の妨げになるからだ。「触れているだけの三点支持」もしくはもっと効率的なフルートとの関わり方が存在する。

度々登場する話題だが、先日のバルトルド・クイケン氏の講習会基礎編にて、氏は下唇と楽器の接点は触れているだけ、何なら触れていなくても音は出ると仰っていた。また、その接点に力が入っていると頚椎が硬直するとも仰っていた。

全くもってその通りだ。

モダン、バロック両方に共通する課題。早速『リップ・オフ』の練習を取り入れよう。フルートを下唇から完全に離した状態で音を鳴らす練習⇒ただ触れているだけのポジションでロングトーン。何故か楽しい。

クイケン氏は講習会で冗談っぽく言った「未だかつて楽器を落とした人を見たことが無い」会場からは笑い声が溢れた。

『チン・オフ』の発想がまた1つ楽しい練習方法を思いつかせてくれた。

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