教皇庁 女性初の長官
バチカンの上級職への女性の登用を進めている教皇フランシスコは、初めて、「省」のトップである長官に、女性を任命しました。
世界中の修道会(たとえば、日本で上智大学を設立している「イエズス会」や聖心女子大を設立している「聖心会」など多数)を統括する、「奉献・使徒的生活会省」の長官に任命されたのは、イタリアの「なぐさめの宣教者会」の前総長、シモーナ・ブランビッラ修道女(60、イタリア人)。
「教皇 シスター・ブランビッラを女性初の長官に任命」ラクロワ誌、2025年1月6日
仏教との比較でたとえると、カトリック教会にとって、「僧籍」をもっているのは、「助祭」「司祭」「司教」「枢機卿」です。これは全部男性で、「シスター」と呼ばれる修道女も、カテゴリーとしては一般人(信徒)です。バチカンの省庁で働く職員の中には、一般の信徒や修道女もいますが、主に司祭が働いていて、そのトップはほぼ、枢機卿が担ってきました。
この記事によると、彼女は2023年10月から、同省の副長官をすでに務めていて、いよいよトップに立ったとのこと。さらに、そこに新たに就く副長官は、スペイン人のアルティメ枢機卿で、ラクロワ誌を発行する「被昇天のアウグスチノ会」総長秘書、ミシェル・キュブレ神父は「彼女は枢機卿に対して権限をもつことになり、これは教会内でかつてないこと」と驚きを隠しません。
記事はまた、2018年に現在の「広報省」の長官に、男性信徒のパオロ・ルフィーニ氏が任命されていることを紹介すると同時に、「しかし、今回の教皇の決定ははるかに重要で、それは『統治の奉仕職』に関わるからである」「彼女は、(世界中の修道者=)数十万の人間に対する裁治権を有することになる」とキュブレ神父は強調します。また、次は、「いのち・信徒・家庭省」のトップに、信徒や夫婦が就くのではないか、と予測もしています。
バチカンの「シノドス(代表司教会議)事務局」事務次長のナタリー・ベッカー修道女も今回の人事を歓迎、「これは奉献生活の象徴」と評し、聖職者だけでない、すべての人が参加する「『シノドス的な教会』の取り組みに沿うもの」であると述べています。
ブランビッラ修道女は元看護師で、修道会入会後は心理学を学び、モザンビークで青少年司牧に携わり、また近年はローマのグレゴリアン大学で心理学研究所教授を務めていました。
他の女性、上級職従事者
近年、教皇フランシスコが任用した女性は以下の人です。▼フランチェスカ・ディ・ジョバンニ(71、信徒・弁護士)2020年より「国務省」次官▼ナタリー・ベッカー(55、ザベリオ会修道女)2021年より「シノドス事務局」次長▼アレッサンドラ・スメリッリ(50、サレジオ会修道女・エコノミスト)2021年より「総合的人間開発省」次官▼バファエラ・ペトリーニ(55、フランシスコ会修道女)2021年より「バチカン市国行政庁」次官
所見
前にも書いたことがありますが、日本は国会議員や上場企業役員など、女性比率が世界中でダントツ低いわけですが、バチカンは、統治権はほぼ男性に独占されているわけで、これに関してはグーの音も出ないところです。が、こうやってきたのには数百年、千数百年の歴史があるので、5年や10年で急変革すると大分裂が起きるのは必死。いまの教皇は、いい線を突いて前進しているのではないかと感心しています。1歩前進、半歩後退くらいで進むのがいいのでは? こうした女性や信徒登用の流れが、次の教皇でどうなるかは、予断を許さないかもしれません。