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「死者」は歩き続け…
『デッドマン・ウォーキング』という映画が1995年に制作されました。死刑囚(ショーン・ペン)と、彼を支えるシスター(スーザン・サランドン)の心の交流を描いた映画で、Sr.ヘレン・プティジャンの同名著書を映画化したものです。
知らなかったのですが、やはり90年代に、ジェイク・ヘギー作曲により、同じ著作がオペラ化もされ、サンフランシスコ・オペラで初演されていました。ことし9月末に始まった、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場の2023−24シーズンの幕開け(ページ下方、"Videos"で曲の一部が聴けます)に、この作品が選ばれたということで、以下は、そのヘギーへのインタビュー記事が出ています(↑kesie91によるPixabayからの画像)。
([2003/12/17追記]その後の情報で、メトロポリタン歌劇場は現在やっている演目のライブビューイングをやっていて、すでにほぼ終了しているのですが、東京・東劇のみ21日まで見られます。)
「これはわたしたちのオペラ:死刑反対のシスター・ヘレン・プレジャン著作の舞台化」、ラクロワ 2023年9月28日
インタビューでは、ヘギーが本作を作曲するようになったきっかけや、こうした現代的なテーマの新作オペラを創作していく意義についてなど、さまざまなテーマについて語られています。「最高のオペラは時宜にかなっている」と語り、『フィガロの結婚』が階級制度や所有、権利について問いかけるように、本オペラも、前トランプ政権で死刑が増加するなど、この問題について議論が続く米国で、「共鳴し続けています」。「劇場に足を踏み入れる前から、対話と会話を誘うのです」。
本作については、制作当時、シスター・ヘレンがとても協力的で、ヘギーらが、「芸術的な裁量権を行使し、登場人物を創作し、舞台用に変更することを許可してくれた」とのこと。ヘギーは、本オペラは「贖罪の物語であり続ける」と語っています。ある作品が「こう感じるべきだと、ただ教えてくれるのは本当につまらない」、このオペラは、「わたしたちに議論を与えるのではなく、経験へと誘うのです。それはシスター・ヘレンのナイーブさと信仰の危機、そしてジョセフや犠牲者の家族とのつながりであり、彼女の精神的な旅は、わたしたちの旅にもなる」のです。
映画版も好きだけれど、「オペラはもっと深いところまで連れて行ってくれる」と魅力を伝えます。「シスター・ヘレンの代表的な聖歌である『主は私たちを集めてくださる』は、このオペラのアンカーとなっています」「シスター・ヘレンの音楽は、彼女が他の登場人物と出会うにつれて変化していきます。そして、それぞれの音楽スタイルも、彼らが出会うことによって進化し、変化していくのです」。
なんとか、この作品、観てみたいですねぇ!(と思ったら、一部、聴けますねぇ。シスター・ヘレンのアリア『He will gather us around(主は私たちを集めてくださる)』です)
所見
日本でも、死刑廃止のために運動している人は多く、シスター・ヘレン・プレジャンも著作と映画が評判になった時期、来日し、各所での講演をこなしたことがあります。しかし、米国ではオペラが繰り返し公演されていて、しかも、シーズン最初の演目に選ばれるほどの注目度、というのはまったくの驚き。こういう、芸術と倫理の融合という文化的厚みを感じます。
日本で社会的なアドボカシーを行う上で、多様なアプローチが育つといいと思います。『シン・ゴジラ』『君の名は。』などは、少しそんな要素もあったかな?
最後に、この問題についてのわたしの立場ですが、無抵抗の人間を殺すのは残酷だ、です。NY在住で死刑について問うていた写真家、トシ・カザマさんの影響があります。