菜種くいん

本を読んで面白かったところをまとめるnote ジャンルは雑多、歴史学、民俗学、文化人類…

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本を読んで面白かったところをまとめるnote ジャンルは雑多、歴史学、民俗学、文化人類学、現代思想、雑学等。 amazonアソシエイト利用

最近の記事

読売アンデパンダン展ー戦後にあったカオスな展覧会ー 0回 研究雑記

概要 戦後の上野で開かれていた読売アンデパンダン展という展覧会をご存知だろうか。  名前の通り読売新聞社が主催した展覧会で、その特徴としては出品作品が無審査であることが挙げられる。つまりは、なんでも出品できるということだ。  この展覧会は1949年から1963年まで、上野の東京都美術館で毎春約一か月の会期を持って開催されていた。  最初は画壇の大御所、例えば岡本太郎が参加したり、きちんとした展覧会の様相を呈していた。さらに第3回では海外作品が多く出品され、ジャクソン・ポロッ

    • スヤスヤ教から見る日本人の宗教性への無意識さ 日本は無宗教ではない!

      スヤスヤ教について スヤスヤ教は2024年10月14日みねるば氏がツイートした事を機に生まれた宗教だ。  教義はシンプルで「ちゃんと寝ろ」「睡眠時間を増やせ」、そして睡眠時間を奪う面倒ごとに対して「宗教上の理由」で断ることができるとする。  彼としてもおふざけで言ったものであったようだが、twitterで多く拡散され、それに便乗して創世記など、キリスト教に模した神話を作成している。まだ投稿されていないが、出エジプトを模した、出布団紀を作ると言っている。 スヤスヤ教は二番煎

      • 働いていて本が読めないなら、まず本を買いなさいー乱暴だけど必要なマッチョイズム読書論

        「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を読んで   ちょっと前に流行った三宅香帆「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を最近、読んだ。  その本自体は日本の働き方や、自己啓発の流れを綺麗に追っていて興味深い一冊だった。  けれども、その本は今この世界にいる私たちは読書に対してどのように取り組むべきかあまり提示していない。結局最後の結論は、本が読める程度に余裕のある社会を作ろうという変革を求めるものだ。週3日の正社員だとか、残業を減らすべきだとか。  そのような力を持た

        • 大学生に蔓延る反知性主義 楽単信仰の原因

          大学生になって思ったこと ー岡本太郎を知らない女の子、情報リテラシーのないグループワークー 大学生になって思ったのが、学問についての話をする人が本当にいないということだ。まあ、自分も学問をガチでやっているかと言われると少し困るけれど、きちんと興味関心があって、それについて基礎的なことはある程度語れる自信はある。  けれども、大学生の学問的水準が酷いなと思うことが今までの大学生生活の中で非常に多いように思えた。  例えば、知り合った文学部の女の子は岡本太郎を知らなかった。え、

        読売アンデパンダン展ー戦後にあったカオスな展覧会ー 0回 研究雑記

          多摩という呪縛 〜東京にありながら東京ではない特殊な地域の精神性〜

          多摩という地域について 東京に住んでいる人々だったら、多摩という地域をご存知だろう。東京に住んでいない人に対して説明するならば、東京の西の方だ。  東京都庁の出しているnote「なぜ多摩は神奈川から東京に移ったのだ?」に載っている地図が比較的わかりやすかったので引用する。これは古い行政区分であるけれど、多摩を三つに区分しているため非常にわかりやすい。  私の実感としての多摩は上の地図の南多摩郡、そして立川周辺である。鉄道路線に照らし合わせてみると、小田急線で言えば多摩川よ

          多摩という呪縛 〜東京にありながら東京ではない特殊な地域の精神性〜

          早稲田・慶應受験英語は本文をまともに読むな ー早慶W合格者の長文の本質的テクニックー

          著者について 今回は受験英語について論じていくわけだが、こんなセンセーションなタイトルを付けてお前は何様だと言われそうなので、軽い自己紹介をしておこう。  自分は現在、早稲田大学文化構想学部の2年生だ。浪人をしたわけでもなく、きちんと現役合格だ。現役では慶應の文学部も合格した。  河合の記述模試の英語では、安定して偏差値70を超えていた。MAXで73ぐらいだっただろうか。  まあ少なくとも、ちゃんと合格している人間が語っていると思ってくれれば嬉しい。(両方文学部系かよ、政経

          早稲田・慶應受験英語は本文をまともに読むな ー早慶W合格者の長文の本質的テクニックー

          「デジタルミニマリスト」は単なる自己啓発じゃない、面白エッセイ本

          「デジタルミニマリスト」について 「デジタル・ミニマリスト」はカル・ニューポートによる自己啓発書だ。  この本はタイトルの通り、スマホなどの電子機器の使用を控える「デジタル・ミニマリスト」について早期に啓蒙した書籍である。  スマホ依存がちな現代人なら心当たりのあることだし、休日に五時間、六時間適当にスマホをいじって、もったいないことしたーって経験は多いだろう。  現在ではスマホを手放せない現代人という構図は自明のものに近い。 ネットで流布される残念な要約 捨てられた興

          「デジタルミニマリスト」は単なる自己啓発じゃない、面白エッセイ本

          中世最大の偽書「コンスタンティヌスの寄進状」はなぜ偽書だと分かったのか

          コンスタンティヌスの寄進状とは コンスタンティヌスの寄進状とは、ローマ皇帝コンスタンティヌスが4世紀にキリスト教教皇シルウェステルにローマ帝国の主要な土地(ローマ市を含む全イタリアや、西方属州)や聖地を寄進した出来事を記した文書である。この文書は偽イシドルス教令集に収録されている。  コンスタンティヌスがハンセン病に罹った際に、キリスト教教皇シルウェステルが祈りを行いその病気を治した。その見返り、感謝として彼はキリスト教に改宗し、土地を与えた、そういう物語だ。  この寄進状

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          エドマンド・バーク「フランス革命についての省説」の口が悪すぎる散々なフランス革命批評

          「フランス革命についての省察」について 「フランス革命についての省察」はフランス革命の翌年の1790年にエドマンド・バークが書いた批評書である。エドマンド・バークはイギリス人で保守思想の父とも呼ばれる人物だ。  ドーヴァー海峡の向こう側で起きた衝撃的な事件を、彼はかなり冷笑的に見ている。  そしてイギリスでのフランス革命の受け止められ方を知る上で良い書籍であると思うのだが、彼はフランス革命をとことんボロクソに叩く。もちろん現在でも賛否両論の存在するフランス革命ではあるが、

          エドマンド・バーク「フランス革命についての省説」の口が悪すぎる散々なフランス革命批評

          イザベラ・バード「日本奥地紀行」 ー日本を舞台にした伝奇小説のような不気味さー

          概要 「日本奥地紀行」は1878年、明治になってからまもない時期に日本を旅行したイギリス人女性探検家イザベラ・バードの旅程の手紙をまとめた本である。  日本は開国から30年ほどしか経っていない時期で、イギリス人の彼女にとってはまさに未開の土地。外国人女性の旅行なんて前例がなかったことであろう。  彼女の著作は末期李氏朝鮮を旅した記録を描いた「朝鮮紀行」も有名であるが、今回は「日本奥地紀行」を扱う。  この日本奥地紀行は、小説のような筆致で未開の地日本を彼女の目線で描写す

          イザベラ・バード「日本奥地紀行」 ー日本を舞台にした伝奇小説のような不気味さー