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ワイピオ峡谷:ハワイ島の最南端で世界の果てを見つけたが、最北端ではハワイの始まりを見つけた

先週末、ワイピオ峡谷に泊まりがけで行ってきた。この峡谷はハワイ島の東北部にあり、かつてハワイの政治の中心だったところだ。今でもハワイの人にとっての聖地であり、また自然の美しさでも有名なところだ。ちなみにハワイ島の最北端は上記の写真の一番右奥の突き出ているところだ。
 
展望台からの風景も素晴らしいが(ヘッダーの写真は展望台から撮ったもの)、300メートル下の峡谷の底部まで降りていくこともできる。ただし道が大変急で落石などの危険があり、2022年より峡谷を降りて行けるのは住人を除いて、四駆を運転するハワイ島在住の人か、ツアーに参加する人だけとなった。一応私たちはハワイ在住で四駆を持っているので自分たちで運転して降りていくこともできるが、坂道の角度が40度のところもあると聞いてツアーを申し込んだ。
 
実は滞在2日目にツアーに参加する予定だったが、前日になってハリケーンのために中止となったという電話があった。その日に空きがあるかと聞いてみたら、20分後に出発するツアーがあるという。私たちは少し離れた街にいたが、急遽集合場所に向かいギリギリでツアーに参加することができた。

日本人家族5名、アメリカ人の女性2人、仕事でハワイ島に来ていたアメリカ人男性一人、そして私と夫の総勢、9名プラスガイドである。わざわざこういうツアーに参加する人たちなので、文化への興味と敬意が感じられていい雰囲気である。

出発するとすぐに10名を乗せたバンは展望台の横にある急な坂道を降りていく。アメリカで一番急な坂はサンフランシスコにあるらしいが、この坂道はアメリカ国内で一番長い急な坂道らしい。途中で道幅が狭くなるし、途中で川もいくつも超えていくことになるので、自分たちで運転したらかなり怖かっただろう。ツアーにしてよかった。
 
ガイドは30代くらいのハンサムな男性で、慣れた調子でジョークを交えながら峡谷の歴史を説明してくれる。彼によるとワイピオとは「曲がりくねった水」という意味で、その名前の通り峡谷にはたくさんの川や滝があり水の豊かな土地である。川が肥えた土を運んでくるため土壌にも恵まれているそうだ。

この日は台風の影響で雨模様だが普段でも雨が多いところだそうだ


右は落差が400メートルもあるヒイラヴェ滝
ちょうど霧が少し晴れて滝全体が見えた

この写真のヒイラヴェ滝の左にも細い滝がある。伝説によると若い恋人たちが身分の違いのために引き裂かれ、それを憂えてこの滝に身を投げたという。右が身分の高い方、左が身分が低い方の滝で、最後に流れが合流するそうだ。滝になっても身分の違いが滝の太さに現れるとはちょっと悲しい気もする。

川を渡っているところ


ポリネシアから来た初期のハワイアンたちは、肥沃なこの土地をハワイで初めて農業をする場所として選んだという。ガイドによるとポリネシアから持ってきた植物はここで最初に栽培されハワイの他の土地に広がっていったという。

前にサウスポイントというハワイ島の最南端の場所は世界の果てのようであったという記事を書いたが、反対に最北端の地はハワイの農業の始まったところということだ。

かつては何千人も住んでいるほど栄えていたらしいが、今は60名ほどしか住んでいないそうだ。彼らは自然と共存する伝統的な生活を守り続けているという。

よく手入れされている土地


小さくて見えにくいがサインの向こうがタロ芋の畑


ちなみに帰ってからリサーチしてみたが、ここがハワイの農業が始まった場所という記述は見つけられなかった。ただそれが歴史的に証明できないとしても、そこに住む人たちにとってはその誇りを胸にこの土地に生きているのだう。

ガイド自身も先祖代々、この峡谷に住んでいる人であった。だから雑談している時には歴史的な情報だけでなく、時々個人的な思いや体験も話してくれた。伝統を守りそれを後世に伝えることに使命を感じていることを話す一方、不便で狭いコミュニティに住むことの難しさもチラッと口にしたりして、ここに住むリアリティが少しだけ感じられた。これはツアーに参加しないと感じられなかったことだ。

ガイドの案内のお陰でかつての栄光を想像し、今の住人たちの生活を垣間見られた。また景色は壮大で美しく、それを楽しみながら急な坂を降りていきや川を越えるツアーはスリルがあった。私も夫もお仕着せのツアーはあまり好きではないが、このツアーは参加して本当に良かったと思えるものだった。

今回私たちが参加したような峡谷の谷底まで降りていくツアーは、かつてはアメリカ本土やアメリカ国外の人が経営する会社も行っていたが、今は峡谷に住む人(もしかするとハワイ島在住者だったかもしれない)が経営する会社しかできないそうだ。だから日本語のツアーはないと思うが、もし英語が分かる方だったらぜひツアーへの参加をお勧めしたい。

ちなみに私たちが参加したツアー会社は下記の通りだ。経営者もワイピオ峡谷に住む60名の一人だという。


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