ハワイ島の7月:レガッタの季節
[約1,800文字] 夫は自由を大事にする人で1人で好きな時にカヌーを漕いでみたいという夢がある。そこで家の近くのカヌークラブに連絡を取ってみると、まずは6人乗りのカヌーで漕ぎ方を習うことを勧められた。それが数ヶ月前のことである。
以来、週に3日夕方から夜にかけて練習に行っている。参加しているのは初心者のクラスで、メンバーのほとんどが30代の若い男性。アラカンの夫は最年長のようだ。練習はかなりハードらしく、初めの頃は夕飯の箸も持ち上げられないほどであった。
だがいくつになっても人間というのは成長するもので、 最近は疲れて帰ってはくるが少し余裕が出てきた。
そして6月の半ばぐらいからカヌーのレガッタ(レース) に毎土曜日出かけるようになった。レースは私たちが住んでいるところと反対のヒロのビーチで行われるので、車で往復4時間ほどかかる。かなりのコミットメントが必要だ。
私はレガッタに行ったことはなかったが、先週はヒロに住む甥っ子の子供の誕生会が重なったのでこの機会に応援に出かけた。
レガッタ当日
ビーチについてみると、まず上半身が異様に発達した人の率が高いことに気づく。漕ぎ手は男性も女性もいるし、年齢も小さい子から年配の方まで幅が広い。それぞれのクラスに分かれてレースが行われる。家族も応援に来ているからちょっとした運動会の雰囲気だ。
私たちは夫が所属するカヌークラブのテントに向かった。 メンバーやその家族は8割方、ハワイアンのようだ。残りは白人と若干のアジア系の人だ。
皆、思い思いにビーチチェアを広げてまったりとしている。自分の家族が参加するレースの時は応援に出るが、レースの合間はスマホを見たり、知り合いとおしゃべりしたり、ただぼーっと海を眺めていたりする。こののんびり感は日本やアメリカ本土でもあまり体験したことがない。
翌日はアメリカ本土に向けて出発と言うこともあって落ち着かなかったのに、このまったりした空気感の中にいるうちに私の内側のテンポもゆっくりとしてくるのが分かった。一応持ってきた本を読んだりはしたが、レースをぼんやり見ていたり周りを散歩したり、何もしないということがを楽しめるのだ。
夫の参加するレースを観戦
またどんどん長くなりそうなのでこの辺で私にとってのメインイベントである夫の参加したレースの話をしたい。夫は普段は男性初心者のレースに出るのだが、メンバーが欠けていたために男女ミックスの初心者レースに参加した。
レガッタでどのレーンを使うかは前の成績で決まるそうだ。前のレースで上位のチームはビーチに近い方、下位のグループは沖の方のレーンとなる。ビーチに近い方が波や風の影響を受けにくく有利だ。だから弱小チームが勝ち上がっていくのはなかなか大変だ。
夫の所属するクラブは大きくないのでそれほど強くなく、夫たちのレーンも8番目と沖の方だ。早朝は穏やかだった海がその頃には波が出てきてなかなか厳しい状況である。夫たちの背中を見ながら幸運を祈る。
レースが始まってみると遠くのレーンのカヌーはとても小さくて、どれが夫たちのものかよくわからない。目星をつけて一応ビデオを撮ってみた。
このビデオからお分かりのようにビーチに近いレーンにいる上位グループがあっという間にゴールに向かうなか、遠方にいるチームは遅れをとっている。夫のチームは結局8位くらいだったらしい。
ハワイアンの優しさに慰められる
下位チームは沖の方にいるから戻ってくるのにも時間がかかる。私は皆の健闘を讃えようとビーチで待っていると、帰ってきた夫の顔が暗い。大きな波にパドルが跳ね返されて歯に当たり、漕ぐリズムが狂ってしまったそうだ。それで思うようにチームに貢献できなかったと反省しているのだ。私もそうだが、夫も結構自分に厳しい人である。
私はどう慰めていいか分からないでいると、同じチームのメンバーたちが「よくやったよ」と肩を叩く。そして一人のチームメートは私に向かって「あなたの夫はいい奴だよ」と言ってくれる。皆、本当に優しい。夫もそういう言葉を聞いて少し気持ちが和んだようだ。
やはり私たちはハワイと言う土地と人に癒されているようだ。練習がきついと文句は言っていたが、夫にとってカヌーを学ぶことはエクササイズ以上の意味があるのだとありがたく思った。
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