メディカル・ツーリズムで日本を訪れること(1)日本で大腸検査を受ける?
この記事ではアメリカの医療保険について取り上げているが、私は個人で保険に入っているので、企業などの組織を通じて保険に入っている人とは事情がかなり違うことを最初にお断りしておく。
しばらく投稿から遠ざかっていた。だいたいnoteの原稿は週末に書くが、ここ1ヶ月近く週末に研修や親戚の訪問など大きな予定が入ってしまいnoteの世界からどんどん遠のいてしまった。久しぶりの投稿が大腸検査というびろうな話で恐縮だ。
実は今、日本にいる。主な目的は人間ドックを受けるためだ。題名にあるメディカル・ツーリズムとは医療サービスを受けるために海外へ旅行することを言うが、今回の旅はまさにメディカル・ツーリズムである。
今日は医療目的で一時帰国をしようと思ったきっかけの話をしたい。アメリカの過酷な医療制度を垣間見てもらえると思う。
アメリカでは50歳から10年ごとに大腸検査は保険でカバーされる。そのため今から8年前の50歳の時に一度大腸検査を受けようとしていた。ところが主治医が私は大腸がんの家系でないのでリスクが低いため、簡単な検便に変えることを勧めてくれた。私もその方が楽なので変更をお願いした。
ところがここで潜血反応が出てしまい私はアメリカの医療制度の矛盾を体験することとなる。
当然ながら主治医から大腸検査を受けるようにという指示が出た。ただ潜血反応が出て検査の目的が予防から診断に変わってしまったため、保険でカバーされない可能性があるから、いくらになるか病院と保険会社に問い合わせるようにと言われた。
アメリカの医療は65歳以上の高齢者や障害者、もしくは低所得者のためには政府が運用している保険があるが、それ以外は全て民間保険である。そのため医療は基本的に営利目的のビジネスであり、また複数の民間保険会社が参入しているためにシステムが複雑でその管理運営にかなりのコストが取られるために医療費が大変高くなっている。しかも保険会社やその会社の提供するプランによって治療費や検査費もバラバラなのだ。
もう一つ恐ろしいことがある。それは個人で保険に入るのは、勤めている組織を通じて入るよりも大変不利なのだ。なぜかというと組織はたくさんの従業員を加入させるために保険会社に対して交渉力があるが、個人はそれがないからだ。私も夫も自営で個人保険に入っているために良いプランは非常に高額の保険料を払わないといけない。基本的に健康だからベーシックなプランを選んでいるので自己負担額が高い。
ちなみにちなみに現在、ベーシックなプランでも夫と二人で毎月$1,600(約24万円)払っている。
それで恐る恐る病院に問い合わせてみると何と$4,800ドルで全額自己負担と言われた。当時のレートだと60万円くらいだった記憶がある。全く同じ検査にもかかわらず、「予防のための検査」なら0ドルで済んだのに、「診断のための検査」だから$5000ドル近く払うのはあまりに馬鹿馬鹿しい。どうしようか悩んでいた時、ちょうど日本で大腸検査を受けた父から、その費用が自費で払っても2万円程度と聞いて閃いた。
「日本に帰って検査を受けたら、その後思い切りお寿司を食べてもお釣りが来るではないか!」
こうして日本で大腸検査を受けようというアイデアを得た。それでちょうど4、5ヶ月後に予定している日本帰国時に検査をしようと決めた。
ところが何とその間に州のルールの改正があり、診断のための大腸検査も10年に一回であれば保険会社がカバーしなければいけないということになったのだ。おかげで無事、当時住んでいた街で大腸検査を受けられた。ちなみにアメリカでは全身麻酔なのでコトンと寝てしまい気がついたら全て終わっていた。麻酔医がついていないといけないことも料金をあげていたのだろう。
結局、この時はアメリカで検査を受けたのだが、「何かあったら日本で検査、もしくは治療を受けよう」というメディカル・ツーリズムの選択肢ができたのだ。次回は日本で人間ドックを受けた体験について書きたい。