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エナジー風呂と一週間 【月曜朝のプレイリスト】

おはようございます。突然ですが、

月火水木金土日。

これを聞いて何を思いますか?

終わってしまった一週間。
これから始まる一週間。
月曜朝には聞きたくない。

きっと、人それぞれ違いますね。

私はこれを聞くといつも
日本語ってすごいなと思います。

というのも英語だったらこれ
Monday, Tuesday, Wednesday,
Thursday, Friday, Saturday, Sunday

長い!
一息で言えない!
行をまたぐ!
噛む!

でも、日本語なら一息。一行。
げつかーすいもくきんどーにち!

改めて日本語のリズム感に
惚れ惚れします。

月火水木金土日。

聞き慣れたこの言葉が
7拍子になって
不思議な世界を作る。

それが U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS の
『七曜日』です。

MVのアニメーションも
その変拍子感を見事に
そしてユーモラスに映し取っています。

ベースとなるリズムを作っているのは
指のスナップと手拍子、
そしてインドの打楽器タブラ。

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こんなシンプルな編成なのに
なんとまあ深い表現ができることか。



ちなみに、曲の途中で
「タブラのおばけ」が
喋っているように聞こえる
「テレナゲテレテケテナゲーナ」
という声があります。

これは「ボール(Bol)」と
呼ばれるものです。

タブラで出せる音には
Ta、Tin、Te、Ra、Ke、Ge、Naなど
一つ一つ名前がついています。
これがボールで
ヒンディー語の「喋る」に由来します。

タブラ奏者はこのボールを使って
複雑な音色とリズムの組み合わせを
口頭で師匠から受け継いでいきます。

ボールは流派や地域によっても異なりますが
例えばヒンドゥスタン音楽だとこんな感じ。

別名「口タブラ」とはよく言ったもので
これだけで十分打楽器として通用します。

実際、南インドなどでは
そういう口頭パーカッションの文化が
独自の発展を遂げています。



それにしても
日本的な日常風景が
インドの音風景に支えられて
淀みなく言葉として流れていく不思議。

私はカナダへ移る前インドにいたからか
この『七曜日』が妙に心地よく聞こえるのですが
皆さんはいかがでしょうか。

話が少々ずれますが
カナダへ移ってすぐの頃
英語でラップをやらなければならないという
恐ろしい状況に陥ったことがあります。

輪になって即興でフリースタイルのラップをする
サイファーです。

英語がネイティブでもなんでもない私には
ご想像の通り、もう恐怖です。
でも、音楽療法士の研修なので
「ともかくやってみる」以外の選択肢はない。

そしていざ、自分の番になってみると
フレーズどころか単語すら出ない。

輪の中にいるのは全員、音楽療法士なので
もちろん、生暖かい目で見守ってくれるのですが

出てくるのは汗ばかり。

それは私のしょぼい英語力のせいでも
インド英語に染まったアクセントのせいでもなく

私のラップに対する思い込みのせいでした。

イケてるフロウ(節回し)
クールなライム(韻を踏むこと)
そして何より強い主張と
それを表現する強い言葉。

そういうものが入っていないと
ラップにならない。
恥ずかしながら
無知から来るそういう思い込みがありました。

とはいえ
そのまま突っ立っているわけにもいかず
かといってもう引っ込むこともできず

とっさの開き直りで
『8時だョ!全員集合』風に
「生麦生米生卵」をラップ。
今朝食べたものを羅列。
周囲を煙に巻くことに成功。

(ちなみに、志村けんは
 当時知られていなかったヒップホップを
 早口言葉という形で日本に輸入するという
 恐るべき先見の明に満ちた人でした)

ところがそのラップ、
すぐに講師が話題に取り上げました。
何を言ったのか聞かれ
仕方なく本当のことを話す。

「朝ごはんに何を食べたか、ラップしました」。

すると

「やっぱりね。Nattoって聞き取れたから
 もしかしてと思った(笑)」

「いいラップだった。
 だってそれが今日のあなたなんだから」

私は、私の日常を言葉にした。
それでいい、と講師は言った。
何より声にしてみたのだから、と。
これじゃあまるで、禅問答。

しばらくしてから、この『七曜日』を知り
ああ、そういうことなのかと
改めて合点がいったのを覚えています。

もちろんラッパーが世に出す言葉は
どれも作り込まれたもの。

でもこんな風に
目の前にいる人に喋りかけるように
強い言葉を使わず普通に話すように
やっていいんだよと言われたような気がした。

その場で言いたいことを
あるいは言えることを
好きなように言えばいい。

大事なのは、自分が声を出すということ。
声に出した瞬間に
私が世界に姿を表す。

そういうラップの懐の深さを
私はそれまで知らなかったのです。

日本語ラップのフロウには
英語ラップにはない独特のうねりがあって
(しかも納豆もだし汁もラップしていいと知り)
それにも癒されました。

それぞれの言語の独自性と
その言語で紡ぎ出される世界観が
そのまま音楽の唯一性になる。

ラップはそういう稀有な音楽だと思います。

ところで、このユニットには
他にもこんな楽しいMVがあります。

U-zhaan & Ryuichi Sakamoto
feat. 環ROY × 鎮座DOPENESS
『エナジー風呂 (Energy Flo)』。

坂本龍一とのコラボです。

ベースに流れているメロディは
もちろん坂本龍一作曲の有名曲
『Energy Flow』(=エナジー風呂)。

坂本龍一はニューヨークからの参加ですが
それすらも織り込まれたリリック。

言葉と音楽を好きに掛け合わせて
いろいろなものを混ぜてみたら
もっと面白いものができる
この感じ。

こんな風に、真剣にみんなで遊んで
新しいものを作っていけたらなあ。


(人によっては、実験的なサウンドエフェクトが耳にきつく感じられるかもしれません。メタル音やハウリング音に敏感な方は、ヘッドフォンやイヤフォンをつけずに聴くことをお勧めします)。

念のため、モノクロの映像が美しい
『Energy Flow』のオリジナルMVも
載せておきます。


自分と
自分の周りのものと
自分の近くにいる他人との
新しいコラボレーションが
今日も一日を面白くしてくれますように。



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けるぼん/音楽療法士 -心と体は音楽でつくる-
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