見出し画像

あきましておめでとう

ほうたる〜

……はっ!いかんいかん。


この見出しは小説〈古典部〉シリーズ、TVアニメ「氷菓」における話の1つである。
主人公の折木奉太郎は、初詣に行った際に偶然にも納屋に閉じ込められてしまう。続きはどこかで。


私はその逆、というか、、、


12月31日  23:30
3人衆による突発的な山奥での年越しが決まり、霧の道を抜けた先は高野山。除夜の鐘が鳴り響き、活気というより厳かな雰囲気だ。境内を見回り、気づけば年越し1分前。

ゴーン………………

ゴーーーン……………………………………


あけましておめでとうございます。
「昨年はぴょんと……今年は昇り龍のように……」
さあみくじだ!
3人一気にせーのっ!
「小吉」「小吉」「大吉」

小吉だった。昔の華やかな夢は追わずに1歩1歩と書かれていた。精進しますよ。

ちなみに大吉だった友達は、高野山に向かう道中のコンビニで一番くじのA賞を当てていた。なんだコイツ。やっぱ夢見させてくれよ神様。


流石に帰るかと帰り道。高野山とは打って変わって明明とした寺院が見える。紀三井寺だ。
寄ってみれば屋台にライトに、そして若者で溢れかえっていた。何度か正月のお昼に来たことはあるが、日中より混んでいてビックリ。とりあえず参拝。何度か小吉のリベンジを果たそうかと悩んだが、別にいいかと今度こそ帰路に着いた。


1月1日  3:30
久しぶりに年越しを外で過ごしたと感慨にふけりながら、家に着いた。今から寝たら10時頃だろうか。甥っ子達はいつ来るっけと考えながら玄関のドアに手を伸ばす。

ガチャガチャ


ん?あれ?開いてない。
確かに帰る時刻は少し遅くなったが、母親からは「開けておく」と連絡をもらっていたはず。

裏口に回る。キッチンの電気は点いている。
……これは忘れて寝てるな。仕方ない、車で過ご……

しまった。友達が送ってくれるからと、車の鍵は家の中だった。どうしようか。電話をかけたりチャイムを押したりすることも出来るが、確か母親は朝から仕事だったはず。起こすのもなぁと、玄関横のテラスに座り込みながら思案する。さすがに寒くなってきた。迷いながら落ち着いた先は……


ポンにゃ!
……
ツモにゃ!

よし。これで夜明けまで過ごそう。こんな時でもプレイヤーがそれなりにいることに感謝。おい!2巡目でリーチすんな!!


そんなこんなで1時間程たった時。
ガチャリ   ガチャリ   ガチャ

そーっと扉が開き、母親と目を合わせる。
あ、どうも。やはり開け忘れて寝たらしい。というのも、家の中もいろいろ大変だったみたいで。それはしゃーないというか、むしろ中々ない経験で面白かったけど。そもそも鍵を持っていない私がって言い始めると長くなる。

やはり家の暖かみは素晴らしいと思いつつ、ベッドに潜り込んだ瞬間、泥のように寝てしまった。今となっては、本当に有難いことであると改めて実感している。

この憂いに向き合ったり向き合わなかったりしつつ、私は私で地に足つけて歩かねばと、小吉を財布に入れ直して三が日を終えることにする。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?