開幕を待つ日々
2020年6月19日、待ちに待ったプロ野球が開幕される。
開幕とは何なのか。
私にとっては、横浜公園のチューリップと共に春の訪れを感じさせてくれ、またシーズンを応援するための覚悟を決めてさせてくれるものだった。
選手やコーチ、監督たちはどんなふうに過ごしていたのだろう。
外出が自粛され、自宅と練習場の往復で、実戦がなかなかできず不安もあっただろう。
選手によっては今年が最後と覚悟を決めている人もいるかもしれない。1日たりとも無駄にはしたくないであろうに。
緊急事態宣言がようやく解除された今も、テレビをつけるとコロナの話ばかりだ。
だんだん嫌気がさしてきた。
私は逃避するかのように、コロナ明けの野球を妄想してみた。
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私は仕事を終えハマスタへ向かっていた。関内駅を降りて信号を待つ。試合はもう2回に入っている。急がなくては。
辺りにはブルーのユニフォームを来たファンで溢れている。以前は当たり前だったこの光景に胸が熱くなる。
ふと見上げると、新設されたレフトウイング席がせり出している。昔から見ていたハマスタの姿ではなくなってしまった。それが少し寂しい。
でも過去は過去だ。我々は新しい時代に向かっている。複雑な気持ちを振り払うかのように足早に席へ向かった。
通路を通りスタンドに出た私は息を飲んだ。
これだ、待っていたのはこの光景だ。
照明に照らされた人工芝が美しい。
外野スタンドからはオースティンの応援歌が聞こえてくる。急いで席に座り、改めて周りを見回した。
売り子さんが汗をかきながら元気にビールを売っている。
隣の人はベイカラを食べている。
後ろの人は連れの人にずっと野球解説をしている。
隣の人との距離が極端に狭い。
これこれ!ハマスタといえばこの雰囲気だよな。
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……私は我に返った。
こんな光景が見られる日は来るのだろうか?
密集している客席、これが許される日はくるのか?
いずれ許されたとしても、ウイルスが怖いからと観戦離れして、暗黒時代のようなガラガラのスタンドになってしまったら…。
そもそも、この客席に入られせてもらえなくなったら…。
今となっては、隣の人とハイタッチをしたら手が汗ばんでいてゲゲっと思ったり、飛んできた風船が飲み物に入りそうになって慌てて手で抑えてコンニャローと思ったことさえ懐かしく感じてしまう。
全然いいです、それくらい我慢するから、私たちに安全な野球観戦を返してください。
相手チームのヤジももう言いません。
くたばれヨミ○リとかももう言いません。
隣の人のゴミも一緒に捨てて帰ります。
だからお願いです。
私たちから野球をとらないでください。
私は試合に負けそうな時、いつも空を見上げてハマスタの神様に祈っていた。
そして何度となく、奇跡のような勝利を見せてもらってきた。
ハマスタの神様、聞こえていますか?
お願いです。
またここで、1日も早く私たちに野球を観せてください。
満席になったスタンドで、声を枯らしみんなで応援させてください。
これが最後のお願いになっても構わないから。
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