バックミンスター・フラー『宇宙船地球号操縦マニュアル』にて 13 ひろっさん 2022年2月22日 16:35 著者のバックミンスター・フラーは、言語そのものにも触れています。人類を拡張していく道具はすべて、ふたつの主要なグループに分けられる。つまり手仕事道具クラフト・ツールと産業道具インダストリアル・ツールだ。私は手仕事道具を、荒野に素っ裸でいる人間がすべてをひとりではじめ、自分自身の経験と身に備わった器用さだけを使って発明したすべての道具、と定義する。こういう孤独な条件下で、人は槍とか投石機とか弓とか矢といったものを発明できたし、発明したのだ。産業道具というのは、たとえば汽船のクィーン・メリー号のように、ひとりの人間だけではつくりだせない、あらゆる道具のことを意味する。この定義にしたがえば、話し言葉は最初の産業道具だった。それを開発するには、少なくともふたりの人間がいるからだ。話し言葉によって、あらゆる場所で、あらゆる時に全人類が獲得した経験と思考のそれぞれが、世代を通して受け継がれ、だんだんと統合化されていった。聖書は「はじめに言葉ありき」と言うが、私はこう言おう。「工業化のはじめに話し言葉ありき」。言葉やアイデアを文字として書けるようになったところが、コンピューターのはじまりだ。コンピューターは情報を蓄積し、再び引き出す。書き言葉や辞書、本といったものは、最初の情報蓄積/引き出しシステムだった。――pp.120-121 宇宙船地球号操縦マニュアル (ちくま学芸文庫) www.amazon.co.jp 990円 (2022年02月22日 08:36時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する 著者の思考は、幾何学に基づくシナジー思考です。私たちが学んだなかで最も重要なことは、ここから成功するとすれば、それは全員が成功するか、ひとりも成功しないか、そのどちらかであるということだ。物理学が実験的にあきらかにしたように、「統一体ユニティは多からなり、少なくとも二からなる」。鏡像ではなくて相補性であり、陽子と中性子のようなものだ。あなたと私は本質的に異なるが、ともに相補い合う。そして両者の平均はゼロ、つまりは永遠なのだ。――p.130第三者から見た著者のエピソードが、訳者あとがきにあります。ボールドウィンがはじめてフラーの話を聞いたのは、彼が一九歳の時のことだった。彼のいた大学の建築科が講演会を催した。夜の七時に始まったのだが、フラーは猛烈な勢いでしゃべりはじめる。ところが、話はどんどんと飛びまくり、おまけにフラーの英語の使い方は、ボールドウィンが今まで聞いたことのないようなものだったから、とにかく彼はあきれかえって聞いていたようだ。フラーは正確に話を伝えようとして形容詞を何重にもつなぎ合わせたりするから、聞いている方はかえってなにがなんだかわからなくなるわけだ。次々に投影される膨大な量のスライド。時にはスライドが映し出されるスクリーンを横に押しやり、うしろの黒板に図を描く。そしてくるっとこちらを振り向くが、スライドの一部がフラーの顔に投影されて、ぶ厚い眼鏡のレンズがキラキラと光る。すると突然、彼の手のなかに幾何学モデルが現れて、「まるで手品師のようだった」と彼は言う。――p.202著者は、高次元のメッセージを伝えるべく、形容詞と幾何学を駆使するのだが……。以上、言語学的制約から自由になるために。 ダウンロード copy #神との対話 #形容詞 #幾何学 #宇宙船地球号 #ニール・ドナルド・ウォルシュ #話し言葉 #書き言葉 #バックミンスター・フラー #宇宙船地球号操縦マニュアル #シナジー思考 13