【番外編】米露の戦場と化したウクライナ〜sustainable war(持続可能な戦争)〜
前回に引き続き、今回は後編で、日本の防衛費倍増問題を、より多角的にみていこうとする予定であった。ただ、その前に、前編でも触れたウクライナ侵攻の現状の偏った見方、つまりロシアを悪と決めつける姿勢に疑問を投げかけたが、その部分の思いや考えを少し話したいなと思い、後編の前に【番外編】ということで書きますね。
そもそも、今年のはじめ、2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が開始して以降、我々日本人は、当たり前だが「メディア」というものを通じて情報を得てきた。現地に足を運び、関係機関に関わりながら、文字通り直接的に情報を得てきた国民は数少ないだろう。(僕のその一人である)多くの人々が、新聞や、若者なら主にインターネットのニュースなどで、侵攻状況を把握してきたと思われる。
何が言いたいかと言うと、僕たちの認識は、まさに「メディア」というものに依拠している点で、誠に依存的だろうということ。よく義務教育で使いまわされてきた、きちんと情報源を確かめましょうね、というのは、一つにそうしたことがあるのだろう。情報というのは発信元の意図や狙い、方向性が常に存在することを考えると、無意識にフラットな情報に基づき我々は思考し、個々人の考えの発露から独自性や主観が生まれていると思われがちだが、実はそうではないのだ。つまり、この世の中に100%客観的な情報など ないわけだが。大切なことは、どんな主観や意図が入り込んだ情報かを、意識することなのかもしれない。
話をウクライナ侵攻の話題に戻そう。朝日新聞をはじめとする日本の大手メデイアが情報源としているものの一つが、「戦争研究所ISW」というアメリカのシンクタンク。(国の方針への提言とかを行うところ)2007年に、レイセオンやゼネラル・ダイナミクスなどの軍事産業の出資で設立されたものだ。ここがウクライナ侵攻以降、毎日日報を出していて、その情報を日本のメディアが垂れ流している現状であったりする。素直に考えると、戦争が起こって一番儲かるのは軍事産業。つまり、その情報がフラットかつ中立的であると考えることには、かなりの無理があると僕は思う。
「私たちが得ている情報は、もしかしたら偏っているかもしれない」という前提で、一つみなさんと考えたいことがある。今回のウクライナ侵攻、悪はロシア・プーチンだけだろうか。
なぜ和平の道は閉ざされたのか
なぜ攻撃的な武器供与がためらわれたのか
僕は以上の2点が疑問であった。
これは米国でウクライナに軍事支援している軍事産業のうち、2021年度の売上高が上位に位置した二社の株価の推移である。ご覧いただけるとおり、ウクライナ侵攻以降、株価の上昇が起こっている。
さらに重要なこととして、アメリカの現政権基盤。
元外交官で外交評論家の孫崎享さんは以下のような指摘をする。
「20年の米大統領選で、バイデン氏を強力に支援したのが国防総省と軍需産業、その関係者でした。『海外の米軍基地は不要』など海外への軍事活動に消極的だったトランプ氏を当選させたくなかったからです。その結果、バイデン政権には安全保障上のタカ派の人たちが中核に入ってきてしまった。これまでのどの政権よりも軍需関係者の影響力の強い政権であり、それが継続しているんです」 つまり、バイデン政権を大きく支えているのが主要軍事産業なのだ。
いやいや、ちょっと待った!→「確かに、現政権の基盤が軍事であり、戦争により軍事産業が潤う構図はわかる。しかし、それと今回のウクライナ支援は別だ。本当にウクライナのことを思って、支援しているのではないか」
そうした可能性もあると思う。ただ、オースティン国防長官は記者会見で、
「ロシアの弱体化をのぞむ」と明確に発言しているのだ。さらに付け加えれば、実は彼、先ほどあげたレイセオンの元代表取締役であった。つまり、アメリカ政府の軍事トップの人間が、軍事産業と密接な関係を持っている、、、ズブズブなわけだ。
7:23〜見てほしい。1950~60年代に大統領を務めたアイゼンハワー大統領の、退任演説だ。朝鮮戦争やベトナム戦争といったアメリカの軍事組織と兵器産業が結びつき、偉大な影響力を持つ、まさにその渦の中にいた人間が、退任時に述べたセリフ。「民主主義や人々の暮らしを、軍産複合体から守らなければならない」
この重みは、今回のウクライナ侵攻に関するアメリカの一連の動きという文脈で、捉え直すべきではないでしょうか。
少しまとまらない感じだけど、長くなってきたのでここら辺で今日は終わりかな。もちろん、ロシアの行為は許され得ないもの。それでも、国際関係ってそんな簡単じゃなかったりもして、いろんな国や機関が複雑な利害関係の中にいて、表と裏があって、表だと思ってたら裏だったりとか。
当初は防衛兵器しか貸与しなかった米国は、あえて戦争を長引かせることで、
ロシアをできるだけ弱体化させることが目的とも考えうるし、でも、ロシアは核を持っているわけで、脅威が去ることはない。つまり、米国を中心にした軍事体制、世界の防衛体制は維持できる。ウクライナでの戦闘シーンがメディアで世界中に放送される中、米国の高性能な武器のアピールにもなっている。今のウクライナ侵攻の状況は、米国にはまたとない好条件がそろっているような。でも、忘れてはならないのは、世界の大きなパワーバランス、米国主導の国際体制の中で、犠牲になるウクライナ市民がいるということ。
ひとまず、ロシアを絶対悪とする前に、その外側で大きな糸を操る存在がいるのかもしれないなと、思ったり。そしてそうした軍産複合体を基盤に据える米国に、軍事的な全面依存をしているのがこの国、日本なのだろう。僕はふと、ジョージ・オーウェルの1984小説を思い出してしまった。
「戦争は平和なり。自由は隷従なり。無知は力なり。」
この本が書かれたのは1949年である。まさにオーウェルは、公文書が改竄され、賄賂や悪事が横行し、簡単に約束を破り国民を欺く現在の日本の姿を、70年後の未来を予測していたのだ。この本に関してはいつか書きたいけど、思想の凄さを感じる。科学技術の発展も、経済の成長も、社会科学的な熟慮の下で初めて人間社会に意味あるものになると僕は思う。
ウクライナ侵攻を米露の代理戦争という側面から捉え直すことで、後半で考えたい、軍事費2%問題のことも、少し違った視点から、日本の未来と平和への道が見えてくるかもしれない。ぜひ、友や家族との話題の一つにしてもらえたら嬉しい。