仏教とは何か？ 基礎編 2 悟りとは何か？
仏教はその名が示すように、釈尊の教えが中核となる思想体系です。したがって、仏教を知るには、先ずは釈尊について知る必要があります。
仏教を広めた人物は釈迦牟尼仏として知られており、約2500年前、現在のインドとネパールの国境付近の地域で、釈迦族の王家の血筋に属するゴータマ・シッダールタとして生まれました。恵まれた環境で育ったにもかかわらず、シッダールタは人生の本質に関する深い実存的な問題を問い続け、なぜこの世の生きとし生けるものが絶え間なく争いを繰り返すのか、なぜ存在には苦しみがともなうのかついて考え続けました。
彼の望みは、すべての生きとし生けるものが、悲しみや争いから解放され、調和して共存することでした。しかし、現実をよく見れば見るほど、世界は生存競争と苦しみに満ち溢れていたのでした。
シッダールタは、答えを見つけるために、王子の地位を捨て、宮殿を出て、求道の旅に出ました。
シッダールタは、肉体的な苦行を伴う厳しい禁欲主義など、人間の精神の可能性を最大限に引き出すことを目的としたさまざまな修行を試みました。しかし、シッダールタは、そのような修行では求める洞察が得られないこと、心身の混乱は現実の本質を認識する妨げになることに気づきました。
その後、シッダールタは、極端な禁欲主義をやめ、肉体的にも精神的にも最適な均衡を保つ道を発見しまた。このバランスの取れた状態で、彼は内なる世界を掘り下げ、最終的に実存的な問いかけに対する答え、つまり人生と存在の本質を明らかにしたのです。
こうしてシッダールタは悟りを開き、仏陀となりました。仏陀とは、万物の本質に目覚めた者を意味する言葉です。
凡人と仏陀の違いは何でしょうか？凡人は「アハ」体験のような一瞬の気づきを経験するかもしれませんが、その洞察は一瞬だけであり、直ぐに日常の雑念の中で消えてしまいます。
しかし、仏陀は、深い洞察の持続的な状態を維持し、悟りの明晰さの中に留まり続けるのです。
それゆえ、「アハ 」体験のような瞬間的な悟りの機会を積み重ねることで、普通の人でも徐々に仏陀の悟りの境地に近づくことができるのです。このような 「アハ 」体験の様な瞬間を育むための方法については、この後の議論でさらに掘り下げていくつもりです。
仏教の伝統的な解釈、特に中国語訳の仏教経典に基づく解釈では、仏の悟りの偉大さを強調するあまり、仏の悟りは一般人には到達できない、想像すらできない領域として描かれているような印象を受けます。
これとは対照的に、サンスクリット語の経典（古代インドの言語で書かれたもの）では、菩薩達が悟りに触れながら修行しているという表現が見られ、悟りは日常的に誰でも触れる事ができるものであることが示唆されています。
それでも、悟りは仏陀だけの特権ではなく、たとえ一瞬であっても、その達成を目指すすべての人に開かれた広大な領域なのです。