💟第17話 渥美勝先生に邂逅-日本的生命観に目覚める(天照大御神の子育て)
🟡渥美勝先生に邂逅
明治法科大学で学んでいた芳聖は、震災後のある日、恐らく大正12年(1923年)の9月の下旬か10月の初め頃の事だと思いますが、不忍の池のある上野公園を散策中、「渥美勝」という日本国史上、稀有の聖者に出会ったのです。
表には「神政維新」裏には「国の子桃太郎」と書いた幟旗を立て、かなり着古したと見える飴色になった紋付の羽織に、同じく色のあせた小倉の袴を穿き、髪を茫々に伸ばした50前後の男が、上野公園韻松亭の廻りにある石の上に立ち、行き交う人々を相手に獅子吼していたのです。
たまたま通りかかった芳聖が、立ち止まってその話を聞いていると、その聖者は「我らこの命を以て何をなすべきか!」と桃太郎のおとぎ話を使って、「日本的生命観」について演説していたのです。
人々は、立ち止まっては去り、又別の人が立ち止まっては去って行きましたが、芳聖は、2時間余りこの聖者の話に引き込まれて熱心に聞き入ったのです。すると又この聖者も、芳聖一人に教えを垂れるように熱弁を振って説いてくれたのです。
この聖者は、愛国的国家主義者の間では有名な「渥美勝」といい、滋賀県彦根市の生まれで、若い時は政治家を志し、東京の一高を出て京都帝国大学独法科の2年まで進んだが、家庭の事情で帰郷して中学校の教師をしていたある日、無邪気な児童が歌う「桃太郎」の唱歌に廓然と悟り、我が国の古典の思想研究に没頭したのです。
渥美勝先生は、日本の古典を研究するうちに、そこに日本民族の生命観、日本民族の世界史的使命を発見し、その思想を人々に伝えるため上京し、「土工」「人力車夫」「下足番」「映画館の売り子」など、現代のアルバイト的な仕事をして最低限の生活費を稼ぎ、昼間は辻々に立って大道演説をし、夜はお宮の縁先やお寺の墓地などで休むなど、住む家さえないという、日本の歴史上稀有の、常人の真似の出来ぬ誠に変った人生を送った聖者でした。
🟡日本的生命観に目覚める
渥美勝の日本的生命観というのは、「古事記」や「日本書紀」に出ている日本の国生み神話、修理固成、神武建国の理想など、古代日本から伝承される日本民族特有の生命観に光を当て、日本民族本来の使命について現代人に分かりやすく説いたもので、言わば、「この世に高天原を建設する運動」でした。
これは、日本民族の精神復興運動であり、明治維新以後、怒涛のごとく押し寄せる西洋の文化思想に晒され、ともすれば呆然自失していたであろう人々に、日本古来の民族精神に目覚め、その民族精神を国際社会に於いてどのように展開すべきかを示唆したものでした。
これまで、いわば外来思想と言える仏教を主に学んできた芳聖は、渥美勝の街頭演説を聞いて、その場で日本的生命観に目覚め、日本の古典を学ぶことの重要性に開眼せしめられたのです。
芳聖が渥美勝に出会ったのは、渥美勝が同志数人と共に大正10年(1921年)10月から大正12年(1923年)9月までの約2年間、九州の高千穂に籠って、宮崎県・大分県各地で禊ぎの修練をし、大震災の報を聞いて東京に帰り、精力的に活動を再開した直後のことでした。
そうした修養後の充実した渥美勝に、関東大震災で人生観を一変した芳聖が折りよく出会うというシンクロは、大御神の御子教導計画通りで、渥美勝が説いた「日本的生命観」は、その後の芳聖の思想形成に大きな役割を果たしたのです。
【参照】
『渥美勝- Wikipedia』から一部引用
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串呂哲学研究会 鈴木超世志
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