【2023年版】北米漫画・Webtoon市場の最新動向 - Mangaの広がりとWebtoonの台頭-
こんにちは!
Mintoの広報/PRを支援している、武井梨名です。
私はアメリカのロサンゼルスに拠点を置き、Mintoの広報/PRと、US展開にも携わっています。
よく「日本=世界のエンタメコンテンツ大国」「とくに漫画はもはや日本だけでなく欧米でも大人気!」と言われているのを耳にします。
実際に、経団連よりエンタメ産業に関するレポートも出されていて、海外競争力のある産業として漫画を含めたコンテンツビジネスが位置付けられています。
今回は、そんな大注目の漫画コンテンツビジネス・市場について、実際にLAに拠点を持ちエンタメ業界で仕事をしている私の視点から、「北米 x 漫画」 というテーマで現状をお伝えできればと思います。
1. Manga
先人たちが切り開いたアメリカManga市場
いわゆる日本の漫画は第二次世界大戦後に手塚治虫によりスタイルが確立され、1970年代以降様々なジャンルが登場しました。
なんといっても日本の漫画カルチャーの特徴は、この”バリエーションの多さ”だと思います。アメリカの”コミック”といえば主にヒーローものがメインであったのに対し、日本の漫画は王道の少年漫画やロマンスものだけでなく、ギャグ、ホラー、スポーツ、料理や日常もの... 数え切れないほどのジャンルが存在します。
1980年代から、徐々に日本の漫画がアメリカでも受容され始め、アニメ人気が漫画にも派生し『アキラ』や『ドラゴンボール』などのロングセラー作品が人気に。1980年代後半に入ると、ビズメディア社等の先駆者たる企業が多くの日本の漫画作品を英語に翻訳し、アメリカ市場に紹介し、漫画市場の裾野を広げてきました。
一方で、独特の読み方(日本では右上から左下、アメリカのコミックは逆)や表現(オノマトペ等)がユニークな芸術として注目されつつ、一般の人々に広く受け入れられるにはハードルが高くもありました。
コロナ禍以降の漫画市場の成長
そんな状況からの成長を引っ張ったのが、コロナ禍によるアニメブーム(同時に、原作である漫画人気を牽引)、また集英社等の出版社やCrunchyroll等の配信プラットフォームにより、デジタル/アプリでリアルタイムかつ多くのバリエーションのコンテンツを楽しめるようにになったことも大きな要因でした。
実際に、グローバルでの漫画市場は約$10-12 Biillion(2022年実績)と言われており、北米圏では$3.34 Billion(2022年実績)、2030年までの成長率(CAGR)は4.85%で引き続き成長していくと予測されています。(出典)
実際に、ここ数年でアメリカの書店のラインナップも変化があり、例えばアメリカ大手ブックストア Barnes & Noble には大きな漫画セクションが設置されるようになっているのを目にします。
LAの大型ショッピングセンター「Del Amo Fashion center」にもこの夏、日系アニメ・漫画系グッズ小売大手「Animate」の初のUS店舗が登場し、漫画売り場には所狭しと漫画単行本が並んでいます。(オープン初週は、店内に熱気が立つほど多くの人で賑わっていました!)
その中でも、Webtoon(韓国発の縦読み型スマホ漫画)のUS圏での人気は注目すべきです。
2. Webtoon
韓国発で、日本でもピッコマやLINE漫画等で大人気のWebtoonですが、北米圏でもその人気は拡大しています。
日本のWebtoonについてのまとめはこちら:
Webtoon市場の成長とマスアダプション
2022年のグローバルWebtoon市場の規模は$3.7 Billion、2023年には$5.6 Billionに成長、さらに2032年には$67.8 Billionに成長すると予測されており、平均成長率(CAGR)は37.40%と見込まれ、漫画市場全体と比較しても飛躍的な成長が予測されています。そのうち、北米圏の市場シェアは、2022年ではグローバル市場の45.80%を占めていました。(出典)
その中でも、2022年1月の時点で月間アクティブユーザー数が8200万人に達し、現状一番北米圏で人気のWebtoonサービスは「Naver webtoon」です。
Naverの2023年第3四半期の決算報告書によると、グローバル全体でのWebtoonの収益は、約$36 Million、YoYでの成長率は約40%と報告されています。
Webtoonは、スマホに特化したコマ割りが少ないカラーのビジュアルノベルのようなUIであるため、従来の漫画のフォーマットの問題(右から読む文化や複雑なコマ割り)が解決されていること、またNetflix等で映像化される作品も出てきて、Kdrama(韓国発のドラマシリーズ)人気とも相まって、北米圏のユーザーに広く受け入れられつつあります。
また、Naver Webtoonにはクリエイター育成にもつながる仕組みが組み込まれており、読者だけでなく作品を生み出すクリエイターの幅も同時に広げる取り組みがなされています。
クリエイターのインディーズ作品が読める”Canvas”
Naver Webtoonには、インディーズ作品が集まる”Canvas”というセクションが存在します。クリエイターが自分の作品をアップすることができ、人気が出るとランキングやページトップ等に掲載されます。
また、”Ad Revenue Sharing program” という収益還元のプログラムにより、作品の収益の50%が還元される仕組みとなっています。”Canvas”で人気が出た作家が、”Original” (公式の作品が掲載されるセクション)に選ばる場合もあり、月額で報酬が支払われて作品を作るプロ作家としての道も用意されているようです。
すでにこのようなインディーズ作品をフィーチャーし育てる取り組みは、「ジャンプ +」等他の漫画サービスでも実施されていますが、特にWebtoonのような新しいジャンルのプラットフォームでは、長期的な作品および作家を生み出し、そこに惹きつけられる読者を増やすという意味で非常に重要な役割と言えるのではないでしょうか。
課金形態
Webtoonの課金形態についても見てみると面白いです。
メインの課金形態は、”Fast pass”型課金。全体のほとんどが無料で、最新の複数話(5-8話)を読みたい場合に、課金をして先読み話を購入する形です。
また、日本ではメジャーな話課金形態(最初のみ無料、以降話課金が発生)の作品も、少しずつ試されている印象です。
北米圏では、コンテンツ視聴や閲覧に関してはサブスクモデルが一般的であるため、日本のような最初しか無料で読めない話課金のモデルは流行しづらいという事情がありました。
Naver webtoonに関しては、上記の常識に対しての試験的な取り組みを少しずつ初めているように見受けられます。
まとめ
北米圏の漫画およびWebtoonの市場や受容状況についてまとめてみましたが、結論は双方の市場はコロナ禍以降成長を見せ、特にWebtoonの市場は大きく今後成長すると見込まれています。
また、それらの成長については従来のIPビジネスの成功パターンと同様、漫画やWebtoonは単体での成長ではなく、アニメ化や映像化といった他メディアとの連携による多方面のプロモーション効果により人気が最大化され、結果作品がIPとして価値を持ち、さらにそのIPが収益を産むといったかたちでの循環が最大化された時に、ダイナミックで長期的な成長をもたらすかたちとなっています。
日本のクリエイターや作品がグローバルでの拡大や収益化を目指す際に、作品の価値を広げるフォーマットのひとつとして、漫画、とくにWebtoonは無視できない存在となっているなと改めて感じます。
Mintoでも、Webtoonスタジオを持ち絶賛多くの作品を制作しています。
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